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Attacca

10月22日に公開されたSeventeen9番目のミニアルバム、Attacca。

「Attacca」は「楽章と楽章の間を切れ間なく演奏する」を意味する音楽用語であり、「襲え」「続けよ」という意味もあります。
そしてその原型であるイタリア語「Attaccare」は「結びつける」「はじめる」という意味で用いられることもあるようです。

そして1年前の「Semicolon」からの文脈。
「少し休もう、これからの長い旅路のために」というメッセージのもと世に出された小休止のアルバムから一転、絶え間なく「続けよ」そして「襲え」と…

タイトルひとつでSeventeenさんがどれだけ好戦的な姿勢でカムバックするかが窺えて、本当に鳥肌がたちました。それどころかあまりにも好きで何度もお腹を下してしまいました。

「Power of Love」を今年のテーマに掲げたSeventeenさんたち、中でも今回は「Rush of Love」。
唐突に押し寄せる愛。

宝箱のようなアルバムに、どんな宝石が詰め込まれているのか…手に負えないなりに書き残したいと思います。

소용돌이 (To you)

소용돌이は“渦”を意味する言葉です。
トラックリストが出た時、なぜ英語タイトルが「To you」なのか不思議に思いました。
Seventeenさんの曲では英語タイトルが韓国語タイトルの直訳になっていないことがよくあるけれど、ここまでパッと見て何も文脈を想像できないのは初めてでした。

그대 I always need you 
大切なひと 僕にはただ君だけ
아직도 난 한걸음이 아득해요 
今でも僕は一歩が途方もなく遠いのです
거친 바람만이 나를 맴돌죠 
吹き荒れる風が僕を取り巻いています

辛い、と表現するのは違うような…苦しいというのも違う気がする…ただ、「途方もない」という緩やかな絶望を胸に抱えているような歌い出し。

一歩を踏み出すことすらどうしようもなく難しく
ただ吹き荒ぶ風の中に立っている。

優しい彼らに、こんな想いをしてほしくない。
けれど私は、まだ彼らが「大丈夫」じゃないことに心底安心してしまいました。

생각처럼 쉬운 게 없네요 
思うほど簡単にはいかないですね
매일 생각해요 난 어떻게 해야 할지 
毎日考えます 僕はどうしたらいいのかと
도착했다 싶을 때 다시 시작이네요 
辿り着いたかと思えばまた始まりなんです

「試練」と呼ぶにはあまりにも地味な、けれど毎日確実に押し寄せてくるしんどさ。
走り続ける限り陽炎のように逃げていくゴール。
それらに今でも慣れることがないのは
逆に言えば心を殺さなくてもここまで来れたのは
きっと「Seventeen」だからなのでしょう。

彼らがアイドル・SeventeenとしてCARATに伝えたいメッセージとしてではなく
一人ひとりの人間がSeventeenとして生きる中で思わず溢れた生々しい本音のような「苦しさ」や「しんどさ」を歌ったのはLove&Letterのリパッケージ版までじゃないかと思っていました。
私の主観ではあるけれど、SimpleやSpace、Still Lonelyがそういう曲じゃないかと思うのです。

その後は覚悟を決めたように、生々しいしんどさは曝け出さなくなった気がしていました。
「Seventeenとして」の「CARATのため」の曲という色が濃くなったように感じます。

かっこいいとともに、心配でもありました。
全ての曲の根底に仄暗さを感じながらも、それを表に出さないのは覚悟であると同時に、曝け出せなくなってしまったんじゃないかと…

この曲ももちろん間違いなく「Seventeenとして」の「CARATのため」の曲です。
けれどこの曲で久しぶりに、等身大の生々しいしんどさを感じました。

今でもまだ、しんどいまま、何もわからないままでいます…それを打ち明けてくれたことが本当にありがたく、安心して涙が出ました。

心の中で大きくなった「しんどい」を曝け出してくれていたあの頃とはまた違う。
しんどさを飲み込み、「Seventeen」としてメッセージを届け続けてくれたこの数年を経て、私の想像など及ばないくらい沢山の闘いがあって、そのたびに沢山の壁にぶつかって…
きっと心を麻痺させた方が楽なこともあったでしょう。
これが正解と決めてがむしゃらに進む方が楽なこともあったでしょう。

그대에게 그대에게 
君に 君に
전해주고 싶은 이야기 
伝えたいはなし

それでも彼らはSeventeenとCARATへの確固たる信頼を踏まえて「今でも一歩踏み出すことすら途方もなく遠く」「毎日考えます 僕はどうしたらいいのか」と打ち明けてくれたのです。

