短歌「読んで」みた 2021/10/02 No.17
眠るまでをあづける闇のまなうらに無花果は生るむかしのいろに
近藤かすみ『花折断層』(2019年 現代短歌社)
寝床に入り、横になる。そこから眠りに落ちるまでのひと時のことである。この場合の「あづける」とは、ゆだねる、任せるとの意。寝室の暗さに目を閉じている、その目の奥に浮かぶ無花果、いちじく。それは遠い記憶の中の色をしている。
規則的で安らかな呼吸の中、ひきよせられるのは知らない光景でも新しいものでもなく、懐かしい記憶の中のワンシーンである。無花果、いちじく。どのような