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未来へ踏み出すシーン アストリッドとラファエル 文書係の事件録

フランスのドラマ「アストリッドとラファエル 文書係の事件簿」は地上波ではNHK総合テレビで日本語吹き替え版が放送され、パリ警視庁の刑事ラファエル・コストと犯罪資料局で過去事件の資料を管理する文書係アストリッド・ニールセンの二人が事件を解決してく物語です。
アストリッドは自閉スペクトラム症で、彼女が働く犯罪資料局の長官アラン・ガイヤールが父を亡くしたアストリッドの後見人を務めています。
今回、紹介するのはシーズン1の第10話、最終話のラストシーンです。後見人であるガイヤールが事件に巻き込まれ殺され、アストリッドがその後の後見について裁判所から呼び出されたシーンです。
フランスで制作されたドラマですので、日本のドラマとは少々異なる構図の仕掛けとカット割から表現される演出に興味を持ちます。

カット01

カット01は裁判所へ向かう前、アストリッドが文書係としてこよなく愛している犯罪資料局の資料室です。アストリッドは出かける前に資料室をいつも通りに片付けます。カメラはアストリッドのアップからゆっくりバックしながらズームアウトしていきます。遠近法の構図で消失点は画面中央、そこに主人公であるアストリッドを配置して、奥行き感を強く表現しています。室内には音楽が流れています。

カット02

このカット02から裁判所でのシーンになります。
誰かの手です。手を組んでいます。

カット03

アストリッドの視線はぐりぐり回りながら、前のカットの組まれた手を見ています。

カット04

書類を置いたてが組まれます。これも誰かの手です。カット02とは画角が少々異なるので違う人の手です。

カット05

カット05ではアスタリッドの視線は中央から右方向、画面では左方向に動きます。

カット06

アスタリッドから見て右方向の画角の手、見た目に女性の手だとわかります。しかもこの手も組んでいます。

カット07

このカット07で初めてセリフが入ります。その言葉に反応するようにアスタリッドは視線を上げます。
裁判官「私は後見制度を担当する…」

カット08

カメラは一気に引き、このカット08の舞台設定が見えます。左側3人がアスタリッドと対峙する構図です。カット02、04、06は裁判官の手だとこのカットで明らかになります。その手を見るアスタリッドの表情から緊張感が演出されています。
日本の場合、このような設定のシーンは左右逆の場合が多いのですが、ここでは裁判官という権威を持った人物を左側に配置しています。アスタリッドは右側からこの部屋に入り座ったという配置です。この左右の配置はこのシーンの最後のカットへの伏線となります。
興味深いのは、カット08では右側に配置されているアスタリッドが、アップの構図の時は左側に配置される点です。つまり、イマジナリーラインを超越したカット割になっています。主人公は明確なキャラクターなので左右逆転した配置になっても視聴者は惑うことはありません。それを分かった上で、対峙の構図を強烈に印象付けるためのカット割だと思います。
中央の裁判官「裁判官です。どういう意味だか分かりますか?」

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