<作品03>貴石研磨職人 依田和夫の手
よだ・かずお 職業:貴石の研磨職人
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「この仕事をやる前は女の子のような手だったんだよ。」
と言って、こちらに手をかざしながら笑う。爪の間に仕事の汚れが染み込んではいるが、確かにその指は、男性にしては細く華奢(きゃしゃ)である。
「結婚した時、指輪が9号でね。奥さんは13号だったんだけんど、巫女さんが間違って、私の指輪を奥さんに渡しちゃったわけ。入らんつうわけだけど、緊張してるもんだから違うって言えんでね。」
甲州訛りを言葉の端に覗かせながらそう