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推し活をお店にも棚田にも。


少し前に、佐賀・長崎の棚田調査ツアーに行きました。
そこで知った棚田の土木技術が途方もなく凄かったので記録に残しておきたくて綴る記事です。

棚田の話ではあるんですが、いまコロナ禍で、たくさんの愛すべきお店が窮地に立たされてる中で、「好きな場がこれからもそこにあってもらうためには、シンプルに その場を好きな人が行ってお金を落とすしかない」なんて漠と考えていて、これは棚田にも、近所の大好きな花屋やお好み焼き屋にも通じることだと思ったので、つらつらと書き残しておきます。

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皆さん棚田って行ったことはありますか? 美しいですよね、でも「手間は2倍で収量は半分」と言われているほど、単純に「作物の生産性」という面で見ると、恵まれた環境とは言い難い場所です。

私が今回行ったのは、佐賀と長崎の棚田4つ。江里山、蕨野、浜野浦、土谷の棚田です。一口に棚田と言っても、全体の規模、1枚あたりの面積、水のしくみ、耕作者の事情など、こうも違うものかと驚かされたんですが、
個人的には特に土木の力を感じた旅でもあって、中でも蕨野と土谷は強烈でした。

まず、蕨野で驚いたのは段々になった棚田の「一段」の高さで、なんと最大8.5mにもなるのです。こちら↓やばくないですか。この上の田んぼにいる時、うっかり作業中に立ちくらみがして落ちたらとか思うと膝が震え上がりました

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なんちゅうかもう、全体的に壮大すぎて、棚田というか遺跡なんよと私の中の千鳥ノブがずっと興奮していましたね

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なぜこんなに高いかと言うと、棚田1枚の面積を広くして耕作の効率を良くするために、上下の田んぼを寄せて1つにする「田寄せ」(田直し、せまち直しとも言うそう)を行っているため。
これ↓はその跡がわかる石垣です。

水源には大きなため池があり、水路は暗渠で整備されていました

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一方 土谷の棚田は海のそばに池が作られてあり、田んぼから流れてきた用水を溜めた後で、さらに高地の池へポンプアップして再利用するという壮大な仕組みが地下に巡らされていました
いやいや、どういうこと?ってなるんですけど本当にそういうことらしい

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↑こちら左奥、白い建物のあたりにある池に水が溜められているみたい。ここからポンプアップされた水が、どうやらこの↓高地の池に来て、また1枚1枚の棚田をつたって下へ降りていくらしい

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この壮大な仕組みの背景は、ここがもともと炭鉱が盛んな地であったこと。採炭の坑道を整備するために地下水が枯渇したことから、石炭事業団がこの仕組みを設置したそうな(すごすぎるんよ)


単純に土木の力に感動するんですが、効率が悪く手間がかかる棚田の耕作は見捨てられやすいと思う中で、
「この棚田を残そう」、と思った人たちがいて、
「ならば今お金はかかるけれど今後のためにも整備をしよう」、となったわけで、その決断の背景もとても興味深いものです


蕨野は棚田の保存計画において、1枚1枚の田んぼを4つの区分に分けて保存の優先度をつけており、これは「全ての田を保存していくことはできない」という諦めとも捉えかねないけれど、
「いずれ衰退したとしても いかに長くこの景色を営みを 無理せず続けていくか」という 潔くも心地よい覚悟にも見えて、私にはとても前向きに映りました

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改めて、私がなぜ棚田活動をしているかを考えてみたけど、
それは楽しいし農作業が好きというのはもちろんだけど、「これからも続いてほしいな」と思うものには、できるだけ、そう思う人がお金や労力を費やせたらいいと思っているからで
これは棚田だけじゃなく、愛すべき店にこそ足を運ぶことにも通じている

だからこういう場所に来て「楽しいな」「素敵だな」って思って恩恵を受けた人がお金を落とす場所がないというのは、もったいないなと常々感じています

好きな店や人や地域になら、積極的に財布をゆるめたくなっちゃう感覚で、年々そういうお金の使い方が増えてきたように思うし、クラファンなんて特にそうだけど、社会的にもそんな推し活的消費が増えていけばいいなと思う



ここまで書いておいて、強調して言いたいのは、「意識高い消費をしようぜ!」って言ってるつもりは全くなくて、好きなものにお金を落とせる嬉しさ、要は推し活みたいな仕組みが、もっといろんなところにあればいいなということ

 悲しいけど、社会的に良いものってお金がかかることが多いのは事実だと思ってて、それを選択できるってことは選択できるだけの余裕があるということにすぎないとも思うんだけど、推しとして楽しく課金できる以上は、好きな店にも棚田にも活動にも、使えるお金や労力をどんどこつぎ込んでいきたいなと思うのであった


おわり

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