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樋口円香「フリークス・アリー」を読んだ感想



※円香の他のカードやシナリオイベントのネタバレがたくさんあります。
 ご注意ください








Dive

最初に出てくる回想はSTEPの内容

STEP - 胸に抱く鬼燈


熱烈なラブコールを送った監督は、その役を表現するのは他の人もできるけど、円香が持つ世界観が欲しいと言います。


左を選ぶと、監督が自分を通じて何を見ているのか気になるという話をします。 ここでは、以前のシナリオイベント 「いきどまりの自由」 を思い出しました。 「いきどまりの自由」では専門学生が伝われないものはないと、いくら隠しても伝われると言うところがありました。 私はここで円香が内面を隠そうとする態度について、結局表に出ると言ったのだと思いました。 そして今回のコミュでは、監督が内面を隠している円香を見て、何らかの世界観を見つけ出し、それが必要だと言っています。 つまり、円香がいくら内面を隠しても、現れるものが存在すると思います。 あるいは内面を隠す行為そのものが、内面を大切にする円香の世界観を表しているという逆説的な意味を表しているのではないでしょうか。


into

前衛的で実験的、アヴァンギャルド、またはアンダーグラウンド。
剥き出しの心を衝動のまま、表現する。
つまり自分の内面をそのまま表現すること。自分の内面を衝動を通じて表出することを話したのは「ピトス・エルピス」そしてLanding Pointを思い出します。

「ピトス・エルピス」- gem
Landing Point - color


円香がビジネスを度外視した活動がしたいと言ったらプロデューサーは快く背中を押してくれる。それがプロデューサーの美学。
ビジネスを度外視した活動は自分の内面を衝動そのまま表現すること、そしてこれを背中を押してくれるというプロデューサーの関係は「ピトス・エルピス」のプロデューサーと円香の相反する考えを独白で一緒に描き出した場面が思い出しました。

「ピトス・エルピス」- gem


リアルな演技をするためには円香という楽器がチューニングする必要がある。相手と共鳴し、リアルに生きる思考を使わず本能衝動に動かされる。これは今まで円香が避けてきた内面を衝動を通じて表面に表わすことです。


ワークショップで会った女優は円香のWingの時を思い出します。

樋口円香 - Wing


女優は周りを見返したくて芸能界に入ったんだけど不器用だったし比べられることに疲れちゃってもうやめたいなって、最近思っていると話します。
けど円香の立場では、自分は自分の理想郷だと思っている透のすぐそばで比較され、あるいは透のようにはならない自分をすぐそばで自覚しながら、苦しみながらも自分が望む理想郷だから逃げられない彼女なので、他人が簡単にあんなことを言うのを聞くと、怒ってもおかしくないと思います。


その後、真ん中の選択肢ではプロデューサーが空がどうなっているかを正確に伝えるには空を見上げなければわからないという監督のアドバイスを代わりに伝えてくれます。 ということは彼女はまだ伝えなければならないこと、監督が演技について話したように、思考せず衝動に流れる自分あるいは衝動そのものを完全には向き合えずにいると解釈されます。 実際、彼女が自分の衝動、内面を隠す行動については何度も言及されたことがあるので、今は彼女が自分の内面に向き合う時が来たと思います。

そしてその後流れる空は円香の色と同じ赤い夕焼けの空


the

自分にいい世界観を持っていると褒める監督に、円香は監督の目に自分がどのように映っているかを聞いてみます。
円香は自分の美しいはうまく言語化できないと話し、監督の美しさは心にあるものを描いているのかそれとも渇望から来るのか質問します。
これは円香自身が現在自分の内面にあるものを描き出すか、あるいは理想郷に対する渇望を表わすべきかを悩んでいるのではないでしょうか。

これに監督は花や星を美しいと思うことはないのか聞いてみますが円香はないと、空も海もそう思ってないと話します。そして監督はやっぱり円香は円香にとっての美しいものを持っていると安心します。

円香が美しいと思ったことはないと追加で提示した空と海は両方とも共通して透明だという普遍的な認識が存在します。 円香が求める透明さを持っている二つの存在に対して美しいと思ったことはないというのは、海と空が円香の美的基準に合わないから、あるいはそれよりずっと美しいと思う存在を既に見つけたからだと思います。
つまり、円香はすでに自分にとって美しさに対する確かな価値観があるから、あるいはすでに自分にとって何よりもっとも美しいものを見つけたから、監督は円香にとって美しいものを持っていると言ったと思います。

配役を円香にオファーしながら、円香が持っている世界観が必要だと言ったことより、おそらく監督は円香が考える美しさに対する価値観、世界観にある程度気づいていたのではないかと思います。 自分の内面を隠すがその隠す行為から内面を、物の本質を大切にする価値観があらわれるのだと思います。
そして、すでに何よりも美しいものを見つけたという解釈からは、当たり前のように透を思い出します。

