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2023年・珠玉の役(6芝居より)+α

2024年も明けましたが、2023年に出会った当たり役の数々について。


①新風プロジェクト・劇団美松『化狐雪夜啼』より松川小祐司座長のバケ、里美京馬副座長の和尚
(3/20@篠原演芸場、10/18@浅草木馬館)
吝梶丸さん作、坪田塁さん潤色

2023年、最も多くの方がうなずく当たり役が、この一本じゃないだろうか。少年のように可愛い化け狐、優しくて大らかな和尚。
この可愛い二人を、永遠に観ていたい…

3/20の口上
10/18ラストショー後

異なる者とのぶつかり合い、受容、共存といった現代的なテーマが、おとぎ話に包まれて。
初演から、下座+ゲスト1名のみで配役されているので、再演されやすさも嬉しいポイント。
吝梶丸さんの次回作も含め、新しい風の吹く芝居を心待ちにしています。

2024年1月現在 劇団美松さんにてバケのキーホルダー発売中。買いました


②長谷川劇団『銀のかんざし』より愛京花総座長のおかつ、長谷川一馬若座長の清之助(4/22夜@篠原演芸場)

「見てる方が恥ずかしい」ベタベタした恋愛のダメな部分に、大いに笑った。

しっかり者の髪結いなのに、年下の旦那にのぼせきっているおかつ。

頼りないけど、スっと背が高く、色男なのも感じさせる清之助。

配役がぴったり! もとは松竹新喜劇の芝居(作・舘直志)だそう。
人間のおかしみをユーモラスに描く、素晴らしい演者&作品でした。


➂たつみ演劇BOX『不知火検校』より小泉ダイヤ座長の富の市(5/6@梅田呉服座)


「ひたすら面白くて、観始めたらラストまであっという間」
そんな前評判の本作を、お外題表に見つけて喜んだ。

幕開いて、気がついたら放心状態で終わっていた。
悪のカリスマ、富の市の一挙一動から目が離せない!

「八つの徳を並べても、金(カネ)の一字にかなうものか!」
ダイヤ座長の甘い二枚目と、富の市の極悪非道ぶりが合わさって、魅力的なキャラクターになっている。

脅迫、暴行、殺人、盗み……悪の限りを尽くしながら、しかし彼にもまた、目が見えないことの底知れない苦しみがある。
「夢を見ていた。目が開く夢だ」
権力の絶頂でも、かなわぬ夢を見て、初めて惚れた女性も最悪の形で失ってしまう…

宇野信夫氏の名作歌舞伎。映画にもなったそうです。名作と演者の出会いは尊い✨

④新風プロジェクト・劇団鯱『風花、繚乱』より兜獅子丸若座長のお嬢吉三(9/23@篠原演芸場)
渡辺和徳さん作

お嬢吉三は、何人もの名優が演じていらした超有名な役。
設定とビジュアルだけでも、人を十分惹きつける。
加えて獅子丸若座長のお嬢には、生々しい、血の通った人間らしさを観たと思った。

「男の肉体に生まれたけれど、女として育てられた」というお嬢は、和尚吉三と恋に落ちる(お嬢と和尚が見つめ合うシーン、色っぽく翳りがあり、2023年恋愛名場面NO.1でした)

新風プロジェクトには、もっと、色んな性のキャラクターを描いていっていただきたい。


⑤劇団天華『とこしえの十五夜』より澤村千夜座長の主人公、沢村千華さんのお夏(10/22@星天座)

お萩さん(@yhgraceyh)さんから、劇団天華さんへの台本提供(今年で10本目だそうです)。

天華さんならではの、【心のあり方が、世界のあり方を決めている】そんなファンタジーなお芝居。

大きな秘密を抱える主役に、澤村千夜座長。
「もはや来ることのない明日を、待ち続けましょう」

どこか寂しい感じのする座長に、よく似合っていました。
「50代ならではの芝居を作ってもらった」とご口上にて。


心の傷で、肉体も時を止めてしまうヒロインお夏に、沢村千華さん。

もう一人の主役と呼んでいいほどの活躍ぶり!
「あたしはきっと呪われているんだ。昨日までは幸せだったのに…もう昨日の中に帰ろう…」

ぽたぽた泣かされた。
振り絞るような演技に、若い才能が花開いてゆきます。


⑥橘劇団『大文字』より橘大五郎座長のおかじ、里美京馬副座長の稲葉新十郎(11/15昼@博多新劇座)

