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短歌「読んで」みた

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短歌の鑑賞と、そこから得られたインスピレーションによるミニエッセイ。週一回、週の後半に更新。
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#短歌の読み

短歌「読んで」みた 2021/10/02 No.17

眠るまでをあづける闇のまなうらに無花果は生るむかしのいろに  近藤かすみ『花折断層』(201…

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短歌「読んで」みた 2021/06/25 No.6

通常は「浜」という字を使うなり然れども戸籍の本字は「濱」だ  浜田康敬 『「濱」だ』(角…

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短歌「読んで」みた  2021/06/18 No.5

目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港が好き  雪舟えま 『たんぽるぽる』…

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短歌「読んで」みた  2021/06/11 No.4

人魚になるはずが魚人になっちゃって海でも陸でもすぐに疲れる  谷 じゃこ『ヒット・エンド…

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短歌「読んで」見た  2021/05/31 No.3

死んだことなき人々が群れなして何かあるやうに駅に入りゆく  志垣澄幸 第14歌集『鳥語降る…

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短歌「読んで」みた  2021/05/20 No.2

思い込む心にストップかけられずバターロールの生地は膨らむ  久保田智栄子 第一歌集『白蝶…

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短歌「読んで」みた 2021/05/14 No.1

びつしりと人間を孕める太き胴梅雨の晴れ間の高空に光る  志垣澄幸 第14歌集「鳥語降る」(本阿弥書店 2021年) 飛行機を見上げる。離陸を見送っているようだ。家族や知己が乗っているのかもしれない。満席かほぼそれに近いのだろう。その機体を「胴」ということは別に珍しくもないが、胴=腹部と捉えたことにより途端に生き物めいてくる。しかもびっしりと孕んでいる、と。ほぼ夏の日差しに機体をきらきらとさせながら空の高いところを飛んでいく。SF的な雰囲気を漂わせつつ、格調高くまとめられてい