大人になるというのは、きっとこういうことなんだな…と感じました。

そして冒頭の疑問、「渦」と「あなたへ」の文脈…

소용돌이치는 바람 속에 
渦を巻く風の中に
영원한 사랑이 있다면 
永遠の愛があるならば
그건 당신이겠죠 
それはあなたでしょう

涙が止まりませんでした。

自らを取り巻く環境の変化も、出逢いも別れも、どれだけしんどくたって無慈悲に進む時の流れも…
それら全てを「渦を巻く風」と表現してしまう。

嵐でもなく、闇でもなく、濁流でもなく…
それらを俯瞰して受け入れているかのように、どこか諦めすらあるように感じられる「風」。

けれどその中に「永遠の」愛があるとするならば…
全てのものは吹き、流れていくと受け入れたけれど、その中でも変わらないと信じられる愛があるとするならば…

それはあなたでしょう。

これほどまでに美しく、切なく、完璧な愛の言葉があるでしょうか…

そしてこれほどまでに優しい愛の言葉とともに、Seventeenさんがしんどさを打ち明けられるようになったのかと思うと、やっぱり私は有難くて嬉しくてたまらないのです。

Rock with you

네가 없다면 난 아무것도 아냐 
君がいなければ僕には何にもない
No words are enough for you 
どんな言葉でも君には足りない
노랫말로 담고 싶어 
歌詞に込めたいんだ

Attaccaのteaserの出だし、「Boy Hood」の文字がぬいぐるみと共に燃やされました。
少年時代に別れを告げる儀式のようで、彼らがどんな「大人」の像と「Power of LOVE」を見せてくれるのかワクワクしていました。

けれどこんなにも真っ直くで、「君」だけだと言う。
デビュー曲であるAdore Uから変わらず「僕」には「君」しかいないのだと。

彼らの描く「大人になる」というのは
「君がいなくても大丈夫」
と言えるようになることじゃなく、
「君がいなきゃ僕には何にもない」
とより一層覚悟を持って口にできるようになることだったのでしょうか。

本当の意味で、大人になったんだなと感じました。
「大人っぽくなる」ではなく「大人になる」。
下した決断の数だけ、たしかに言葉の重みが増して大人になってきたSeventeenさんたち。

I just want you I need you 
僕はただ君が欲しい、必要なんだ
이 밤은 짧고 넌 당연하지 않아 
この夜は短く、君は当たり前ではない

苦しいことにもいつかは終わりがくるというポジティブな表現として「明けない夜はない」と人はいうけれど、「君」と共に過ごす時間としての「夜」にも必ず終わりが来る。それがいつかはわからないけれど。
無情にも、過ぎてほしくない時間ほど一瞬で去っていくこの世界で、今隣にいる「君」は当たり前なんかじゃない。

Q.Seventeenを一言で表すと?
A.夢。夢のような人生を生きていると思うし、いい夢なので目覚めたくないです。
ーエスクプス

いつか覚めると知りながら、それでも覚めたくない夢を。いつか明けると知りながら、それでも明けてほしくない夜を。
その事実から目を逸らさずに、むしろそれすらも抱きしめて一瞬一瞬の君を刻もう。

再契約をしてまた“Seventeen”を、この夜を続ける道を選んでくれた彼らが言うから、刹那を歌っているようで、ある意味刹那的ではないように感じます。

Fall into your eyes 
君の瞳に落ちてゆく
모든 순간들이 오로지 널 향해 있어 
全ての瞬間がただ君に向かっている
나는 너 하나로 충분해 
僕は君さえいれば十分なんだ
당연한 건 하나 없어 
当たり前なんてひとつもない
나에게 너만 있어서 
僕には君だけがいるから

まさか今このタイミングでこんな姿を見せられると思っていなくて、どちらかといえば「この夜に乗り出さない?」という余裕なお誘いの歌が来ると思っていました。

全然違いました。
もう全身使わなきゃ息もできないくらいの必死さ。
息継ぎする間もなく「僕には君だけ」と繰り返す。
転調し、言葉を細かく切り、叫ぶように音程が舞い上がる…あまりにも必死で、余裕なカッコよさとはかけ離れていて…

けれどなによりもただ美しかった。

그 어디라도 
それがどこだろうと
Baby hold on Baby hold on 
어디에서도
どこにいようと
Baby hold on Baby hold on 
어디서라도 
どこであろうと

それまで囁くような、口もと3センチの決意だった言葉たちが、最後の最後で叫びに変わる。

今や世界中にファンを持つ彼ら、
この曲がいつ作られたものかはわからないけれど、もしCARATに会えない今の心境が反映されているとしたら…胸が締め付けられるような気持ちになるのです。

