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大きな音の楽器?小さい音の楽器!

オーケストラの弦楽器は大きい順に背丈より大きいコントラバス、座って両脚の間に置いて弾くチェロ、そして顎に挟んで弾くビオラ、ヴァイオリン。
さて、この弦楽器の中で音が一番大きくてソロが出来るのは一番小さな楽器ヴァイオリンです。何故でしょう?小さな楽器ですが高い音を出すために弦のテンション=張りが最も強いのです。その強い引っ張りの弦が4本あります。そして、弦はペグで巻かれて指板の最先端のナットから駒=ブリッジまでと、その後ろテールピースで留られます。そしてボディの上面の響板のトップはラウンドしています。いちばん盛り上がった部分にブリッジが有ってラウンドした響板を上から弦のテンションで強力に押し付けています。
響板の身になってみれば、大きなストレスを与えられてボディはその圧力に耐えています。
この大きなストレスが弓で擦られた弦の振動がブリッジを伝わって響板全体とボディ全体に共鳴して大きな音が出ます。その弦のテンションはビオラ、チェロと楽器が大きくなるにつれて緩くなり低音を出します。そして弦が太くなっていきます。

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写真上はバイオリニストKumiko Hirotaさんです。下は尾花毅さんとデュオの時です。

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さて、バイオリンよりも3〜4倍の大きさのギターは、楽器としてはとても音が小さいのです。バイオリンはコンサートホールで、ソロで大ホールでも十分に隅々まで聴こえ響き渡ります。しかし、ギターはそうは行きません。
小さな部屋でも十分な音量が得られません。ギターのフォルテッシモとヴァイオリンのフォルテッシモは10倍以上違うでしょう。
では、ギターは何故大きな音がしないのでしょう?結論から言うと弦のテンションが足りない、響板=トップのストレスがない。そのために共鳴音が小さいのです。ギターの求める音域では弦のストレスは今のテンションがベストです。そして構造上サウンドホールの後ろのブリッジがトップに固定されてますから、これ以上は望めません。
と言う事で、アコースティックでは今の音量が限界です。
オーケストラのバックでバイオリン協奏曲は素晴らしいバランスで成立します。ではギターではどうでしょう。オーケストラのバックでギター協奏曲は無理があります。と言ってもオーケストラのバックでの協奏曲は1曲だけでしょうか。ロドリーゴ作曲のアラフェス協奏曲、初演は1939年です。ロドリーゴは村治佳織さんが亡くなる直前にお会いになっています。
ストレスが共鳴音を大きくする実験は可能です。
必要なのはプラスティックの下敷きと音叉かオルゴールの音を出すメカ。
プラスティックの板の上に音叉を載せると共鳴で音が出ます。
そこに、下敷きを上から押し付けてラウンドさせます。音量は数倍になります。
大きな音を必要としたのは古代から情報伝達手段です。太鼓、鐘、螺貝など。太鼓=ドラムでいちばん大きな音を出すのはアフリカのジャンベ!でしょう。アフリカンドラムの代表格です。
ジャンベはどうしてあれ程強大な大きな音になるのでしょうか?
それは叩く皮の下にある共鳴管です。ズドーン!と。
よく聞くとわかりますがジャンベは全ての音が大きいのではなく、共鳴管の響く音だけが大きいのです。
写真はクリストファーハーディーの叩くジャンベです。彼は洗足学園でパーカッションを教えています。それ以外にも沢山の音楽活動をしています。

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さて次はホーンです。人は山に登るとヤッホー!と叫びます。その時に両手で自然とホーンを作ります。そうあれです。意外にも効果があります。
角笛とか螺貝もホーンです。
木管楽器のクラリネットやオーボエも金管のトランペットやトロンボーン、ホルンやチューバ、スーザホン。そしてサックス、サックスにはソプラノ、アルト、テナー、バス。
何故、これらの楽器の音が大きいのか?それはホーンです。奏者はベルと言いますが、あのホーンの形状は音のにコンプレッションを与えて放出する事で遠くまで届きます。
写真はUkoさん!

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音はテンションや圧力をかけると音量や浸透力が変わります。ホーン効果と言われますが、10dB以上の音量が上がる事が立証されています。そしてメガホンで判る様にホーンは指向性を与えます。届かせたい場所に音を届ける。
それが音響のPA=パブリックアドレスです。
そして、古代ギリシャ時代のコロセウム=円形劇場はそのホーンの一番下の奥から演説して声を届かせていたのです。
写真はオーディオのホーンスピーカーシステムです。

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最後はおまけです!必殺仕事人?三味線の弦で始末します。
あれは絹糸です。非常にテンションに強いです、丈夫です。ギターやチェロなどの弦はガットと言われる羊の腸です。現代はナイロン弦や鉄弦です。
バイオリンの弓の方は今も昔も変わらず馬の尻尾の毛です。そして擦る摩擦を強める為に松脂を使います。

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