役所の日本語を、やさしい日本語にすること
私は「伝えるウェブ」というサービスに関わり、さまざまなウェブサイトの「やさしい日本語化」に関わっております。特に自治体様が多いので、今回はそのことについて書きます。
ルビ振りや分かち書きを行うのはもちろんなのですが、やはり頭をひねるのは「言い換え」についてです。
言い換え例
まずイメージしていただくために、ごく一部の言い換え例を挙げます。
こんな具合です。
役所のことばの言い換えに関しては、先達がいらっしゃいます。現場で取り組んでおられる皆さまがそうです。多くの「やさしい日本語」の案内や資料が作られており、検討材料として大いに参考にしております。
ウェブサイト「やさしい日本語じしょ」
こうした各地の職員の方の努力を「やさしい日本語じしょ」というサイトでまとめて見ることもできます。多くの用例をまとめてくださっております。多文化共生事業に関わる方が見たらかなり参考になるのではないでしょうか。
潜在的であっても、誰かの助けになっていたら嬉しい。そんな思いで言い換えなどを考えるのは、なかなか張り合いのある仕事です。
ただ、役所の言い換えを考えていて、常々思うことがあります。
よく思うこと「初めからこれでいいじゃん」
「開庁時間」とかを、はじめから「開いている時間」って書いてくれたらいいのでは?という問いです。たとえば以下画像のような文言(適当です)。
「市民を相手にした情報提供がはじめから下のような文体であったとして、はたして何がいけないのだろうか?」という問いが、言い換え作業をしていると、頭をよぎることがあります。
(「文体」および「言葉選び」のみに限った話です。画像にはルビも入れましたが、これは作業が超めんどくさいことがあるので…)
ただ一方で、私も公務員の端くれだったので、「隙のない文言」を書きたい気持ちはなんとなく分かるような気がします。
組織の中の事情?
何というか、隙のないある程度のレベルの文言の方が、組織の中では評価が高いことをうすうす感じます。やさしい日本語どころか、誤解のないような簡素な言葉を書類に用いることは、よほど管理職の物分かりがよくないと、起案やら決裁で余計なツッコミが入るのではないか…。中には文言を「役所っぽい言い回し」に変えることに熱心な先輩もいるでしょう。
そこで、何たって無難なのは前例の使い回しでしょう。過去一度それで突破?してるわけですから、「前例を参考にしました」というのは「正しい」。
むしろ「改善を」と言って前例と違うことをすると、以前の担当者の文言・仕事にケチをつけていると思われて、かえって同僚・先輩・上司からの心証が悪くなる…そんなリスクを負うこともあるかもしれません。
「PDCA」は「Please,Dont Change Anything(頼むから、何も変えてくれるな)」の略とはなるほどよく言ったものだ…。まあ、そんなような出来事を若輩なりに経験しておりまして、「誰にも悪気があるわけではないのに、文書の可読性を上げられない・上げる仕組みがない」事態が、それなりに想像できてしまいます。
ただやはり、日本語母語話者(ネイティブ)のレベルは高いです。自治体職員の方々であればなおさら高度。これが初学者に対する読みにくさを招いてしまうこともあるかもしれません。
やさしい日本語の前にある障害を色々考えると、「1.日本語の難しさの壁」と「2.やさしい日本語を、日本語母語話者が使う壁」以外に、何とも面倒な壁があるような気がしてしまいました(杞憂かもしれませんが)。
たとえばウェブサイトを低難度の単語で書いたとして、市民はどう思うか?それでクレームなど飛んでくるものでしょうか?少し研究とかしてみたい気がします。
終わりに
ただ、一番は「2.やさしい日本語を、日本語母語話者が使う壁」なんだと思っています。ここまで自分の文章を読み返しても、まるでやさしくないことは本当に許してほしいのですが、なんにも考えないで書くの楽なんだよなあ…。
まとまらなくなってきたので、宣伝して終わります。
1.「やさしい日本語を、日本語母語話者が使う壁」について。各地で日本人向けの「やさしい日本語」勉強会は増えてます。やさにちウォッチというサイトで取り上げているので、ご覧ください。
2.弊社「伝えるウェブ」はエディタでも自動言い換えが利用できるので、手作業のやさしい日本語の記事作成が楽です。
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