たとえどこであっても、どこにいても
…少しずつ言葉を変えて、何度も繰り返す。
僕がどこにいようとも、君がどこにいようとも

「Hold on」には踏みとどまる、持続する、持ち堪えるなどの意味があるようです。

であれば何度も繰り返される「Baby hold on 」は
「大切な人、どうかそこで待ってて…」
という訳になるのでしょうか。

僕がどこにいようと、君がどこにいようと
そこに行くからどうか今はそこで踏みとどまっていてほしいと…

Seventeenさんの言葉はいつも、隈なく光があたる明るい世界を想定していなくて、どこか影の部分を前提としているように感じます。
けれど影ばかりを見るわけではなく
その中で光る星を丁寧に集め、
大袈裟な慰めで傷を舐め合うのではなく
優しさの花一輪をそっと手渡してくれるから
とてもとても心地よいのです。

세상이 끝나더라도 
世界が終わったとしても
I wanna rock with you 
僕は君と踊りたい

たとえ世界が終わろうと…
「I wanna rock with you 」
君と踊りたい、君と遊びまわりたい、
君と抗いたい、君と固く繋がっていたい…
rockの捉え方はたくさんあると思います。
それら全て包括して、「Rock with you」。

たとえ世界が終わるとしても、
むしろ世界が終わるならば、
最後の瞬間までより一層切実に、
「Rock with you」

Crush

질문엔 대답하지 말아 줘 
問いかけには答えないでほしい
눈을 보고 느껴 
目を見て感じて
천만 배는 감동적이야 
千万倍も感動的なんだ

本当ににカッコいい。
カムバックショーでパフォーマンスを見た時、半狂乱(全狂乱?)になってしまいました。

むせ返るくらいの色気で…
期待通りの路線で、期待以上の「大人」を見せつけてくれたました。

君は僕の「CRUSH」…破壊、破滅、衝撃。 
サビの撃ち抜かれる振付があまりにもシンボリック。
CRUSHという発音自体も発砲音のような印象です。

이미 서로의 심장은 병렬로 나열돼 
もう互いの心臓は並列に並んでいる

銃のイメージと「並んでいる」が合わさると
並べたリンゴをピストルで撃ち抜くイメージを彷彿とさせます。
けれど並べられたのは赤いリンゴではなく2人の心臓。
引鉄をひくのはどちらでしょうか…互いの命を握り合ったような一握の緊張感が漂います。

I don't know what to do 
僕はどうすべき分からない
Tell me what I gotta do 
どうしたらいいか教えてくれ
네가 없으면 난 마음이 얼룩져 
君がいなきゃ僕は心が染みだして
녹아 없어질 거야
溶けて消えてしまうんだ

駆け引きをするのかと思いきや、君がいなきゃ溶けて消えてしまうと言う。
心を奪い合うふたりではなく、あくまで運命共同体として心臓を並べられているのでしょうか。

あんなに大人の余裕を見せつけるようなコンセプト、衣装、表情、パフォーマンスで、これほどまでに戸惑い、混乱を口にするなんてズルいです。

지금 이 달콤함은 영원히 해롭지 않아 
今この甘い蜜は永遠に蝕むことはない

君と出会って知った甘美な味は、なにかと引き換えに得るようなものじゃない。僕を害することもない。
この甘い蜜は、僕にとって永遠に甘い蜜のまま。

…たまりません。
今この一瞬だけの快楽なんじゃないか…いつかこの甘さに罰が下るのではないか…そんな思いを抱えつつも、それを振り切る覚悟を表しているような気がします。

どれだけ怯えたところで、これが蜜のままか毒になるかをを決めるのは自分自身だから。

알려줘 어떻게 하면 
教えて どうしたら
널 더 깊게 알 수 있을지 
君をもっと深く知ることができるのか
알려줘 어떻게 하면 널 더 
教えて どうしたら君をもっと


低く呟くような声で、そんな切実さを見せないでほしい。「知りたい」けれど「分からない」で終わらず、「教えてほしい」と強く強く切望する思い。
繰り返すから余計に鮮明で、胸が苦しくなります。

君は僕の「Crush」と…破滅や衝撃であると言いながら、ただそこに撃たれるままではなく君をもっと深く知りたいと。

내가 믿을 수 있는 건 
僕が信じることができるのは
지금 내 눈앞에 있는 너 
今目の前にいる君
서로를 더 끌어당겨 
互いをもっと引き寄せて

それどころか、僕は君を信じると言う。
信じることができると言う。

信じることができるということ自体も、きっと衝撃(Crush)だったのでしょう。
それまでの「僕」の常識や殻を打ち砕いてくれた「君」こそが衝撃であり破壊。

それは人生を狂わせるとか破滅的な未来に向かうと言う意味ではなくて、新しい世界を、新しい「僕」を見せてくれた救いの「Crash」だったのではないでしょうか。

PANG!

