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Let me hear you say

Let me hear you sayの歌い出し、ソクさんの澄んだ高音が霧を貫くように響く。
ここの歌詞の意味を知った時、衝撃を受けた。

누군가가 어디선가 
誰かが どこからか
내 불행을 바라고 있는지 
僕の不幸を願っているんだろうか
요즘은 그냥 나도 나를 모르는 척하기만 
最近はただ僕も自分が分からないふりばかり

卑屈な私はこの感覚をよく知ってるつもりでいる。
けれど私はそれを言葉にしたことも、ましてや口に出したこともない。
だって私の不幸はただ私のものであって、きっと誰かが仕組んだものじゃないし、自意識過剰と言われるのが関の山だから。

口にしてはいけないと思っていたし、
そう考えてもいけないと思っていた。
その考え方は被害妄想だと批判する声は、誰に言われるでもなく、自分の脳内でこだましていた。

だから心底驚いた。
Seventeenさんが、アイドルが、世界に発信される歌で、しかもその歌い出しでこの言葉を選んだことに。
そして『誰かぼくの不幸を願っているのか「と思ってしまうくらい」』とか「思ってしまうときもある」とか、そういう予防線を一切張らずに真っ直ぐそれを歌い上げていたことに。
気を衒うわけじゃなく、むしろこのフレーズは出だしにしか使われない。その先はただひたすらに「僕には君だけが必要」とあの手この手で伝えているのだから、曲のメインテーマではないのだろう。

でもやっぱり、自分の身に起こる出来事の中で不幸にしか目を向けられなくなってしまうあの卑屈な感覚を、そしてそのどうしようもない不幸を誰かのせいにしたくなるあの感覚を知っている人でなければ、この言葉は出てこないと思う。

だからこそこの歌は、聞くたび深く深く私の心を押し込む。

そしてこれは2022CARAT LANDのメントでウジさんが言っていたことにも繋がるのだろう。

それぞれが抱えるわだかまりをどうにかしたい時、例えば「旅行に行きなさい」とか「趣味を持ってみなさい」と言われるけれど、僕は個人的に正直そんな言葉を聞くのが1番嫌でした。
そういう気持ちは本当にありがたいですが、とても呑気な言葉だと思いました。だから僕がCARATに自信を持って「皆さんのしんどさを僕が解決します」と言うことはできないけれど、反対に皆さんにお伝えしたいのは僕も皆さんと同じだということです。
「僕らがしんどいと思っている状況のなかでも、共に手をとって歩いていく」ということを、分かっていただけたらと思います。
その瞬間、互いが互いにとってかけがえのない存在だからこそ、より一層生きていく活力を得られると思います。

解決策を考えるだけでは救われないことがある。
そもそも一問一答で解決することならば、こんなにもがいてはいない。気持ちはありがたいけれど、「こうしたらいいよ」というアドバイスは、時に私の溺れている悩みを軽視しているんじゃないかとすら思ってしまうこともある。

自分を不幸だと思うことも、それを誰かのせいにしたくなることも、間違っていない。
少なくとも、僕達もそうだから。
…この曲はそんな寄り添い方をしているように感じる。

하지만 너만이 나만의 세계 
けれど君だけは僕だけの世界
그래서 그래 안아줘 세게 
だからそう抱きしめてよ強く
더 Please tell me 너의 마음 한가운데 
全部教えて 君の心の真ん中に
자리 잡아도 된다고 
居座ってもいいって
말하지 않아도 모두 읽어주는 너의 눈빛 
言わなくても全て読み取ってくれる君の眼差し
여유로이 노를 저어 
ゆったりとオールを漕いで
너의 눈에 그냥 돌아다니고파 
君の瞳にただ彷徨いたい

主題はそんな「僕」の心の拠り所である「君」へと移っていく。
最初に「僕」がどんなひとなのかを開示することで、どれだけ「君」が好きで、救いで、大切なのかが一層鮮明になる。

「君だけは僕だけの世界」という一見依存のような想いの寄せ方も、どうしてか地に足がついているように感じる。それはきっと、被害妄想や依存だと揶揄する人がいるであろうことを分かったうえで、それでも歌にするのだと覚悟を決めているから。

매일이 오는 기적 같은 
毎日が訪れる奇跡のような
너의 위로가 나의 하루가 돼 
君のぬくもりが僕の一日になる
네가 내 곁에서 잠드는 지금 
君が僕の隣で眠る今
Oh oh oh oh paradise 
あぁ、楽園のよう
너만을 바라 바라 Yeh 내 마음 너만 항해해 
君だけを強く望んで 僕の心は君だけに漕ぎ出す
다른 사람 말고 오직 너이기에 
他の誰の言葉でもなく ただ君だから
Let me hear you say it babe 
君の声で聞かせてよ

