【MIL】Survive&Advance ③【DFAから新守護神へTrevor Megill】
ブルワーズ担当のあなんです。
毎年ブルワーズはMLBで中々定着しないリリーフやマイナーを渡り歩いてるリリーフを安価で獲っては優秀なリリーフに魔改造しています。昨年はエンゼルスから獲得したElvis Pegueroをセットアッパーに仕立てました。
今シーズンは特にそういったリリーフで溢れていますが、今回はTrevor Megillを紹介します。
○ 今季の成績
規定未到達にもかかわらず、fWARはリリーフで26位。K/BBは6.00で、これはK/9>10以上のリリーフとしては7番目に良い数字です。防御率は2点台後半ですが、5/29登板前までは1点台でした。
Megillの投球で目を引くのは、多くの打者が力負けしていること。
23年→24年で内野フライの割合は+10ポインも増加し全体12位。反対方向への打球40.0%はリリーフ全体で6番目に高い数字です。
5/21のマーリンズ戦では今季初めてセーブ失敗となりましたが、打たれた同点打は当たりが弱すぎたあまり、ライトの前にぽとんと落ちてしまった打球でした。
○ プロフィール
現在30歳のMegillは身長202cm。MLBで5番目に高い身長です。
プロ入りは21歳。2015年ドラフトでパドレスに7位(全体207位)で指名され入団しました。 2019年にカブスへ移籍し21年にデビュー。オフにツインズへ移籍し39試合登板するも、23年5月にDFAされました。
ブルワーズに加入したのはその後。対価はTaylor Floydという19年ドラフト10位(全体309位)の若手投手で、当時はリリーフのデプス強化という位置づけに過ぎませんでした。
彼の売りは高い奪三振力。最速100mphのフォーシームと高スピンのナックルカーブ、スライダーを組み合わせ、プロデビューから毎年K%25.0以上を記録していました。
一方で、バットに当たると痛打が多く、2年間67試合の登板で被打率.303/Barrel率9.3%。特にフォーシームはxSLG:21年.582 / 22年.494という有様。BABIP.387という運の面を考慮しても、球速を生かし切れていない投手でした。
しかし、ブルワーズ加入後はフォーシームのxSLG3割台に抑え、空振り率は22年から10ポイント近く増加しています。
どのような改造で豪腕は生まれ変わったのか。
ここからはMIL加入後の取り組みを分析していきます。
○ MIL加入後の変化
Megillの特筆している点はフォーシームの球速に加えてMLBトップレベルの身長ということ。ブルワーズはこのスペックを生かしたアプローチをとったとみられます。
◇ 球種絞り込み
Megillはブルワーズに加入した23年からスライダーを封印し、フォーシームとナックルカーブのツーピッチスタイルに変更しています。
変更した根拠はトラッキングデータ。
ツインズ時のMegillのカーブとスライダーの変化量を比較したのがこちら。
縦変化は15インチ以上の差がありますが、横変化の差は1.3インチ(3.3cm)。公式球の直径が2.86~2.94インチなので、差はわずかボール0.5個分弱です。
スライダーを封印した意図は、スライダーが縦変化の小さいカーブ、いわば""カーブの下位互換""という位置づけになっており、中間球にもならないと判断したためと思われます。
◇ カーブの投球コース
22年まではカーブをゾーン内にも多く投げていましたが、ブルワーズでは徹底した低め中心の投球がされています。
ツインズではカーブのハードヒットが非常に多くRunValueは-5。一方で、球速は上位10% / 落差は上位1%とポテンシャルの高いボールでした。ここに目をつけたブルワーズは、長打の出づらい低めへの配球に変更したとみられます。
この変更で長打が激減。HardHit率は50.0→30.8%、xSLGは.362→.212へと良化しました。加えて、球速が83.4mphから2mph以上アップしたことで空振り率も増加。打ちづらいを通り越してバットにかすらない強力なボールとなりました。
◇ リリースポイントの移動
Megillはブルワーズに加入した23年からリリースポイントが一塁側に移動し、やや高くなっています。
「リリースポイントの移動」というと、マウンドの立ち位置が移動したと思いがちですが実はあまり変わっていません。
移動したのは左足の着地位置です。
22年はインステップ気味で投球していましたが、MILに加入した23年はそれが修正されています。静止画じゃわかりづらいので映像をご覧ください。
この移動で、ハイアングルからきれいな縦回転のフォーシームを投げられるようになり球威が増強。さらに、ピッチトンネルの観点でカーブとの見極めが難しく差し込まれるケースが増えたとみられます。
ちなみに今季はさらに移動しています。Megillは極端なアウトステップで投球しています。22年と比較すると変化は顕著で、Megillは極端なアウトステップで
体重を後ろで思いっきり溜めるこのフォームでMegillのフォーシームはさらに球威が増したとみられます。Active Spinは90%から95%、xSLGは.389から.320へと良化しました。
Megillはカーブの投球コースを低めにしただけでなく、202cmという身長を活かし、上から投げ下ろすスタイルに変えたことで打者を制圧できるようになりました。
5/29の試合でMegillはライナー性の打球を右腕に受け、緊急降板しました。幸いにも骨は折れてなく本人も数日で復帰するとコメントしていますが、クローザー候補のPayampsが不安定な現状、Megillの復帰が待たれます。
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