近年のパフォチの妖艶な楽曲イメージを振り切って、とびきりカワイイ、けれど新しい世界観を見せてくれました。

PANG!というタイトルの音のポップさ、気持ちが膨れて弾けちゃうようなハラハラドキドキした感じ…トラックリストが出た瞬間から、どんな曲が来るのだろうかとソワソワしていました。

지구의 온도가 올라간다 해서 
地球の温度が上がっていっても
내가 터질 일은 없을 거예요
僕が弾けることはないのでしょう
온도계는 파란색을 입어도 
温度計が青色を纏っても
내 맘이 줄어드는 일은 없을 거예요 
僕の心が降下することはないのでしょう

ニコニコしながら歌っているような上機嫌な歌い出しに大きなボールが弾むようなリズム。 
蛍光色の地球儀の上をボールが跳ね回るようなイメージが目に浮かぶ、ポップで不思議でウキウキの世界。

아 따끔해 비 (퓨퓨) 
あっ打ちつける雨 (ぴゅっぴゅっ)
도망가 화성 뒤 (슘슘)
逃げろ火星の裏 (しゅんしゅん)

前の「거예요」から「아」へうつるときの声のザラつき具合が少しヤケっぽく、その後の「ぴゅっぴゅっ」という可愛いすぎる擬音語との対比にびっくりしました。

雨は天から降るものなのに大気圏を超えて火星の裏に逃げろだなんて、目が回るくらいコロッと視点とスケール感が変わってしまう、アトラクションのような描写です。

PANG!では今まであまり聞いたことのないような声の出し方や歌い方を聞くことができて、なんだか「声」もパフォーマンスの一部になったようでした。

I'm a balloon balloon 
僕は風船 風船

風船だったのね!とここで一旦の答えをもらえました。

それまでの歌詞の意味がようやく腹落ちするというか、一人称が風船目線だからこその表現がたくさん出てきます。…にしてもなんて自由な精神を持った風船なのでしょう。気温に左右されず、雨に打たれようものなら火星の裏へシュンっと逃げてしまう…

우주를 헤매다 바로 찾아버렸다 
宇宙を彷徨い 早くも見つけてしまった

そんな風船が宇宙で唐突に巡り合った光。

물감 빛 징검다리 같은 너라도 
絵の具の輝く架橋のような君でも
내게로 1cm만 다가오면 바로 
僕に1cmでも近づいたらもう
PANG PANG PANG PANG 
오지 마 오지 마 오지 마 오지 마 
来ないで来ないで来ないで来ちゃダメ
PANG PANG PANG PANG 
오지 마 오지 마 오지 마 그냥 와 
来ないで来ないで来ないでそのまま来て

どれだけ気温が上がっで弾けることはないけれど
君が近づいたらもうPANG!と弾けてしまう…
だから来ないで、来ないでと何度も退けるけれど、最後の最後だ「ただそのまま来て」と迎え入れます。

「心に素直になれた」「受け入れた」
というよりは、近づいたら危ないと必死で距離を取ろうとしていたけれど、「とうとう抗えなくなった」と言う方が近いような気がします。

하루 종일 쉬지 않고 부푸는 풍선 같아 
一日中休まず膨らむ風船みたい
그래 넌 나를 
そう 君は僕を
부풀게 하는 사랑의 공기
膨らませる愛の空気

君を想うと僕は膨らんでゆくばかり。
僕は君という愛でいっぱいに満たされた風船。
そんな幸福感を感じられます。

自分の胸がいっぱいになって、それは比喩のはずなのになぜか自分の身体もパンッパンになったように感じる。心なしか呼吸も少し苦しくて、このままだと本当に破裂して跡形もなくなってしまいそう…

少しずつ逼迫していくように、ヘリウムガスを吸ったように、もうこれ以上無理だよ〜と言わんばかりに
「I'm a balloon I'm a balloon」から高音の裏声になってゆく。

なんておちゃめでカワイイんでしょう!