「ダ・カラ」- る


左の選択肢を選ぶと、プロデューサーにあなたの意図も大体は汲めるようになった。 そして逆も然りですよねと言います。
意図とは、何かの行動をする理由であり、その行為の本質とも見ることができます。 つまり、円香が重要視する内面、本質だと言えます。 そういう人の本質を、プロデューサーの内面がもう大体は汲める。 そして、その逆である私の内面をあなたはもう知っていますよね?という言葉に聞こえます。 個人的に円香Pとしては、円香がいかに物の本質を、内面を大切にしているのかについて、本当にたくさん考察したことがあったので、このような言葉を当たり前のように言う円香の姿があまりにもすごく感じられました。 内面を何よりも重視するので、自分の内面は隠してプロデューサーの内面は表そうとした円香が、もうお互いがお互いの内面を知っているんでしょう?と言うのは、もうほとんど夫婦ではないかと思います。


真ん中の選択肢を選ぶと、休んでほしいというプロデューサーの言葉に従う姿を見せてくれます。 最近、シャニソンも一緒にやっているせいか、車内で自分の寝ている姿を見せてもいいくらい距離感が近づいた姿が見えるのがいいですね。 そして空を思い出しながら、そんなもの、あるわけ…と言います。 これは、最後に監督が言った円香は円香にとって美しいものを持っているという言葉に対する反応に見られます。 自分に美しさがあるという監督の言葉を否定する自己批判的な態度に聞こえます。
そして出てくる空はSTEPで透の目を通して見た透明な昼の空と同じです。 しかし、intoの最後に聞いた伝えなければならない空の言葉と一緒に出てきた空は円香のような赤い夕焼けでした。 監督が円香から見つけた美しさは、円香が持つ世界観なので、彼女の本質を望んでいますが、円香は相変わらず自分にとって美しさとは透明さを思い浮かべ、自分にはないと思っていることだと思います。

STEP - 鏡の花、水の中の月



Underground

プロデューサーと円香が映画について話すことから始まります。

映画は旦那様が吸血鬼だけど、人を襲う怪物になりたくなくて飢えに苦しんでいたところ、メイド長が渡した吸血鬼には毒であるチョコレートを食べて死んだと描かれています。 しかし、プロデューサーと円香の会話で、実は旦那様は吸血鬼ではなく人だったことが明らかになります。 人の食べ物が体に当たらず、吸血衝動だけが続くので、メイド長が渡したチョコレートを吸血鬼には毒だと知りながらも食べて自ら死を受け入れます。 そして、実はメイド長が吸血鬼で、旦那様はメイド長が吸血鬼であることも、チョコレートに何が入っているのかも分からないまま死んだと円香の口に伝わります。 つまり、吸血鬼のメイド長が永遠の飢えに苦しむ旦那様を楽にするために、旦那様が実は人間だったという事実をバレないようにするために、チョコレートに毒を入れたのです。 旦那様が人間だという事実を伝え、人間としての治療をしたなら可能性があったかもしれないが、メイド長はそうせず、見殺しにした。 非道徳的だと思うが、それはメイド長なりの旦那様への愛だったと円香が解釈したのではないかとプロデューサーは推測します。

先のコミュでメイド長の旦那様が自分に恋情を持っているという台詞とプロデューサーの”旦那様が人であることをあきらめるほど絶望するほどだった、 もしかしたらそうなることを望んでいたのかもしれない” という台詞を通じて、実は旦那様はメイド長が吸血鬼だという事実を知っていましたが、自分が人なら彼女への愛が叶わないので絶望し、人であることを諦めたのではないかという推測ができます。 それなら、メイド長が吸血鬼に毒であるチョコレートに毒を入れて旦那様に与えた行為は、自分が人間であることに絶望する旦那様に対する彼女なりの恋情と愛だったと思います。 自分が愛する存在と違い、一緒にいられないという事実から逃げた旦那様に安らぎを与えたのだと思います。 旦那様が人間であることを伝え、人間の治療を受ければ人生は続くだろうが、絶望は永遠に続くものなので。

そしてこのような解釈に対して、円香はプロデューサーならむしろ絶望ごと抱きしめようとするでしょ、そのまま一緒に沈もうなんて思わないと思います。

「カラカラカラ」のホームボイス。そしてLanding Pointで水に落ちたけどプロデューサーを掴むくらいなら溺れて死ぬと話す円香と自分が勝手に助けると話して手を掴んで助けてくれたプロデューサーとのシーンが思い出しました。

「カラカラカラ」- ホームボイス
Landing Point - yoru ni
Landing Point - yoru ni

一緒に沈もうなんて思わないで絶望ごと抱きしめようとすることをすでに直接経験したので出た言葉だと思います。

そして映画のようにプロデューサーの口にチョコレートを入れてくれる円香のこのシーンは、本当にすごいとしか話しができません。

それとともに、円香はその味を覚えておいてください、いつか私がそう望んだ時のためにでもと言います。
映画の内容でチョコレートが象徴する物がメイド長の旦那様への恋情、愛ということを考えると、これをプロデューサーの口に入れた行為、そして後のためにその味を覚えてほしいという言葉は、果たして何を意味するのか。

