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鬼木貴則さんの訃報 文句を言おうと思ったのに良い思い出しか出てこない 

鬼木貴典さんの訃報が鬼木貴典さん本人のラインから届きました。

鬼木貴典さんのアカウントからの通知に嫌な予感がしてはいたのですが、その予感は的中してしまいました。バカ野郎!死んでんじゃねえよ!最後まで鬼木貴典を全うしろよ!と思いながらも、鬼木さんとの想い出が頭に思い浮かんで涙が出てきました。迷惑も面倒もかけられたのだけど、中身は良い奴で世話になったのも事実だから、「ありがとう」の言葉が自然と出てきました。死ぬと揶揄いもできなければ文句も言えねえのはズルいです。死ぬにも振り返るにも鬼木貴典さんは51歳でまだ早い。仕方がないとは言ってもまだ早い。

鬼木貴典さんは一見人当たりが良いのですが、昔からの格闘技界の住人らしく癖のある人で、揉めたことのある人は数知れず、トラブルメーカーの一面も持っていましたが、面倒見が良くて仲間内には優しかったりするので息長く格闘技界に生息している人でした。僕は会場で会えば話すけど、仕事は一緒にしないスタンスをとっていたので、トラブルもなく会場や近所で会う(偶然近所に住んでいた)と仲良く話す関係性でした。癖はあるけど、悪人にはなりきれず、とにかく憎めない人でした。今成正和さんは数えきれないくらい揉めて離れて、リアルトムとジェリーを繰り返していました。

僕と鬼木貴典さんの関係性は僕が早稲田大学に通って格闘技をやっている頃まで遡ります。今成正和さんの『TEAM Roken』のマネージャー的な仕事を鬼木貴典さんがやっていた関係で僕の格闘技デビューは『TEAM Roken』で鬼木貴典さんがマネージャー的な役割でデビューしました。鬼木貴典さんが試合をする予定だった「DEEP ウェルター級トーナメント」で、鬼木貴典さんがウェルター級に落とすと言ったにも関わらず、途中で投げ出して僕にチャンスが回ってきたのが僕の池本誠知戦の出世試合で、まさに「鬼木貴典さんのおかげ」でもあります。

今となっての後悔はDEEPジム時代の2010年前後に夜中に酒を飲んで帰ってきて、コンビニで菓子を買い込んで食えるだけ食って朝まで寝ていた鬼木貴典さんを揶揄っていましたが、あそこで暴飲暴食をやめさせていれば病気にならなかったのかなと悔いました。とにかく鬼木貴典さんはよく食べて、ダイエットを始めてサプリメントを買い込んで断念して、それを僕にくれました。暴飲暴食をせずにダイエットをして、あのサプリメントを鬼木貴典さんが飲んでいれば病気にならなかったかもしれないです。悔しい。

学生時代でカネがないときにはメシを食わせてもらったし、鬼木貴典さんがやっていた接骨院でアルバイトさせてもらったり、力がないときに世話になったのも事実です。練習の約束をブッチした鬼木貴典さんが夜中のアンプラグド国分寺で和知正仁さんの練習に付き合わされて、バックスピンキックで夜中の2時半にノックアウトされた鬼木貴典さんを僕が介抱したりと濃い時間を一緒に過ごしました。思い出を書こうとすると書ききれないくらいに出てくるほどです。そういえばONEジャカルタ大会でマラットガフロフ戦で勝ったけれど、身体がパンパンの僕を控え室でほぐしてくれたのを思い出して、また涙が出てきました。死ぬと悪い話ではなく良い思い出を思い出すのはなんだろう。生きてたら責めれるのに死んじまったら責めれない。やっぱり鬼木はズルくて、最後は良い奴で死んでいくんだ。

鬼木貴典さんが体調を崩しているという話は4月初めに聞いていて、心配になってLINEのやり取りはしていたのですが、その1ヶ月後には余命宣告を公表して、ブレイキングダウンの溝口勇児さんと朝倉海さんがクラウドファンディングで4500万円を集めていました。鬼木貴典さんを知る身としては鬼木貴典さんの真骨頂だとも思ったし、病状が厳しいのはわかるけど鬼木貴典さんのことだから「嘘でした!」とやったりするんじゃないかと思って、淡い期待を持ってしまったのもまた事実です。いや、それは違うかもしれない。クラウドファンディングで劇場コンテンツ化することによって現実感がなくなっただけなのかもしれないです。カネは集まって素晴らしいかもしれんけど、劇場化する良し悪しはあるし僕は現実味が軽くなることを嫌います。僕は人の生き死にをぼやかしてはいけないと思っています。

鬼木貴典さんは最後まで鬼木貴典さんでいてくださいよ。4500万集めて逃げちゃったりして、僕たちにとんでもねえ奴だって言わせてくださいよ。僕はまだ鬼木貴典さんが亡くなったのを受け容れられません。死んだら何も言えないじゃないですか。ズルいですよ。悲しいですよ。寂しいですよ。時間というのは生まれてから死ぬまでの時間です。生きることが全てで死ねば終わりです。残された我々は命が尽きるまで懸命に生きていこうと思います。鬼木貴典さん最後までよく頑張ったな。お疲れ様でした。そしてたくさん世話になりました。ありがとう。

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