けれどハイライトメドレーやGDAのパフォーマンスの衣装は風船のようなカラフルなものではなく、白衣で研究者のようでした。
一人称・風船としての目線だけでなく、観察者のような視点も持ち合わせているということでしょうか…それがまた面白いなと思いました。

PANG!では今まで聞いたことのない声色や歌い方、初めてみる系統の表情も沢山あって、そういう意味でも「実験」的だなと感じました。
ダンスだけではない「パフォーマンス」の手段を色々と模索しているような…とにかく楽しい曲ですね🎈

매일 그대라서 행복하다 (Inperfect Love)

あまりにも温かく、柔らかく、大好きなのでウジさんのセンイルnoteでもこの曲について触れていました。

丁寧に丁寧に「I love you」を紐解いて美しい旋律に乗せたらきっと、この歌になるんだと思います。

까맣던 이 세상을 
昏いこの世界を
행복하게 비춘 햇살이 
幸福に包む陽射しが
밤 되면 별이 되어 
夜になれば星となって
내게 내려와 
僕に降り注ぐ

冒頭のフレーズだけでも「君」にどれだけ大きな感情を抱いているかが伝わってきます。
「君」はこの昏い世界を照らす光…
前提として世界が「昏い」という認識を持っていて、それでも光の美しさをその眼に映すことができる「僕」が本当に愛おしい。

情景を思い描いても、とても、とても美しいです。
昏い世界で膝を抱え、凍えていた「僕」の目の前が、一瞬にしてあたたかい光に包まれる。
陽が落ちて夜になったかと思えば、今度は星となって僕を抱いてくれる。
もう、どこに行っても大丈夫…そんな安心感。

내가 너에게 딱 맞는 
僕が君にぴったりの
날씨가 되어 주지 못해도 
天気になってあげることはできないけれど
그래도 이런 날 사랑해 주겠니 
それでもこんな僕を愛してくれるだろうか

僕にとっての君は柔らかな陽射しであり、満天の星。
けれど僕はそんな君にぴったりな天気になることはできないと言う。
…これは想像ですが、きっと「僕」も「君」にぴったりの天気なのだと思います。
たとえそれが「陽射し」や「星」のような誰が見ても輝くものじゃないとしても。
例えば陽射しの中の木陰。
例えば星を包む夜の帷。
例えば吐息を白く色付ける冬…

けれど「僕」はまだそのことに気づいていないのです。

어쩌면 아직 완벽하지 않은 사랑일지도 모르지만 
ひょっとしたらまだ完璧じゃない愛かもしれないけれど
오래된 책처럼 숨어있는 
古い本のようにひそんでいる
끝없는 이야기를 만들고파 
終わりのない物語を紡ぎたい
겉으로는 낡고 헤져버려
見た目には古びて擦り切れて
쓸모없는 날 찾아와도 
使い道もないような日が訪れても
깊은 향기로 남아 있을게 
深い香りで残っているから
완전한 사랑이 될 때까지 
完全な愛になる時まで

星の数ほどある本の中、見た目は古びて目立たなくても永く読み継がれてきた物語のように果てしなく続く物語を君と紡ぎたい。

…プロポーズでしょうか。
ただ愛を囁くにしてはあまりにも壮大で、
喩えこそ「古い本の物語」という素朴なものですがあまりにもドラマチックで、けれど浮き足立ってはいなくて。
「僕」の人生まで垣間見えるような言葉たち。

書架に並ぶ本を眺めながら
派手な挿絵やピカピカの装丁の本たちが目を引く中
ふと目を落とすとそこに在る古びて擦り切れた本
それを手に取って開いたとき
読み継がれた日々の中蓄えられた深い香りに
永遠を想った日が「僕」にはあったのでしょうか。

本一冊の中で形式上物語は完結します。
必ず。
けれどその後も鳴り響く余韻が、人々のなかで膨らんでいく世界が、その物語を終わらせない。
そこに強く胸を打たれた日が「僕」にはあったのでしょうか。

その記憶を再び「僕」のなかから引き出したのが
「君」なのでしょうか。

단 하루도 너에게 진심 아니었던 
たった一日だって君に真剣じゃなかった
날들은 없었다고
日なんてないんだと
어쩌면 아직 완벽하지 않은 
もしかしたらまだ完璧じゃない
사랑일지도 모를 테지만
愛かもしれないけれど

本当に本当に心に刺さって抜けない歌詞です。

「君にぴったりの天気になってあげることはできない」
「まだ完璧じゃない愛かもしれない」
と言っていた「僕」が、
「たった一日だって君に真剣じゃなかった日なんてない」と言い切る。

