アッパレ松潤のお人形遊び〜「どうする家康」第1回感想〜

 1月8日(日)から始まりました、2023年NHK大河ドラマ「どうする家康」。松本潤さんを主演に迎え、古沢良太さんの脚本で、ナイーブで頼りないプリンスこと徳川家康のサバイバルを描きます!

 迎えた第1回、様々な魅力がありますが、お人形遊びに興じる少年家康のシーンを、子役さんではなく松潤さん本役が演じていた、というのがもう既にアッパレでございます。というのも、あれを視聴者はどう感じるか? 「子どもらしい遊びのシーンは子役でやれ」「設定上14歳でしょ?瀬名(有村架純)の方が年上じゃん」「松潤には似合わないシーン」「見てはいけないものを見た」などなど、否定的に思われるかもしれません。

 しかし恐らく、それはキャスティングの狙いです。そのマイナスな感じ方は、家臣の目線の追体験なのです。「三河一国を背負って立つ若殿」と期待する石川数正(松重豊)、「源頼朝公が天から降ってきたのかと思った」と形容した酒井忠次(大森南朋)ら岡崎の家臣たち。強く頼れるリーダーであって欲しい、そんな若殿をお支えしたい、そう願う家臣たちが、女子とお人形遊びをして喜んでいる若殿の姿を見たらどう思うでしょうか? 「若殿には似合わないシーン」「見てはいけないものを見た」「情けない」「キモっ」

 "松潤のお人形遊びにガッカリした視聴者"="若殿のお人形遊びにガッカリした家臣たち"ということで、全く同じ構図になります。視聴者はどんなに頑張っても、戦国時代の武将と完璧に同じ気持ちにはなれない。しかし見せ方を変えるだけで、感覚が見事に同期されます。この物語における家康の出発点として何度も強調されている「ナイーブで頼りないプリンス」という見方、捉え方に、視聴者の視線は完全に独占されるのです。まさに「どうする家康」と問いかけている彼の周囲の家臣たちと、全国の視聴者の目線がピッタリと揃ったのです。

 1年間続くドラマの初回で、全国の視聴者の目線を見事、登場人物のすぐ隣に埋め込んだのです。この席からこの角度で家康を見て!と言わんばかりに。この強気な導入は誠にアッパレ。このような見せ方を毎週繰り広げてくれるのかと思うと、もちろん年末まで並走したいと思う次第でございます。次回以降も俄然、楽しみな大河ドラマのスタートでございました。

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