タイの中小企業に対する下請代金の支払期限に関する新規制
タイで、2021年12月16日より、中小企業に対する商品・サービス代金の支払い期限に関する新たな規制が施行されます。
タイ国内の中小企業と取引関係にある日系企業にも影響のある新規制となりますが、施行が迫ってきておりますので、本稿ではその概要につき、ご紹介させていただきます。
■新規制の制定・施行
タイの取引競争委員会(Trade Competition Commission of Thailand)は、取引競争法(Trade Competition Act B.E.2560)に基づき、中小企業に対する商品・サービスの代金の支払期限に関する新たな規制を制定しました。
この新規制は、取引競争法の第57条に関して制定されたもので、2021年6月18日に官報に掲載され、その180日後である、2021年12月16日より施行されることとなります。
■規制対象となる中小企業
新規制の対象となる中小企業は以下の通りです。
1 商品の製造事業者
商品の製造事業者で、以下のいずれかに該当する場合
① 従業員数が200名以下
② 年間売上高が5億バーツ以下
2 サービスの提供事業者等
サービス提供事業者、または、卸売事業者若しくは小売事業者で、以下のいずれかに該当する場合
① 従業員数が100名以下
② 年間売上高が3億バーツ以下
■支払期限に関する規制
上記に該当する製造事業者やサービス提供事業者等から、商品やサービスを購入した場合、以下の代金支払期限規制が適用されます。
1 農産物を除く商業・製造・サービスの場合
農産物または農産物の加工品(複雑でない製造工程によるもの)以外の取引、製造、およびサービスに関する代金の支払い期限は45日以内でなければなりません。
2 農産物の商業・製造・サービスの場合
農産物または農産物の加工品の取引、製造、およびサービスに関する代金の支払い期限は30日以内でなければなりません。
3 例外
例外として、ビジネス、市場または経済上の観点から正当な理由が認められる場合には、よりも長い支払期限を合意することも許される、とされています。
しかし、具体的にどのような場合に正当な理由が認められるのかは、現状必ずしも明確ではないため、注意が必要です。
■違反時の罰則・責任
この新たな規則に違反した場合、取引競争法57条の違反として、行政罰(年間売り上げの10パーセント以下の罰金)の対象とされたり、また、違反により損害を被ったとして相手方から損害賠償請求がなされる可能性があります。
■結語
以上は新規則の概要となりますが、施行日が2021年12月16日と迫ってきておりますので、タイの企業から商品等を購入されている場合、当該取引・相手方企業が規制の対象となるかどうか、また、対象となる場合には、支払い期限に問題がないかにつき、見直しが必要となります。
【執筆者】弁護士 松本久美 タイ、バンコクの法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所シンガポールオフィスにおける長年の現地駐在経験を基に、タイ、シンガポールをはじめとした東南アジア諸国における企業法務、コンプライアンス等海外子会社管理、規制調査、労務、紛争解決等を取り扱い、現地法人経営経験を踏まえた視点からのアドバイスも提供。
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