大袈裟に飾り立てる言葉としてではなく
きっとこの言葉の重さをしっかり両の肩に背負って
それでも伝えるんだと踏ん張って口にしたのだと思います。

けれどすぐ「もしかしたらまだ完璧ではない愛かもしれないけれど」と弱気になる…この不安定さがたまりません。
自信のない人があえて強い言葉を放つことの意味を…
そして「完璧ではない」と弱気になりつつも「まだ」とつける“強く在りたい”気持ちを…
その煌めきを抱えながら

매일 그대라서 행복하다
毎日君だから幸せだよ

タイトルに回帰する。
本当にストレート。捻りのない、飾りもない、でもだからこそ本当すぎるくらい「本当」の想いで一度幕をおろします。

けれどこの歌もきっと、下ろされた幕の向こうで終わりのない物語を紡いでいくのでしょう。

그리워하는 것까지 (I can't run away)

このnoteを書いている今日、私の住む街にはたくさん雪が降りました。穏やかに降り積もるというよりは吹雪いていたけれど、なんだかこの歌がぴったりでした。

미친 듯이 도망치다 
狂ったように逃げ出した
숨차서 뒤돌아봤을 때 
息を切らして振り返ると
하얗게 쌓인 기억 위로 발자욱
まっさらに積もった記憶の上に足跡

MVがないのに、MVを見たかのような鮮烈なイメージが脳裏に焼き付けられます。
ヒポチの4人によく似合う世界。

우리 흔적이 녹아내리면 
僕らの痕跡が溶けていったなら
마음이 편할까요? 
心は楽になるのでしょうか?
매일 그치지 않고 쌓여 
毎日止むことなく積もります
예고도 없이 
前触れもなく

雪景色というのは美しいだけでなく
時に恐ろしく、時に昏く、不安にさせます。
どこもかしこも真っ白に染め上げて、天と地のあわいすら曖昧にしてしまう。
そこにひとり取り残された「僕」

君がいたから降り積もったのに
君がいなくなった今もまだそれは止まないまま

もしもこれが全て溶けて消えてしまえば
僕は楽になるのでしょうか。
…そんな問いかけがシンプルなギターの音色に乗って天に消えていく。
楽になるはずがないのでしょう。

남아버린 우리 여기 
取り残された僕らここで
다 녹을 때까지만 
全て溶けてしまうまでは
내 맘대로 할 수 있게 해줘 
僕の思うままにさせてほしい
떠나기엔 너무 아름다워서
立ち去るにはあまりにも美しくて

落ちるのを躊躇うかのように舞い上がりながら散る雪。
その映像を音にしたような旋律でした。

ここでいう「僕ら」の
「僕」はそのまま一人称実在の「僕」だけれど
「君」はただ「僕」の記憶に残る「君」であって、本当の「君」はもうここにはいない。
それでも「僕ら」という言葉が口を突いて出てしまうくらい、まだ「僕」の中には「君」が息づいて消えてくれないのでしょう。

「立ち去るにはあまりにも美しくて」

この言葉がもう本当に苦しくて…
寒いというよりは痛いという方が正しいような冷たさのなか、雪以外何も見えない景色を前にこの言葉を放ったかと思うと。

함께 달려온 꽃길 
一緒に走ってきた花道
향기만 가득 남길 
香りだけが満ちて残るように
난 찬란한 빛 속 그림자 
僕は煌めく光の中の影
더욱 밝게 빛나길 
一層明るく輝くように

華やかで煌めく言葉が並ぶなか、なぜか一層強調される“虚”の深さ。

光が強ければ強いほど
影は濃く深くなる。
けれど「僕」はそれを否定的には捉えていません。

우리였기에 아름다웠고 
僕らだったから美しかった
작은 미움 하나 없는 사랑이라 
僅かな憎しみひとつない愛だから
가끔 새어 나올 슬픔도 
時折漏れ出す悲しみも
사랑이라 부를 수 있어 
愛と呼べるんだ

なんて穏やかな恋の終わりでしょうか。
素敵な恋だったのだろうなと思います。
思い出だから美しいというのもあるのでしょうが
悲しみはあっても憎しみはないと
そんな愛だと言える日々を重ねてきたのでしょう。

너를 그리워하는 것까지 
君への恋しささえも
사랑으로 아름답게 남도록 
愛として美しく残るように
쌓인 기억이 녹아서 바다가 되어도 
積もる記憶が溶けて海になっても
날 여기 두고 갈게 
僕をここに置いていくから

ここでタイトルに繋がります。
恋しさすらも…美しく残りますように。 
「君の記憶が消えるまで」と歌っていたけれど、記憶が溶けて雪景色が青い海となって、「僕」が立ち去り歩き始めたとしても“僕”は置いていくのだと言います。

