構図を考える1
普段の生活でよく目にする風景でも、カメラの切り取り方次第でとても印象的な風景になります。それは四角で囲まれたことによって生まれる構図に秘密があります。でも、「構図」って一体なんなのでしょうか?ちょっと考えてみます。
アリスの正面向きの写真、背景はありません。
16対9の枠(フレーム)で切り取ってみると…
横長の四角で囲むことで、見る人にアリスの存在を見て欲しいというメッセージ性が生まれます。これを見て、左右の空白に視線が行くことはありません。このようにフレーム(画面)の中で絶対的に見てしまう物体をここでは「映像の主題」を呼ぶことにします。主題がフレームの中心部にある構図は非常に安定した構図を生み出します。
次にアリスを正面向いたままフレームの左位置に配置してみるとどうなるでしょうか?
右側に空いた余白、空間が生まれました。何もない背景だと、何か置きたくなります。構図としては少し不安定な感じがします。明確な主題がある時、視線はその主題を無意識のうちにセンターに持ってくるからです。特に奥行き感がない背景では、その不安定さが強調されます。
右側に配置するとどう感じるのでしょうか?
空白とアリスの印象はどうでしょうか?
人間の特に文字を左から右に書く文化圏では、左側から右側へ視線が動くという特徴があります。右側に空白があると主題の印象が強くなります。逆に左側に空白がある構図では空白の印象が強くなります。この左側空白をうまく利用した例があります。空白に文字を配置して比較してみます。
アリスの名刺を作るとしたら、名前は左右どちら側に配置するのが良いでしょうか?
「アリス」という文字が印象的に残る構図は、文字を左側に配置した場合と一般的には考えられています。逆にトイプードルの形状そのものを訴求したいなら、文字は右側に配置します。一般的に横長のフレームにおいて、構図の主題になりやすのは左側に配置されたものになります。
コマーシャルでは、どう配置しているでしょうか?
市販薬は商品名と箱のデザインを主題としていることが多いです。
こちらは左側に商品と文字、右側に人物を配置した構図です。
こちらのインスタントラーメンのコマーシャルでも、商品パッケージを左側、右側に商品キャラクターの配置です。
全てのコマーシャルがこの構図ではありませんが、商品パッケージとそれを勧める人物の構図では、左側に商品を置く構図が多いのではないでしょか。特に多くの商品が棚に陳列される商品では、いかにパッケージを覚えてもらうかが重要になるのでこの構図が訴求効果が高いのではないでしょうか。
逆に左側に人物を配置する構図は、その人物がとても人気である場合が多く、「◯◯さんが勧める商品」としての印象が強く伝わることになります。ですから、店舗においても◯◯さんのポスターや◯◯さんの写真をデザインしたパッケージを使用することで商品を手にしてもらう戦略になるようです。
ところで、構図における空白には引力があります。
アリスをフレームの中心部分ではなく、下部に配置してみます。どんな印象を受けるでしょうか?アリスが下の線からひょっこり顔を出したように見えてきます。頭の上の空間があることで主題が上に引っ張られそうに見えます。ここで需要なのがアリスがトイプードルだと見ている人が認識していることです。この物体にはまだ下半分が隠れているという無意識が必然となります。不安定な構図は、安定方向へ向かう引力が生まれます。
今にも下に落ちそうな感じがする構図です。「トイプードルは飛ばない」という無意識が下方向への引力となります。この空白の引力が構図が持つ力学のひとつになります。
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