「毎日」を、毎日奇跡のようだと認識し続ける誠実さ。愛してると言われる時でも、抱きしめ合う時でもなく、「君が僕の隣で眠る今」を掬い取り、楽園だと言う。

隣に君がいること、心を許して眠ってくれること…
隣で寝息をたてる君を見つめてその奇跡を噛み締める僕の心情を想うと、愛おしくて胸が苦しくなる。

自分の不幸を嘆く「僕」が、他の誰でもなく君だけを強く求めている。君という水面に心を預けて漕ぎ出す意志を持つ。なんだか2人の馴れ初めとか、僕が君のどんなところに惹かれたのかとか、野暮だけれど知りたくなってしまう。

Baby chocolat 보다 더 달콤 달콤해 
ねえチョコレートよりもっと甘い甘い
나의 마음의 Key 열어봐 열어 열어 Hoo 
君の心の鍵 開けてみて ほらさあ
오직 너만이 너의 목소리 That's my need 
ただ君だけが 君の声が必要だよ
Let me hear you say hear you say 
君の声を聞かせて聞かせて
Let me hear you say 
君の声を聞かせて

サビの表現がとてもかわいい。
心の鍵を開けて、君の声を聞かせてと強く君に求めているけれど、きっとこの「僕」がこんなに欲を見せるのは君のことだけなんだろうな…
そしてそんな「僕」の心の鍵を開けたのは他でもない「君」だったんだろうな…

君が、君の声で言ってくれる言葉だから意味がある。
君が君であることに意味がある。
君の声だから僕の心にまっすぐ届いた…
そんな「君」。

Woo 난 뭐든지 할 수 있어 
僕はなんだってできる
너를 위해서 Babe babe 
君のためならば 
그래 힘이 들 때면 더욱더 
そう 疲れた時には一層
네가 필요해 더욱더 
君が必要だよもっと

個人的にこの部分の旋律がとても刺さる。
ソクさんの迫力ある歌声とウジさんの繊細な歌声、どちらもそれぞれの切実さがあって、言葉そのもの持つ意味以上に激しく私の心を揺らす。

この「なんだってできる」にはもしかしたら「生きること」も含まれているのかもしれない。
不幸にばかり焦点があたる、そんな自分から目を逸らしてしまう日々…けれど君のためならば今日を生きていくし、辛かろうと明日も生きようと思う。
それ以上のどんなことだってやろうと思う。
君のためならば。

自分のために頑張るよりも、誰かのために頑張る方が力を出せることがある。
依存だと言われようと、誰かのことを想う時に覚悟が決まることがある。
Seventeenさん、私にとってはあなた達がそうだ。

너와는 다른 남들의 시선 
君とは違う人々の視線
그 눈을 피해 널 향해있어 
その目を避けて君へ漕ぎ出す
마주친 순간 날 보는 너의 시선은 
出逢った瞬間僕を見た君の視線は
말로는 형용할 수 없는 
言葉では表せない
때론 별 때론 달처럼 날 빛내줘 
ときに星、ときに月のように僕を照らしてよ
24시 밝은 밤 날 지지 않게 해줘 
24時 明るい夜 僕に負けない強さを

私は街を歩くとき、顔を上げられない。
人の視線と自分の視線がかち合うのが怖いから、いつも地面を見て歩いている。
この「僕」がSeventeenとしての彼らのことならば、そんな私とは比べ物にならないほど多くの視線に晒されてきたはずだ。それでも視線を避けたいと思う感覚があることに少し安心する自分がいる。一方で、そんなこと思わないくらいに慣れてしまった方が傷つかなくて済むんじゃないかと要らぬ心配をしてしまう自分もいる。

でも僕には君がいる。
多くの視線の中、君の2つの瞳だけが忘れられないほど輝いていた。キラキラと瞬く星のように、夜道を照らす月のように。

「僕に負けない強さをください」
これは何か特別なことをしてほしいということじゃなくて、きっと「そのままの君でいて」そして「僕のそばにいてよ」と言うことじゃないかと思う。

きっとそれさえあれば、「僕」は負けないでいられる。

내 슬픔마저 안아줄 You 
僕の悲しみさえも抱きしめてくれる君
내 기쁨을 주고 싶어 
僕の喜びをあげたい

ここでようやく「君」がどんな人か少し垣間見える。
僕の悲しみさえも抱きしめてくれるひと。
僕が大切にできなかった“僕”すらもまるごと愛おしいと思わせてくれるひと。

自分の喜びをあげたいというのは献身のようでいて、もしかしたらエゴなのかもしれない。
けれど「僕」の言う「喜びをあげたい」はもう少し前向きなものに感じる。
悲しみすらも抱きしめてくれる君に出逢えて、手に持っている喜びが増えたとともに、喜びばかりを必死に抱え込んでいる必要がなくなったんじゃないだろうか。

喜びを手放し、その手で君を抱きしめる。
僕の悲しみを抱きしめてくれる君を抱きしめる時
僕ははじめて、自分の悲しみを抱きしめることができているのかもしれない。


考えすぎだろうか、深読みしすぎだろうか、
そんな意図はないかもしれない。
あったとして、ひとの紡ぎ上げた言葉を軽率に借りるのは失礼かもしれない。
それでも…

私にとっては、あなた達がそんな「君」だ。

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