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旅人に話をせがむ村人の気持ちを知る-観劇レポの話-


2020年。もう何回、観ることをあきらめた舞台があっただろう?先の見えないウィルスの流行は、相変わらず観劇ライフを直撃中だ。

7/23~26の4連休、泣く泣くあきらめた奈良遠征。観られるはずだった芝居の数々よ…( ;∀;) 
中でも、劇団美山『狐狸狐狸ばなし』(弁天座・7/24)は、里美京馬花形の法印に死ぬほど期待していただけに、観れないことが悔やまれすぎた。
さらに、春陽座芝居の真骨頂『笹川の花会』(やまと座・7/24)。2019年2月に観た、澤村心座長の笹川繫蔵も人間味溢れるカッコよさでしたが…新体制の今は、心座長が忠義の子分・政吉役を演じておられたと、のちにtwitterで知った。
コロナのワクチンとタイムマシンが発明されたら、2020年7月24日の奈良に絶対にタイムリープします。

引き続き8月。コロナが全然どこかへ行かないせいで、劇場へ行けた数はまさかのゼロ回。
大衆演劇のメッカ・大阪では、スーパー兄弟×正舞座というレア&豪華な公演が一か月続き、千葉の九十九里では、花の三兄弟の毎日座長大会みたいな技巧がうなり、大分・きつき衆楽観では昼夜替えで劇団美山の芝居を観られる貴重な週末があったというのに、花金も土日もただステイホーム。こんなに長い一か月があっただろうか。
舞台が観たすぎて、時々客席にいる夢を見る…

そんな中、灯火のように日々を照らしてくださるもの。芝居のオンライン配信、そしてtwitterや時にはblogやnoteに書かれる観劇レポ、お写真だ。

お萩さんのツイート

(お萩さん(@yhgraceyh)の2020.7.13のツイート)

「楽しかった」「今日のお芝居は泣いた」「舞踊ショー、めちゃカッコよかった~!」
カメラで最高の瞬間を捉えて、時には素敵なコメント入りで。
楽しい舞台のおすそ分けがありがたい。

話が飛躍するようだけれど、大昔、日本でも外国でも、人々が生まれた土地からめったに移動せずに生きていた時代には。村を訪れた旅人は、村人たちに「何か話をしてくれ」と頼まれたという。

きっとどこか浮かれた気分で。
生きていくための忙しい日常を、一瞬だけ脇へ片づけて。
燃える恋の話、涙をそそる話、背筋も凍る怪談話、悪人が成敗される話――旅人の語る嘘とも本当ともつかぬ物語に、耳を澄ませ、心をかたむけた囲炉裏端が、きっと幾千幾万と。

2020年、コロナ禍のステイホームにて。インターネットという現代最強の武器を手に入れた私は、観劇レポを眺めている。そんな村人たちの切ない気持ちを、わずかに感じながら。
――この世には、心を動かさずにはいられない物語がある。
その目撃談を聞かずにはいられない。芝居の感想の一言でも、踊り手の美しさのワンシーンでも。きらきらと、美しい舞台のきらめきが、皆さまの語りやお写真を通して、私の膝元へこぼれ落ちてくる。

評判を読み、いつか目にしたいと胸躍らせた芝居はたくさん。
スーパー兄弟『女殺油地獄』、春陽座『笹川の花会』『喧嘩屋五郎兵衛』『京の友禅』(心座長バージョン!)、劇団美山『狐狸狐狸ばなし』『喧嘩屋の恋』『冬牡丹』、花の三兄弟『浮草哀歌』『定九郎破れ傘』『喧嘩屋五郎兵衛』、劇団天華『喧嘩屋五郎兵衛』『籠釣瓶』(千夜座長八ツ橋バージョンがあるとか)、劇団暁『籠釣瓶 吉原百人斬り』、etc、etc…
たとえ遠くても、同じこの世に、この幸福な空間があることが嬉しい。


…長々と書いてはみましたが、これはレポを書いてくださるタイムラインの皆さまへの、ささやかな感謝状です。いつもありがとうございます!どうか必ず健康とともにありますように🌸