その海では“僕”は“君”と2人で泳ぎ回れるのでしょうか、それとも“僕”ひとりで漂うのでしょうか。
…きっとどちらにしたって置いていくのでしょうが。

未練も、あまりに剥き出しだと未練がましくないですね。それ以上に本当にこの歌によって映し出される世界が美しすぎて…
もはや文学でしょう。

バチバチのラップじゃないけれどヒポチによく似合う、ヒポチにしか出せないの艶がある曲ですが
だからこそボカチ、パフォチのカバーも見てみたいなと思いました。

2 MINUS 1 

Rocketコンビのカムバック!
いやもうただただカッコいい…Seventeenのなかでも1番他者からの影響を受けにくい(見えにくい?)お二方。
だからこそ2人でいることに意味があると感じる不思議な空気感がたまりません。

曲調も一曲とは思えないほど目まぐるしく変化して、All English でしか出せない色を見せてくれました。

What's two minus one? 
2-1は?

さっそくタイトルに切り込みます。
おそらく「僕ら2人」-「君1人」ということなのではないでしょうか。

I can see you're doing 
Really good without me baby
君が俺なしでホント上手くやっているの、わかってるよTwo minus one 
2 - 1
I'm doing great myself 
俺だって一人で上手くやってるよ

超訳失礼します…
語順の異なる言語の訳って難しいですね、、、

なんて鮮やかな強がりなのでしょう。
君は一人で大丈夫、僕も一人で大丈夫
二人から一人になったってどうってことない
…そんなはずないのに

ロック調のサウンドと太い声と流れるような英語と…そこに乗せられた想いとのギャップが、なぜだか少しチャーミングに感じます。

'Cause I'm not lonely 
Lonely lonely lonely yeah 
Lonely lonely lonely lonely yeah 
だって俺は独りじゃないからさ

独りじゃないから大丈夫と歌っていたはずなのに
強調のためnotのあとの「Lonely」を繰り返し続けると途中から「Lonely」だけが繰り返されているように聞こえます。
強がれば強がるほど「君」のいない穴が浮き彫りになる様子が、ダイレクトに表現されていてとても面白いです。

We used to be best friends 
僕らかつては1番の理解者だった
I remember you said that 
You can be yourself when I'm around 
「僕のそばでは自分らしくいられる」と君が言っていたのを覚えてる
Guess that didn't really matter 
思えばそれも大したことじゃなかったんだろう

強がるのには強がるだけの理由があったんですね。
自分といる時だけ「君」が「君」らしくいられると思っていたのに、「僕」なしでも「君」は上手くやっているんだから。

けれどこの強がり、「僕」の祈りでもあるんだと思うのです。君はどうせ上手くやってる、だから僕はいらないし、僕も君がいなくて大丈夫…
これはあくまで第三者目線からの事実じゃなくて「僕」から見た・想像した「君」なのですから、「君は僕がいなきゃダメに決まってる」と言ったって良いと思うんです。
でも「君」は「僕」無しで上手くやってると言う。
かつては1番の理解者だったからこそ「君」は上手くやれると信じているし、できればそう在ってほしいと願っているのではないでしょうか。

I can still smell the perfume 
僕はまだ君の香りを覚えてる
You used to wear in my clothes 
君はよく僕の服を着てたね
Can't erase it no 
それを掻き消すことができないんだ

けれど「僕」はどうしたって「君」を消せない。
香りが移るくらい共にあったから。

I don't need you anymore 
僕はもう君を必要としない
Don't need you anymore 
もう君を求めちゃダメだ
I need you
君が必要だよ

ずっとずっと強がって、大丈夫だと繰り返して
震える手で「君」の背中を押して、見送って、
見えなくなるくらい遠くなった「君」の背中にようやくポツリと呟いたような「I need you」。

本音は本音すぎるから「君」に言えなかったのでしょうか。未練タラタラでスケスケの強がりかと思えば、実はとっくのとうに「君」を見送る覚悟は決めていたのかもしません。

前曲그리워하는 것까지とある意味で対称的な歌。
どちらもそれぞれに、その後の“ふたり”を美しく彩るような恋だったのだろうと思わずにいられません。

Attacca

Attaccaのビジュアルが公開された時、Fearや Flowerのようなダークコンセプト、もしくはAnyoneのような路線に尖った曲が出ると思っていました。

けれどShining Diamondも、 Adore Uも、Pretty Uも、Don't wanna cryも、パクスも、Left&Rightも…全部全部抱えて大人になった姿を見せてもらいました。

“アウフヘーベン”

