見出し画像

【MIL】Arnold新政権下のトレード×3

ブルワーズ担当のあなんです。

10月末、Stearnsに代わりMatt ArnoldPresident of Baseball Operationsに就任する編成のトップにつくと発表されました。今回は新体制になって行われた3件のトレードについてお話しします。PBO交代については次回のnoteで。

〇 Hunter Renfroe 放出

11/22、LAAとのトレードが発表され、MILはHunter Renfroe外野手を放出、対価にJanson Junk(28年オフFA)、Elvis Peguero(28年オフFA)、Adam Seminaris(現AA)の3投手を獲得しました。

◇ Hunter Renfroe

Renfroeは今季主軸としてチーム唯一のOPS.800以上を記録。低調だった打線を牽引した男で、本来は放出すべきでありません。しかし、調停3回目の来季年俸は$11.2M(予測)。大きくペイロールを圧迫するためサヨナラとなりました。また、AAAにはRuizとFrelick、Wiemerが待機しており頭数はあるというのもトレードされた要因のひとつでしょう。打撃面のマイナスは否めませんが。


◇ Janson Junk

【MLB】
3試合(2先発) 8.1イニング 11奪三振 3四球
ERA:6.48 FIP:3.11 

【AAA】
16試合(15先発) 73.2イニング 69奪三振 18四球
ERA:4.64 FIP:4.34 被打率.263 WHIP 1.29
K/9 8.43 BB/9 2.20 HR/9 1.10
2022年の成績

Junkは26歳の右投手。昨年HeaneyのトレードでNYYから移籍しました。メインの球種は90mph前半の4シームと80mph前半のスライダーの2つ。球速こそ平凡で空振りを奪う力はありませんが、BB/9 = 2.2と制球力に優れています。Arnoldも「先発ローテ争いに絡める力はある」と語っており、来季はAlexander、Smallと共に谷間での登板が予想されます。オプションも2つ残っており、柔軟な対応が可能です。


ちなみに、彼のスライダーに関しては彼の高めに投じる戦略が功を奏するのではという分析があります。

この記事によると、スライダーは高めに抜けたほうがスイングされず、wOBACON(contact時のwOBA)を低く抑えられるという結果があり、Junkは3番目に多くスライダーを高めに投じているそうです。


◇ Elvis Peguero

【MLB】
13試合 17.1イニング 11奪三振 3四球
ERA:6.48 FIP:3.11 

【AAA】
38試合 44.1イニング 50奪三振 13四球
ERA:2.84 FIP:3.34 被打率.206 WHIP 1.06
K/9 10.15 BB/9 2.64 HR/9 0.41
2022年の成績

サイド気味のアングルから豪速球を投げる右のリリーフ。MLBでは2年間16試合のリリーフ登板のみ。今季もほとんどの期間をAAAで過ごしました。以前試合中にトラウトから癖を指摘されたのが話題になってましたね。

球種はスライダーとシンカーのツーピッチで、スライダーの投球が6割以上を占めます。課題はボールの質。球速はシンカーは96-98mph、スライダーは91mphで非常に速いですが、空振りが奪えません。さらにシンカーはHardHIt率40%超えでまだまだ改善すべき球種となっています。オプションはJunk同様2つ残っています。


◇ Adam Seminaris

【A+, AA, AAA】
24試合(21先発) 101.2イニング 97奪三振 38四球
ERA:3.54 WHIP 1.43
K/9 8.4 BB/9 3.6 HR/9 0.6
2022年の成績

20年ドラフト5巡目指名の24歳左投手。今季はA+からAA、AAAと駆け上り、バックエンドスターターとロングリリーフをこなしました。投球割合は速球(4シームと2シーム)が60%を占め、残りをスライダー・チェンジアップ・カーブで均等に分配しています。彼もまた将来のローテ4-5番手候補でしょう。


◇ 所感

残り1年の外野手を3人の若手投手に換えたこのトレード。Arnoldは「baseball tradeでありサラリーダンプではない」とコメントしていますが、そんなわけないだろというのが率直な感想です。ただ、彼がそうコメントしたのはコンテンドする意志がないと捉えられたくないからだと感じます。たしかに従来のサラリーダンプは短期的にはマイナスですからね。見返りは伸びしろのある3投手。投手のデプスが厚くなりました。あとは育てるのみ。


〇 Kolten Wong 放出

現地時間12/1、SEAとのトレードが発表され、MILはKolten Wong内野手を放出。対価にJesse Winker外野手(23年オフFA)とAbraham Toro内野手(26年オフFA)を獲得しました。

◇ Kolten Wong

20年オフにFAでMILに加入したWong。今季も正二塁手として134試合に出場しキャリアハイの打撃成績を収めました。その一方で、持ち前のディフェンス力が急激に低下。来季オプション($10M)の行使が危ぶまれていました。行使後も、Turang(SS / 2B)がルール5対策で40人枠に入り、Wongとの兼ね合いが注目でした。そのため、MILファンとしてはこのトレードにあまり驚きはありません。


◇ Jesse Winker

136試合 547打席
.219/.344/.344 14HR 53打点 
BB% 15.4 K% 18.8 109wRC+ fWAR 0.4

3月にCINから移籍したWinker。今回のトレードでNL中地区にカムバックとなりました。昨年はキャリアハイの数字を残しオールスターにも選出されましたが、今シーズンは一転してスランプに。スラッシュラインはいずれもキャリアワーストに終わっています。OBP = SLGはさすがに目を疑いましたね。

