懺悔

道端にセミが死んでいた。車に轢かれてぺちゃんこになっている。
『せっかく出てきたのに、こんなになってしまって・・・』気の毒そうに義母が言う。
私は、ぺちゃんこのセミを見て、遠い日の記憶を思い出す。

子どもの頃、私の小学校までの通学路の周辺は田んぼばかりだった。
春先、田んぼを泳いでいたおたまじゃくしが、成長して小さな雨蛙になると、ぴょんぴょんと田んぼから道端へと上がってくる。
私の通学路は、狭い割には車の通る道で、喜んで上がってきた小さな蛙達は、かなりの確率で轢かれてしまうのだった。そんな蛙の死骸を避けながら、通学したっけ・・・

更に蛙から、封印したい奥の方の記憶が引っ張り出される。
ある日、兄が川で殿様蛙を7、8匹捕まえてきた。理科の解剖に使う為だったと思う。私は、蛙には陸が必要だという知識がなかった。殿様蛙は見慣れた雨蛙よりも大きくて、怖かった私はバケツに蓋をしたのだ。
翌朝、バケツの中には溺死した蛙達の死骸が浮いていた。凄惨な光景に、パニックに陥った私は、隣の雑木林にバケツをひっくり返して、蛙を捨ててしまったのだ。

せめて土に埋めたら良かったのに。私の馬鹿馬鹿馬鹿‼️‼️
本当にごめんなさい。思い出す度に、心がわ~~~~~っ‼️‼️‼️となる記憶。
暗い気持ちになるけど、あえてここに記します。

私が記憶をたぐっている間に、義母はぺちゃんこ蝉の近くに落ちていたと、百年玉を三枚拾っていた。早起きは三文の得。
いいこともある。そう、いいこともあるんだ。
でも蛙よ、ごめん。

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