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セコンドとプロレスをハシゴする日曜日。今成夢人の存在の大きさを感じたの巻

盛り沢山な日曜日。

昼間はパンクラスのタイトルマッチに挑戦する中島太一さんのセコンドでサポートに入ってきました。技術戦略的なサポートではなく精神的な安心感というか、魔除的に頼まれたところはあって、技術戦略的なサポートは名参謀八隅孝平さんにお任せして、私は低めにまとめた丁寧なピッチングを心掛けておりました。

中島太一さんは彼がプロデビューする前に練習に参加してくれたことがあります。けちょんけちょんにした挙句に「やめたほうがいい」と伝えて、しょぼくれて帰って行ったのを覚えているので、たくさん苦労してデビューから10年かけて王座挑戦する彼の頼みであれば応えたいと思いセコンドを快諾しました。

彼に伝えた「やめたほうがいい」は冷たい言葉なわけではありません。華やかに見える職業「格闘技選手」は地を這うような仕事です。格闘技選手として生きるのは割に合わない生き方だし、始めなくても生きていけるのであれば始めないほうがいいし、それでもどうしても格闘技がなければ生きていけない人間が格闘技選手として生きていくのだと僕は思っています。格闘技選手はなりたくてなるのではなく、格闘技選手にならなければ生きていけない人間が仕方がなくなるものだと僕は思っています。

試合前のプレハブの控え室で格闘技は割に合わねえ仕事だなと話します。それでも好きだからやっていて、これがなければ生きていけないからやっているのだけれども、割に合わねえ仕事だよなと話します。それでも好きだからやっていて、好きのために失ったものがたくさんあるからこそ、勝ちたいねえと話していました。そんな話をする中島さんは10年前のデビューを前にした顔ではなく、何か悟った顔をしていて、どんな結果になろうと受け容れいれる取り組みをしてきたのだなと安心します。

職業として見た格闘技選手。僕は職業ではなく生き方の一つだと思っているのですが、格闘技選手を職業として考えるとびっくりするほど割に合わない仕事です。国内のそれなりの団体の王者で数十万円のファイトマネー。それを年に3試合したところでたかが知れていて純粋にファイトマネーで成り立つ選手は一握りどころか、ひとつまみなのが現状です。格闘技に限らず芸事で生きていくのは簡単なことではないのです。

それでもやるのは格闘技がなければ生きていけないからであって、社会不適合者の集まりであって、セーフティネットのようなものだと僕は思っています。格闘技がなくて生きていけるのでそれに越したことはないと思うし、だからこそ格闘技選手が凄いとも偉いとも思えないでいて、申し訳ない生き方を胸を張ってするしかないのだと思ってやっています。

中島さんは無事に勝利して王座戴冠。
おめでとう。10年前に彼に「やめたほうがいい」と伝えたことがずっと引っかかっていたのだけど、王者になって厚みのある人間となってたくさんの仲間と妻と娘に囲まれているのを見てホッとしています。少なくとも今は「やってよかった」と思えているであろうことに何だかとっても安らぎました。格闘技の会場で安らぐのもおかしく聞こえるのかも知れないけど、何だかとっても安らぐのです。ケージが暖さを感じています。このまま時間が止まっていればいいのに。妻と娘をケージにあげて記念撮影をする姿を見て、幸せの条件をしっかりと手にしていて富豪を感じて次の現場に向かいます。

夕方からは新宿フェイスでDDTプロレスに参戦します。
エクストリーム王座の防衛戦を今成ファンタスティック夢人選手と闘います。練馬から新木場まで、新木場から新宿までの自転車移動。傍目には狂気の沙汰のように思えるようなのだが、僕からしたら通常運行で極めて合理的な判断でそうしています。感染症対策、有酸素運動、時間短縮といいことしかないと思うのだけれど、驚かれることが多くて逆に驚きます。合理性の追求は狂気に行き着くのはわからなくもないです。

隠微ではなく淫靡です。虚構を巨根に間違えられたり、インディーを淫靡に間違えられたりと滑舌問題は常に横たわる深刻な問題ではあるがこれはただの間違いである。


今成ファンタスティック夢人戦はここ最近楽しみにしていた試合で、どんな試合になるのか頭を巡らせて考えていました。試合の流れは互いに引き出しがある分だけ様々な流れが考えられて、騙し合うような試合になる可能性もあるし、プロレスらしい試合になる可能性もあるし、淫靡な試合になる可能性もあって、腕が問われているからこそ、試合が近くなればなる程どう攻めようか悩む試合でした。

格闘技でもプロレスでも相手を研究します。
僕の場合は格闘技以上にプロレスの方が相手を研究します。それは格闘技は自分のエゴを貫き通せばいいのに対して、プロレスは相手の技を引き出し受けていくから研究が必須です。研究に対してもプロレスを知ることで格闘技に役立つし、格闘技を知ることでプロレスに役立つと身をもって感じています。それでも相手のあることで考えても仕方がないなと思って出たとこ勝負にします。

格闘技が競技を通じて存在を賭ける選手もいるのに対して、プロレスは格闘技の存在を賭ける部分を抜き出したようなものです。試合中に今成さんから意地とか自負とか自信とかの類のものが、エルボーの重さと共に伝わってきました。ファイターとしてもレスラーとしても平均点を超えるようなことはできないからこそ、いろんなことをやって、何かで引っかかりを作って、なんとか超えてきたのは僕も今成さんも同じで、ただそれは生き残るためであって、そうしないとやっていけなくて、ときにそれを冷たく見られたり、バカにされて悔しい思いをしてきたのだけれども、能力総動員で非合理で非効率的な割に合わないことをやってきたからこその今の存在があります。

今成夢人は強かった。強い。曖昧な表現だけれど強かった。
存在の強さ、大きさが体の芯にまで伝わってきました。勝ち負けの話ではなく、次に会うときは互いの存在をまた強く大きく厚くするために目の前にあることをコツコツとやっていこうと試合後の控え室に向かう階段で誓いました。楽しくて何か先に繋がる気がする試合ができて感謝しています。ありがつございました。

青木はプロレス後も次の用事に続きます。。。

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