しかし、今シーズン四球率は上位2%、xwOBAは上位20%。シフトの影響をもろに受けていたことも考慮すると、来季のバウンスバックに期待が持てます。また、今年の不調は怪我の影響もあったそうで、オフには左ひざと首の手術を受けました。万全の体調で来季を迎え復活の可能性は十分あります。

savantのexpextedスタッツ

Winkerの起用法ですが、DHに座るとみられます。今年はLFを守っていましたが、守備と肩は現レギュラーのYelichよりも悪く、守らせる必要はありません。また、今年のブルワーズはDHを固定できないまま終わり、来季の見込みもありませんでした。Winkerが適任といえるでしょう。


◇ Abraham Toro 

109試合 352打席
.185/.239/.324 14HR 10打点
BB% 6.3 K% 18.5 62wRC+ fWAR -0.7

昨年のTDLでHOUからSEAに移籍したスイッチヒッター。今シーズンは不調に終わっていますが、彼もまたシフトの影響を大きく受けており、Winker同様来季のバウンスバックに期待できます。

加えて、Toro獲得は内野のデプス確保にもなりました。MILの3Bと2Bのレギュラーは守備の不安定なUriasBrosseau(いずれも右打者)、そしてルーキーのTurang(左打者)。守備に問題のないToroは今年のPetersonのような内野UTとしての役割を果たすでしょう。オプションも1つ残っているので、ロースターの柔軟性も確保できています。


◇ 所感

正二塁手の放出という痛みは伴いましたが、来季の復活に期待ができる長距離打者と4年保有可能な内野手を獲得しました。十分利のあるトレードだと思います。

一方で、WongとWinkerの年俸の差額($1.75M)はMILが負担しました。Renfroeのトレードとは異なりサラリーダンプにはなっていないため、Winkerを転売するのではという見方もあります。

個人的には転売しないと思います。Winkerを放出すると、別の長距離ヒッターを確保しなければなりません。MILは資金力に乏しく複数年契約のオファーは提示しないでしょう。FA市場にはWinkerより格上の打者は多くいますが、1年$8.25M以下の単年契約に応じる選手に限定すると、選択肢がグッと狭まります。Winkerがちょうどいい落としどころかなと思います。尤も、MILフロントの動向を読むのは至難の業。トレードで複数年コントローラブルな若手長距離ヒッターをとってくるかもしれませんが。


〇 William Contreras 獲得

現地時間12/12、ATLとOAKとの三角トレードが行われました。

MILは傘下4位のプロスペクトEsteury Ruiz外野手をOAKへ放出。ATLからWilliam Contreras捕手とJustin Yeager投手、OAKからJoel Payamps投手を獲得しました。

三角トレードの主役はATLに移籍したSean Murphyですが、MILサイドは何といってもWilliam Contrerasです。今オフの最優先補強ポイントだったレギュラー捕手を確保しました。


◇ William Contreras

97試合 PA:376
.278 / .354 / .506 20HR 45打点
BB% 10.4 K% 27.7 130wRC+ fWAR 2.4
2022年成績

1週間後に控えるクリスマスイブが誕生日の24歳。今年はオールスターにも出場しました。兄が先日STLと契約したので、NL中地区で兄弟そろい踏みですね。

今シーズンの成績で一目瞭然ですが、打撃が売りの捕手です。この補強はまさにピンポイント。広角に打つことができる点もMILにはうってつけの選手です。守備面は現状いまいちですが、MILはかつて守備に難のあったNarvaez(現FA)を鍛えた実績があり、そのノウハウで以て守備を磨くと考えられます。また、27年オフまでの5シーズン保有可能。しばらくはペイロールも圧迫しません。

懸念点は、捕手として1年間プレーした経験がないこと。今シーズンは捕手としては60試合の出場にとどまっています。Caratiniとプラトーンを組むには打力差が大きいため、左打者のWinkerとDHを分け合う可能性も考えられます。


◇ Justin Yeager

38試合 40.1イニング 54奪三振 23四球
ERA:3.79 FIP:4.23 被打率.179 WHIP 1.21
K/9 12.05 BB/9 5.13 HR/9 1.12 GB/FB 0.98
今季AAの成績

2019年ドラフト33巡目指名でATLに入団した右リリーフ。今季はAAで過ごしました。球種は90mph後半の速球と落差の大きいスプリット、そしてスライダーを併せ持ちます。奪三振能力が高い一方、コマンドに課題があります。


◇ Joel Payamps

KC→OAK
41試合 55.2イニング 41奪三振 16四球
ERA:3.23 FIP:4.24 被打率.269 WHIP 1.37
K/9 6.63 BB/9 2.59 HR/9 1.13 GB/FB 1.73

28歳の右リリーフ。19年にARIでデビュー後、TOR、KCを経て今夏からOAKに在籍していました。持ち球はスライダーとフォーシーム、シンカー、チェンジアップの4つで、速球は90mph中盤を推移しています。ST次第ではミドルリリーフに就きますが、オプションが無いので早々にDFAされそう。


◇ 所感

大型契約の連発するウィンターミーティングで静観を貫いていたArnoldでしたが、終了後に完璧な補強をしてきました。まさかRuiz1人でレギュラー捕手を確保できるとは。大変驚きです。ATLとの1対1では決して実現しないトレードが三角トレードで実現しました。おまけにリリーフも2人ついてきた。すごい。すごすぎる。Arnold万歳!!

以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?