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タイの個人情報保護法 第3回 同意の取得と方法

3回目の今回は、タイの個人情報保護法上の規制のうち、

個人情報を収集等する際の同意の取得とその方法について

みていきます。

本人の同意取得が要求される場面は?

まず、どのような場合に、データ主体である本人の同意を取得する必要があるのでしょうか?

以下のいずれかを行う場合には、本人から同意を取得する必要があります。

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 ① 個人情報の収集

 ② 個人情報の使用

 ③ 個人情報の開示

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同意取得が要求されるタイミングは?

では、本人の同意さえとれれば、事後承諾でも大丈夫でしょうか?

答えは、「いいえ。」です。

個人情報の、収集、使用、または、開示を

行う前か、または、遅くとも、これらの行為を行う時点で

同意を取得しなければならないとされています。

同意の取得方法に関するルールは?

また、本人に同意をお願いする際、以下のルールを守る必要があります。

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 ☑ 書面、または、電磁的方法により明確に行う。

 ☑ 同意要求以外の事項とは明確に区別して行う。

 ☑ 容易にアクセス可能でわかりやすい内容・表現とする。

 ☑ 収集、使用、開示の目的を通知する。

 ☑ 詐欺や目的を誤解させるような内容・表現を用いない。

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本人が勘違いや誤解等から同意をするということがないように、

もっといえば、誤解等に基づく同意をしたという疑いをもたれることのないような形でお願いをしなければならないということでしょう。

個人情報を収集する際の通知の内容は?

また、個人情報を収集する際の通知については、

以下の事項を記載する必要があるとされています。

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 ☑ 目的

 ☑ 収集対象となる個人情報、および、その保管期間

 ☑ 収集された個人情報の開示先となる個人や法人の情報

 ☑ 情報管理者の情報、連絡先等

 ☑ 本人の有する、同意撤回権、アクセス権や削除請求権等の権限

  (本人の有する権限については、別の回で詳細に紹介します。)

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個人情報の収集に同意が不要な場合は?

最後に、個人情報の収集に本人の同意が必要とされない、例外的なケースもありますので、ご紹介します。

以下の場合には、本人の同意なく、個人情報を収集できるとされています。

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 ① (ⅰ) 公共の利益のために歴史文書や記録を作成することに関する目的を達成するために個人情報を収集する場合、または、(ⅱ)研究もしくは統計に関する目的を達成するために個人情報を収集する場合であり、かつ、本人の権利および自由を保護するための適切な措置が講じられている場合

 ② 本人の生命、身体、または、健康に対する危険を抑止または防止するために個人情報を収集する場合

 ③ 本人が当事者となっている契約の履行のために個人情報の収集が必要な場合、または、契約締結前に、本人の要請に対応するために個人情報の収集が必要な場合

 ④ 情報管理者の公共の利益のための業務の遂行に個人情報の収集が必要な場合、または、情報管理者に与えられた公的な権力の行使のために個人情報の収集が必要な場合

 ⑤ 情報管理者、または、情報管理者以外の個人もしくは法人の正当な利益のために個人情報の収集が必要な場合(但し、その正当な利益よりも、本人の有する個人情報に関する基本的権利の方が重要である場合は除く)

 ⑥ 情報管理者に適用される法令を遵守するために個人情報の収集が必要な場合

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その他、本人の個人的な利益のためにする個人情報の収集等、

そもそもタイの個人情報保護法自体が適用されない例外的な場合についての定めもあり、

これに該当する場合にも、同意は不要となります。


いずれにしても、これらはあくまで例外であり、

原則は本人の同意が要求されているという立て付けからは、

自社の考えているケースが本当に例外に該当するケースなのか、

その検討は慎重に行う必要があるでしょう。

次回へ続く

【執筆者】弁護士 松本久美  タイ、バンコクの法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所シンガポールオフィスにおける長年の現地駐在経験を基に、タイ、シンガポールをはじめとした東南アジア諸国における企業法務、コンプライアンス等海外子会社管理、規制調査、労務、紛争解決等を取り扱い、現地法人経営経験を踏まえた視点からのアドバイスも提供。

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