円香がいつか自分がそう望んだ時のためにでもと言いましたが、これに対する解釈は大きく3つに考えられます。

まず映画の内容では、メイド長がチョコレートを旦那様に渡して楽にしてくれることで一緒に沈んだと伝わります。 つまり、円香がプロデューサーと一緒に沈もうと望む時、その味に気づき、自分を絶望ごと抱きしめてほしいという意味。まるでLanding Pointで勝手に助けてくれるという宣言のように。
そして、円香自分が旦那様のように永遠の飢えと絶望に苦しんでいる時、これを楽にしてくれるためにチョコレートを準備してほしいという意味。これはおそらく理想郷に対する永遠な飢えに苦しむが、そうなれないという絶望に苦しむ自分のために、これを解決できる方案を準備してほしいという意味だと思います。 これまでプロデューサーの方針のように透明な声だけを追求する円香に、自分の内面を現す、歌いたい衝動に従う方針を自分に伝え、助けてほしいという意味にも見えます。
そして最後に、チョコレートがコミュ内で恋情、愛を意味したというところで、自分があなたのチョコレート(愛)を望む時のために今味わわせてくれた自分の愛の味を覚えてほしいという意味。こちらはほとんどプロポーズになってしまいますね。


少し映画の話をしましょう。映画に関する情報は、先のコミュたちの始まりに情報を提示してくれていますが、ある程度の叙述トリックが存在すると思います。

彼女は永劫の飢餓のなかに生じた気泡だった
私の主人は吸血鬼だった
街中の人を殺めても、その飢えは満たされなかった──
チョコレートの舌触りは血の滑らかさに似て 飢えを紛らわすことができた
毒が巡る
熱い、恋情のように
身体中の血が入れ替わっても
私は、美しくは、なれない

私の主人は吸血鬼だった。街中の人を殺めても、その飢えは満たされなかった──という話がありますが。主人が吸血鬼だったという事実情報の後ろに人を殺めても飢えが満たされなかったという主語のない文章を入れて、主人のように情報を提示してくれていますが、人を襲う怪物になりたくないと言っていた主人が人を殺したとは思えません。 つまり、メイド長についてのお話だと思います。
メイド長の話をしてくれるものだということを考えながら読めば、これはメイド長が吸血鬼には毒であるチョコレートを食べ、旦那様の後を付いて行ったという内容を解釈することができます。 そしてメイド長も主人に恋心を感じていたと分かります。 主人について美しいと評したメイド長が、体の中の血が入れ替わったとしても、自分は美しくなれないと言ったのは、人と吸血鬼という外面ではなく、心のような内面の本質的な部分で美しさを感じたと思います。 まるで円香のように。



Wallow

メイド役の女優と円香の会話が行われますが、女優は自分が「ダイヤの原石」だと言われてスカウトされたと言います。 そして聞こえてくるあのbgm

ダイヤの原石という言葉からすぐわかるように、これはwingでプロデューサーが円香を捕まえるために言い出した言葉であり、stepでは外面だけで判断したと思い円香に不愉快を感じさせたセリフです。だからここで円香も少し驚いた反応を見せてくれます。
しかし、女優は自分が磨かれていない。 若くもないけど、時々期待されているので、やめられずずるずるしていると話しますが、後ろでプロデューサーがダイヤの原石は綺麗だと答えます。 八面体の個性的な結晶は、カットするのが惜しまれるほど美しいと。

そしてその後、円香がプロデューサーにあなたはどういう意味で言ったのか質問をします。 ダイヤの原石=美しい。 つまり、初対面で自分に美しいと言ったのか直接聞くのですね。 これに対してプロデューサーは、円香を捕まえようと瞬間的に言った言葉だと答えますが、それでも私の目は確かだったと言います。 つまり、一目で円香の美しさに気づき、ダイヤの原石という言葉を使ったのが間違っていなかったという意味です。 つまり、初めて見た時から君は美しかったと言ってくれていますね。


ちなみに…このTrueEndの名前はWallowですがWallowの辞書的意味はこうです。

そして今回の衣装のホームボイスの中にある美に、耽る

なのにそのコミュの内容がプロデューサーが円香に最初から美しだったと話す内容ですね。
プロデューサーが円香の美しさに耽ているのか、円香がプロデューサーの美に耽るのか。


最後に

今回のカードコミュは本当に円香Pとして何度も感心しながら見ることができた、とても素晴らしいコミュでした。 見ながら感心し、頭の中を整理して感想を書きながらもずっと感心することを繰り返しました。 これからの円香の成長方向、そして円香とプロデューサーの関係を適切に表しながらも、その内面を解釈して理解すると、ものすごい意味で伝わってくる、本当にすごいコミュでした…

最後まで読んでくださってありがとうございます。 皆さんの解釈に少しでもお役に立てれば幸いです。





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