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「暑い宝塚記念」で思い出す、1997年マーベラスサンデー

それにしても暑い。
まだ梅雨明けもしていない6月下旬なのに連日35℃超えの猛暑日って……

お馬さんも大変ですよねぇ。馬(サラブレッド)って基本的には暑さに弱いということですし(そもそも暑さに強い哺乳類っているんだろうか)、ここ数日の気温急上昇にやられてしまい、能力を発揮できなくなる馬も出てきそうですよね。

そう考えると、明日の宝塚記念も波乱のニオイがいっそう漂い始めたのでは……?

もとより今年の春GIは1番人気馬が全敗という異常事態。そんな特殊な上半期GIの総決算となれば、それはもうどんな超波乱が起きても驚けないということだ。

■遅れてきた天才

そして「暑い宝塚記念」で思い出すのは1997年。

僕が生まれて初めて宝塚記念を阪神競馬場で生観戦した年だ。だから余計に思い出深いということもあるのだけど、この年もメチャクチャ暑かったのを覚えている。

レースの主役はマーベラスサンデーだった。

話題沸騰のサンデーサイレンス産駒で美しい栃栗毛の馬体に鞍上は武豊。モノが違うというのは走りを見れば明らかで、まさに“遅れてきた天才”という言葉がぴったりだった。

これはまたSS産駒からとんでもない大物が出てきた、GIをどれだけ勝つのだろうと当時は思ったものだけど、マーベラスサンデーの前に立ちはだかったのがサクラローレル、マヤノトップガンの2強。

GI初挑戦の天皇賞・秋から始まり、有馬記念、天皇賞・春と常にマーベラスサンデーの前にはこの2頭が立ちはだかった。マーベラスサンデー自身の走りは決して悪いものではなかったのだけど、かえって能力を出し切って負けている分、この2頭との実力差というものを見せつけられているような、マーベラスサンデーの天井を見てしまったような気持ちにもなった。

あのマーベラスサンデーがこのままGIを勝てずに終わってしまうのだろうか……

■劇的なレース、そしてドッと疲労感が……

そうして迎えた当時6歳の宝塚記念。サクラローレル、マヤノトップガン不在のここは何としても勝ちたい、いや勝たなければいけないレース。とはいっても、前年の天皇賞・秋で後塵を拝した1つ年下のバブルガムフェロー、安田記念を制して勢いに乗るタイキブリザードの藤沢和厩舎2騎は強力だ。

特にバブルガムフェローは前年のジャパンカップ13着が影響したのか、3番人気に甘んじていたとはいえ、まだまだ全てを見せ切っていないような底知れなさを感じさせるSS産駒。今度もまたこの馬にやられてしまうのではないか――マーベラスサンデーのいちファンとして内心、そんな弱気に駆られていた。

しかし、あの日のマーベラスサンデーは強かった。

道中は後方で脚をため、3角を過ぎたあたりから徐々に進出。最後の直線では前が壁になりかけはしたものの、すぐに外に持ち出して矢のような伸び。先に抜け出したバブルガムフェローをゴール寸前で差し切るという劇的すぎる勝利だった。

それはもう嬉しかったですよ。ついにマーベラスサンデーがGIホースになったという喜びもそうだし、何よりレース内容が素晴らしかった。

大満足で帰途に就いたわけだけど、同時にドッと疲れた。精神的に、ではない。単純に体力的に、だ。

とにかく暑かったのだ。それに人が多すぎた。まさに立錐の余地もない感じで終日立ちっぱなし。休む場所なんてもってのほか、座るスペースすらもなかったと思う。

宝塚記念を現地観戦するというのは、かくも厳しいものなのか……来年からは自宅テレビ観戦でいいやって思ったっけ(ま、翌年もその後も普通に競馬場に見に行きましたが)

で、あれだけ暑かったんだから、宝塚記念が行われた1997年7月6日は36℃くらいはあったんやろうなぁ、なんて思って調べみたら……

最高気温29℃(※神戸市のデータ。阪神競馬場は宝塚市)

ん、アレ……え、そんなもん?

おかしいなぁ。体感40℃くらいはあったはずなんだけど。おかしいなぁ。

人の記憶とは、かくも怪しいものなのか……

まあ、アレです。あんなに暑く感じたのはやっぱり人の多さのせいだったのでしょう。Wikipediaによれば、阪神競馬場の入場者数歴代1位はまさに1997年7月6日の9万2986人。阪神競馬場に行ったことがある人なら分かると思いますが、あの広さの競馬場に9万人も入れちゃダメですって。

■昨日までは◎ヒシイグアスと思っていたけど

そんなこんなで言い訳しつつ、気温どころか当時の宝塚記念が7月アタマの開催だったこともすっかり忘れていた自分の記憶力のなさに愕然としつつ、そんなんだから馬券が当たらないんだよなぁと妙に納得しつつ、「暑い宝塚記念」をテーマに予想を進めてみた。

冒頭でも述べたように、馬は基本的に暑さに弱い。だからこそ夏競馬はその時に調子のいい馬が、格・実績に関係なく好走する(=穴をあける)のだろう。

特に今週の宝塚記念は、徐々に気温が高くなっていっての明日ではなく、急激に気温が上がった、いわば異常気象。追い切り日の動きが良くても、その後の3~4日で調子を落とす馬が出てきても不思議ではない。

特に輸送。これは馬にとって大変な負担になるのではないか。

そう思うと、昨日まではヒシイグアスから勝負!と思っていた僕の心が激しく揺らぎだした。

同馬は美浦からの長距離輸送がある上に、これまで好走したレースはいずれも涼しいor寒い時期のレース。というか、そういう時期にしか走っていない。唯一、暑い時期に走ったレースといえば、3年前の6月30日に走ったラジオNIKKEI賞なのだが、このレースはまだ若い3歳時とはいえ、キャリアの中でただ1走、掲示板外の9着に大敗したレースだった。

うーん、もしかして暑い時期は良くないのかも?

そんなわけで、ヒシイグアスに代わり僕の中で急上昇してきたのが関西馬のアリーヴォだ。前走の大阪杯はあの武豊騎手が「勝ったと思った」と言うくらい内容のあるレースだったし、GI初挑戦にしてそれだけのレースができるということは能力の高さの証しでもある。

しかも、中間の稽古でも抜群に動いており、報道によれば「大阪杯よりもいい」と陣営が言っているらしいじゃないですか! そして何より、下級条件ではあるけれど夏の小倉で2勝しているだけに、アリーヴォは暑さにも強いタイプと見た。

直前で本命を変えて良かった試しはあまりないのだけれど(むしろ後悔したことの方が多いのだけど)、武豊騎手の手綱で勝ったマーベラスサンデーを思い出したのも何かの縁。これは同じ武豊騎手のアリーヴォを買えという天の啓示だと思いたい。

■宝塚記念
◎アリーヴォ
〇ヒシイグアス
▲ディープボンド
△エフフォーリア
△ポタジェ
△デアリングタクト

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