過去の感想ブログに惹かれて飛んだ博多🛫(未来でその芝居に出会う立場になると、レポって本当にありがたい)
優れた演者の組み合わせが、よい景色を見せてくれました。

「あたし、やっぱり武士の血が流れているんです。父が殺されたと聞いてから、仇をとりたい気持ちでいっぱいなんです!」
ヒロインおかじは、優しく可愛いだけじゃない。意思の強さと行動力に満ちている。
彼女の清々しさは、橘大五郎座長の清い女形あってこそだった。

一方の新十郎は、暗い過去の呪縛を背負った男。おかじのため、自らの命を葬る決断をする…
京馬副座長の愛嬌と甘さによって。重苦しい悲劇の上に、夫婦の積み重ねてきた日々も、また柔らかに咲いている。

「大文字」は、台本としても超傑作です。
一体誰がつくった物語なのだろう。


番外・台本が熱い


演者も凄いが、【本】がすごい。新しい景色を見せてくれる。
そんな作品を書き留めておきたい。

★劇団美山『河内十人斬り』5/28夜@池田呉服座

「完璧な芝居」とはこの話を言うのだろう。
狂気じみた夏、田舎やくざ、男の面子、血生臭い事件……どこを切り取っても、完成された一つの世界をのぞき込むようだ。

主役・熊太郎に里美京馬副座長、弥五郎に里美花太郎花形

かんげき2024年1月号の芝居グラビア特集でも、この日の熊太郎&弥五郎の血まみれショットがひときわ目立つ。

ご口上では、これで上演が最後と紹介されていましたが…勿体なさすぎる!復活お待ちしてます!


★新風プロジェクト・スーパー兄弟『ひとひら、遙』8/10@篠原演芸場(坪田塁さん作)

「大衆演劇でBL(ボーイズラブ)!」と、2023年に話題を呼んだ一作。
脚本の坪田先生、日本文化大衆演劇協会様、演者のチャレンジ精神で実現した、画期的な舞台だった。

当日席に配られていた配役表。大変助かりました

性的マイノリティを描いた芝居は、大衆演劇ではほとんどない。
けれど芝居の登場人物の中にも、実は私が気がつかなかっただけで、本当はずっといたのだろう。

★劇団鯱『雪の花嫁』11/11昼@川越温泉湯遊ランド

兜蛇々丸さん執筆のオリジナル狂言。
雪乃と竜二カップルの、出会いから夫婦になり、その後の悲劇に至るまでがとても丁寧に描かれている。

作者の兜蛇々丸さん

雪の結晶のような、儚い優しいお話。
若い方がメキメキと力をつけている劇団鯱さん。蛇々丸さんの次回作にも大いに期待します。


上演いただいた思い出

2023年にも自分の書いた台本を上演いただくという、最高の思い出がありました。ありがたい限りです!(2022年にもそんな嬉しい出来事がありました)いずれも日本文化大衆演劇協会様の、新風プロジェクトの一般公募に応募したものです。
携わられたすべての企画者の方、潤色の方、演者の皆様に深く感謝申し上げます。

★一見劇団さん、章劇さん、劇団美松さん『はんぶんこ』1/20@篠原演芸場(潤色・坪田塁さん)

口が悪いけど強い奥さん、頼りないけど心優しい旦那さん。そんな大家夫婦が経営する長屋。
「別れる!長屋ははんぶんこだ!」
半分に分けられた住人たちはどうなるのか?

楽しみながら書いた台本を、素晴らしい演者が実現してくださいました(上演当日の長い感想)。なんと主役二人は関東の雄、一見好太郎座長と澤村蓮座長!
いきなり別の劇団同士で、こんなに息ぴったりにお芝居ができる…大衆の役者さんにしかできないことだと改めて思いました✨

一生の宝物の台本
当日の貼りだし!


★劇団美山さん、劇団鯱さん『俵星玄蕃 命の約束』

浅草木馬館様の素敵なポスト

「俵星玄蕃が命を賭けて、赤穂浪士を助けに行くのは何のためだろう?」
そこから、玄蕃の人生を想像して生まれた物語です。

劇団美山さんの里美京馬副座長のイベントで上演いただくという幸運に恵まれました。
さらに4/24@浅草木馬館にて、劇団鯱さん(京馬副座長ゲスト時)に上演いただきました!その後も兜獅子丸若座長が玄蕃を複数回演じられ、鯱さんホームページの演目ライブラリに、詳細なご紹介まで。

素晴らしい玄蕃と杉野がたくさん観れて嬉しかった~!



2024年も目を皿にして、当たり役を観てゆきたいです!