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AN的読書総決算2022 Vol.4 【小説部門】

2022年に入って約800冊の本(Kindle約700冊、紙書籍約100冊)を読んできた私、ANが選ぶ各ジャンルの特に良かった本を複数回に分けてご紹介していきます。

第4回目は、【小説部門】です。

【小説部門】

1.芥川龍之介『蜜柑』

 この『蜜柑』や『トロッコ』、『蜘蛛の糸』など、芥川龍之介さんの作品の情景描写には、私はいつも心を鷲掴みにされてしまいます。
 『心躍らすばかり暖かな日の色に染まっている蜜柑。』たったこの1センテンスから、蜜柑を照らしている太陽もまた、冬の日暮れ時にはまるで蜜柑のような色鮮やかさを持っていること、そしてその暖かな日の光は、冷たく乾いた空気の中に香る蜜柑の甘酸っぱい香りのように人の心に広がって、染み渡っていくさまが浮かんできます。
 『鬱々とした気持ちに染み渡っていく、透き通るような清涼感と暖かさ。』この作品では、文字からそれが広がっていくのが伝わってきます。改めて、文字、そして言葉に宿るエネルギーというものを感じますね。
 私たちは、生きていく中でどれほどの言葉を紡いでいくのでしょうか?私も、言葉のみで相手の想像力を掻き立てるような、そんな言葉を紡げるような人間になりたいと、改めて感じる作品です。

2.アミーチス『母をたずねて三千里』

 大人になって読んでみると、また新たな解釈ができる作品の筆頭だと私の中では思っている作品です。私の超解釈によると、この本はある意味『引き寄せの法則』の物語なのだろうと思っています。
 それは、この作中のマルコの言葉には母に『会いたい』『会えますように』という願望口調の言葉は一切出てこず、ただひたすらに、『母に会う』という目的の下、どうすれば会えるのかという具体的な策についてばかり口にしているからです。時に神に祈るシーンもありますが、そのシーンくらいで、一貫してマルコが『母に会える』と信じて行動しているからこそ、それに協力してくれる人々を引き寄せ、母に出会うという結果まで引き寄せたのだと解釈しています。
 何かを手に入れたければ、結果を手に入れる自分の姿を信じること、そしてその結果を引き寄せるために何度も考えながら着実に行動を積み上げていくことが大事なのだと改めて考えさせられる作品でした。

3.宮沢賢治『銀河鉄道の夜』

 この作品の中に出てくるジョバンニの『けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう』という言葉が、私の中では最も胸に響いています。この答えを自分の中に持っている人(言語化できる、できないは別として)は、きっと幸せなのだと私は思っています。それは物かもしれないし、能力や愛のような形のないものなのかもしれません。幸せというのは、誰かにしてあげるものでなければ、してもらうものでもないと私は思っています。自分を幸せにできるのは自分だけ、と言ってしまうと何やら薄情なようにも感じますが、自分が本当に心の底から何に魂を震わせられるかを知っているのは自分しかいないのだと思っています。唯一これに当てはまらないのは、子どもの自我が芽生えるまでの親子関係ですかね。幼い頃の子どもの価値観の形成に関しては周りの大人たちの影響が大きいと思うので、そこに関しては本人だけではない部分もあるのかなとは思います。全ての個体が別の意志を持っている以上、価値観についても似た人はいても全く同じ人はほぼ0に近いと考えていいのかなと私は思っています。そういうわけで、万人に共通する幸せが果たしてあるのかないのか今の私にはわかりませんが、本当の幸せというのは、私たちの心の奥底に秘められている感情によるものなのだろうなと感じています。
 幸せや生死についてなど、自分の価値観について改めて考えさせてもらえる作品です。


 私は小説をなかなか読まないので、流行りの本ではなく本当に昔ながらの名作のノミネートになりました。今年は『黒革の手帖』とか、そういうのも一応読んではいるのですが、こちらの3作品は今年、書斎倶楽部のライティング読書会の課題図書に上がった本で、一度感想文を書いてあった本だったので、やはり思い入れというか、読み込み方が他に比べると群を抜いていたというのも大きな理由かもしれません。ただ、課題図書はこれら以外にもありましたがこの3冊を選んだのはやはり、芥川さんの言葉の紡ぎ方、母を尋ねて三千里のように子どもの頃に読んだ本が大人になると解釈が変わること、銀河鉄道の夜の幸せとは何かという壮大な問いが決め手になったのは間違いありません。
 なかなか小説を読まない私ですが、たちまち今日(2022年12月30日)時点でのAN的2022年ベストセレクションはこの3冊でした。
 次回、Vol.5では【ビジネス書部門】のジャンルをご紹介できたらと思っています。お楽しみに!


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