湊斗が紬に別れを言い出すシーン
silent 第5話「無意識に名前出ちゃうくらいほんとに好き」
脚本:生方美久 演出:風間太樹 プロデュース:村瀬健
ドラマ「silent(サイレント)」(全11話)は、 2022年10月6日からフジテレビ系列で放送されました。川口春奈さんが演じるCDショップ店員、青羽紬(あおば つむぎ)が高校時代に交際していたSnow Manの目黒蓮さん演じる佐倉想(さくら そう)と8年ぶり再会するが、想は病気で難聴となり紬の声を聞くことができなかった。紬は想の親友出会った高校の同級生、鈴鹿央士さん演じる戸川湊斗(とがわ みなと)と交際していた。第5話「無意識に名前出ちゃうくらいほんとに好き」では優しい性格の湊斗は紬と想の再会に複雑な思いを抱き、自ら紬に別れを告げる。
このシーンをお勧めする理由は、二人の演技の意味合いを明確な構図で並走している点です。このセリフの時は話す人中心の構図、このセリフの時は聞く表情の構図、この動作と心理状況を表すのはこの構図と二人の会話シーンとして、素晴らしいアングル・構図で非常に印象的なシーンとなっています。また、5分間のシーンで22カット、最近のドラマと比較してカットが少なく、カット尺の長短のリズム感はドラマとの一体感を醸し出しています。
フットサル場(夜)
カット01 俯瞰ロング
湊斗と紬、二人でビブスを干している他に誰もいない
二人の高校の恩師でフットサル経営者の古河良彦(山崎樹範さん)、建物のドアから話しかける
古河「ありがとう、助かるわ」
湊斗「いえ、すいません安くしてもらって」
古河「○もありがとうね遅くならないうちに帰ってね」と、ドアを閉めて去る
紬「はい」
紬「古河先生、全然年取らないね いくつ?」
湊斗「俺らが高3の時多分38とかだから46」
紬「えー見えない」
最初のカットはこのシーンの舞台設定。誰がどういう場所でどういうシチュエーションなのか、この最初のカットで見る人に説明しています。フットサル場の経営者古河の一言で、フットサルが終わった後で湊斗と紬以外周りに誰もいないことがわかります。全22カットあるこのシーンで唯一2人を正面から捉えています。
カット02 2KSルーズめ
紬「可愛い」
湊斗「高三の時」
紬「高3?」
湊斗「ん、高三ん時アルバム全部一気に想に借りてさスピッツの」
紬「あっ私も」
湊斗「でしょ、知ってる知ってる」
紬「ん?」
湊斗「メモ、メモ?手紙?なんかパンダの、これくらいの」と紬の方に向いて手で小さくカードを説明
「歌詞カードの間に挟んで」と紬も向き合う
湊斗「それ」
「え?なんで?」
湊斗「貸してって言ったっとき、今他のやつに貸してるからちょっと待ってって、言われて」
「あ、ほかのやつ」と自分を指差す紬
湊斗「ほかのやつ」湊斗も紬を指差す
湊斗「で、その他のやつから返ってきたCD俺がそのまま借りたみたいで」
「なるほど」
湊斗「歌詞カードにペラペラしてたら紬の字が書かれた紬が持ってそうなメモ用紙出てきてパンダがゴロゴロしてるやつ」
「持ってた持ってたパンダがゴロゴロしてるやつ、うわー」
「えっ、読んだの?」
湊斗「佐倉くんとは音楽の趣味が合うから…」
「やめて」と手に持っていたビブスを振り回す
湊斗「すっごい紬の声で、再生された」
「え、それ戻した?歌詞カード」
湊斗「ううん、捨てた。ごめん。俺実はそういうところある。人が人に書いた手紙、勝手にごめん」
「ううん、よかったそんなキモい手紙見られなくてよかった」
湊斗「その頃もう好きだったんだよね紬のこと」
二人の後ろ姿、膝から上のニーショット、しかも頭の上があき気味のルーズな構図。二人の表情はお互いを見る時だけちらっと見えるのみ。カメラはゆっくり横にドリーする程度でこのセリフの量でワンカット、長さは1分57秒くらいです。
カット03 紬BS 下手
湊斗「想より前から、戸川くん戸川くんってよく話してくれてたけど」
紬、湊斗の方に振り向く
湊斗「話の中身、全部想のことだし」
紬「ねえ」
画面左側(下手)に配置し、画面右側(上手)背中側に空間を開けた不安定な構図。実際のカメラポジションなら右側に少しだけ湊斗の姿が被せても良さそうですがこのカットではあえて紬だけのカット、これから起きる出来事を予感した紬の孤独感が伝わってきます。湊斗のセリフで紬が振り向くとさらに何もない右側の空間が不安定となり空虚な感情を読みとれます。前のカットがルーズだっただけにこのカットへの切り替わりは見る人に強く印象に残ります。
カット04 湊斗WS 上手
湊斗、紬の話を遮るように「想の話じゃないとしても何組のなんとかちゃんが十川くんのこと好きらしいよとか、いやいらないしその情報、俺が好きなのは2組の紬ちゃんだし」
前のカット04よりも引いた構図。湊斗の位置は3分の1よりも外側の上手。この位置の構図は上手を見ながらもバランスが悪く不安定な心情を表現しています。さらカット06を印象つけるため距離を離してあります。
カット05 紬BS 湊斗なめ
紬「その頃の話はいいじゃん、今のことちゃんと話そ、今のこと、というか、今後のこと」と湊斗に近づく
カット03では上手は空いていましたが、紬が湊斗に近づくことでこの構図になります。二人の今後のことを話そうと言いながら近づくことで紬は「別れたくない」という思いを動作で表現しています。
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