高校生の時に習った言葉を思い出しました。
テーゼ(ある主張)とアンチテーゼ(対立する主張)、そのどちらも保存しながらより高い次元で統合し、新たな主張=アウフヘーベンへと至る。

何ひとつ捨てず
何ひとつ妥協せず
誰ひとり疎外せず
新たな次元に13人で足を踏み出したアウフヘーベン
それがAttaccaなのだと思います。

最高な彼らがずっと最高を更新し続けてくれていることがもう信じ難いことなのに、まだ上がれるんだということを…「俺らまだ半分も見せてないぜ(Change Up)」を体現する彼らを前にして、目に見える奇跡にただ戸惑うばかりです。

13人揃ってまたひとつギアチェンジをして、走り出してくれたSeventeen。その原動力が“Power of Love”ならば、そのなんと大きいことでしょう。

「これが愛の力だよ」とは少し違う
「愛の力で僕らここまで来たよ」という温度。
でも後者を見せるほうがよっぽど難しいんじゃないかと思いますが、彼らはやってのけてしまう。

Attacca。
出会ってから1年半、Seventeenさんに会えないまま日々が過ぎたけれど、それでもなお一緒にいたと思わせてもらえました。
絶えず奏でられる楽章のように、Seventeenさんとともにこの先の物語を紡いでいきたいし、紡いでいけると信じます。

Thanks to

안녕하세요. 세븐틴입니다.
こんにちは、Seventeenです。
아홉 번째 미니앨범이라는 것이 
9番目のミニアルバムであるということが
새삼 신기하여 묘한 기분으로
改めて不思議で妙な気持ちで
글을 써 내려가 봅니다.
筆を走らせてみています。

캐럿들과 발맞춰 걸어온 시간이 
CARATと歩調を合わせて歩んできた時間は
어느덧 6년이 훌쩍 넘고 , 
いつのまにか6年が瞬く間に過ぎていて、
앞으로도 함께 할 수 있다는 것이 
この先も一緒にいられるということが
더더욱 소중하고 감사하게 느껴지는 요즘입니다.
一層大切で有難いと感じている今日この頃です。

올 한 해 “Power of Love " 프로젝트로
この1年、“Power of Love "プロジェクトで
사랑의 힘이 얼마나 서로를 
愛の力がどれほどお互いを
끈끈하고 단단하게 만들 수 있는지 보여주려고 싶었고,
粘り強く頑丈にしてきたかお見せしたく、
캐럿들이 보내주는 사랑에 보답하고 싶었삽니다. 
CARATが送ってくださる愛に報いたかったです。
미니 9집 ‘Attacca'는 
ミニ9集「Attacca」は
단순히 사랑들 표현하는 것을 넘어
単純に愛を表現するということを超えて
저희가 품고 있는 사랑에 대한 정열적인 
僕たちが抱いている愛について情熱的な
마음을 아낌없이 담아보았습니다.
想いを惜しみなく込めてみました。

이번 앨범을 준비하는 날들 가운데 
今回のアルバムを準備する日々のなか
때로는 소용돌이 치는 하루도 있었고, 
時には渦を巻く日もあり、
때로는 사소한 행복이 가득한 하루도 있었습니다. 
時には些細な幸せで満たされる日もありました。
이러한 과정 속에서 느꼈던 마음을 가감없이, 
これらの過程の中で感じた想いを過不足なく、
솔직하게 앨범에 표현하고 싶었습니다.
正直にアルバムに表現したいと思いました。
그것이 또 사랑을 더
それがまた、愛をさらに
애틋하게 만들 거라 믿습니다.
切実なものにすると信じています。
그렇기에 캐럿들이 이번 앨범을 어떻게 느낄지 
なのでCARATが今回のアルバムをどう感じたか
너무 기대됩니다. 
とても期待しています。
이 앨범으로 2021년 , 사랑이 가득했던 해로 
このアルバムで2021年が、愛に溢れた一年として
캐럿들 기억 속에 남길 간절히 바라봅니다.
CARATの記憶の中に残るよう、切に願います。

끊이지 않고 계속 연주되는 악장처럼, 
絶えることなくずっと奏でられる楽章のように、
저희 세븐틴도 지치지 않고 노래하고, 
僕たちSeventeenも疲れることなく歌い、
끊임없이 캐럿들과 앞으로 나아가고자 합니다.
絶えずCARATと前に進んでいこうと思います。
계속해서 멈추지 않고 연주해 나갈 
ずっと止むことなく奏でていく
우리의 날을 같이 그려가고 싶습니다. 
僕たちの日々を一緒に描いていきたいです。
언제나 감사하고 사랑합니다.
いつも有難いし愛しています。

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