ayumi hamasaki 25th Anniversary Live PART3

※LIVEレポートのため、ネタバレを含みます。
 全部でPART1~5までの5部構成です。
 他のPARTはこちらからどうぞ。


11. Heartplace

照明が一度落ちた後
イントロが流れ始める
ダークで地に這いつくばるようなメロディ
メインステージ中央に
マイクスタンドとayu
一気に客席を照らす
ライトの閃光を背負いながら
ロックに身を預けるayu

再認識する

浜崎あゆみは
やっぱりロックだなと

いや
J-POPの王道であり
ロックでもあり
EDMもバラードも
ジャンルでカテゴライズされないのが
浜崎あゆみであって

浜崎あゆみは
“浜崎あゆみ”という
ジャンルそのもの


それでも
例えバラードを歌っていても
奥底に流れるのは
ロックだなと
感じる

わかりやすいロックの曲を歌う時ほど
浜崎あゆみらしさが
滲み出る

黒のレザースーツに
ゴールドのラインをあしらい
孤高なQUEENが
心の叫びをぶつける


「自由を求めキズつき 罪おかしたりもした
 幼く不器用すぎた 愛すべき同志達よ」

「We're free to go anywhere we want
 We're free to do anything we want
 一体僕は何といつまで 戦うんだろう」


一時期
バンドメンバー不在で
構成を組んだステージもあったけれど

やっぱり
ayuが
髪を振り乱して
マイクスタンドと
なだれ込むように歌う時は

そのバックに
バンドさん達がいてほしい
ayuが歌う
全身全霊の叫びを
その背後から
何も言わずに
支えていてほしい


「きっと自由との戦いは 続いてくんだろう」

「すれ違う人の温もりに 不意に涙溢れ出したよ
 もしかしたら君やアイツやあのコだったかもしれない」


余計な配色など一切ないステージで
TAの視線を一身に受け
ただただそこで
白く鋭い閃光と共に
ayuの心の奥底からの
歌声だけが響く

25年前
何よりも探し求めていた
Heartplaceを

ねえ ayu
果たしてあなたは
見つけられたの・・・?


ayuが本当の意味で
心安らげる場所なんて
本当にこの世の中に
存在するんだろうか
そんな想いがよぎってしまう

“歌の中だけでは自由で居られる”
ずっと昔にayuが言っていた
それが今もそうなら

ただ
ただ私たちTAに出来ることは
どんな時も
どれだけ時代が変わっても
ayuが唯一自由を叶える
“歌”という場所を
このピンクの海で
創ること

25年の節目に
聖地代々木を
TAだけで埋め尽くせたことは
その意味でも
大きな意義を持つ
私たちにとっても


12. alterna

Heartplaceの最後に
ayuが高く右手を突き上げた後
暗転したステージへ
鳴り響く独特のイントロ

「変化を恐れるのなら 離れたとこで見ててよ
 何かしたってしなくったって 結局指さされるなら
 あるがままに」


スクリーンには
“A clone factory”の文字
無垢な真っ白の衣装に
白の仮面をつけたダンサーズ
その動きはまさに操り人形
あのクローン工場で
廃棄されたマネキンの体の一部が
ステージ上に無造作に転がる
一転して
ピンクとも紫とも言えない光が
怪しくステージを照らす


「本当に大切で必要なものなんて
 ほんのちょっとだけで
 あとは大抵飾りだった」

血が通っていないような
真っ白なダンサーズ達の中で
ただ一人
真っ黒なayuが
“あるがままに生きる”と
抗うかのように歌う


この曲がリリースされたのは2005年
売れると同時に変わった周囲の反応
聞こえてくるのは大袈裟で
中身のない誇大評価と形ばかりの賞賛
何をしようにも揶揄され
嘲笑うかのような世間の目
持ち上げるか
蹴落とすかの世界

そこで一人
ただ居場所を求めて
歌だけを頼りに
生きると決めたのに

気づけば
もう息をしているのかもわからない
なにが本当かもわからない

そんな浜崎あゆみという
モンスターに絶望し
そして
誰よりも痛烈に非難し、嫌っていたのは
ayu自身だった


「さらに言うとしたら
 その必要以上なモノがもたらしたのは
 ゆとりじゃなく喪失感」

このalternaのMVでは
浜崎あゆみの顔をした
クローンがいくつも製造されていて
そこに掲げられた看板には
“A SINGING MACHINE”
人々はこぞって
そのショーを観にくる様が描かれている

とあるインタビューを思い出す
自分の意志とは全く関係なしに
会社の都合のみで
一方的に決められた
A BESTのリリース
「いつか、出せたらいいな、出せるかな」と
密かに思い描いていた夢のベストアルバムは
レコード会社のCD商戦の波に揉まれ
あっけなく
カンタンに世に出ることになった


その時の思いをayuはこう語った

「それまでは、私は自分のことを一人の人間だと思っていた。
 だけどそれは違った。
 私は、avexという大きな組織の一部であり
 浜崎あゆみという大事な大事な“商品”なんだな、と。
 そう思わないと納得できなかった。」

一人の女性でも
一人の人間でもなく
大事な大事な“商品”であるという事実
それを一人静かに
受け入れた彼女

そんな
“商品”を
描いたのがこのalternaという曲


その残酷さを越えて
さらに彼女はこうも語っていた

「その時に思った。
 もう逃れられないのなら
 それなら
 私はここで
 この場所で
 “人間として生きてやれ”って。」


右ならえ右で
操り人形のような
“A SINGING MACHINE”には
絶対にならない
alternaは
それを痛烈に表現した曲でもある


間奏後
ステージに
ダンサーズが横一列に並ぶ
それぞれが仮面を投げ捨てたかと思えば
無表情なまま
クローンの世界へと
引きずり込むかのように
ayuを取り囲む


「運命でも宿命でも
 変えてってみせようじゃない
 こわいモノならもうじゅうぶん
 見尽くして来たんだから」


ラストサビは
取り囲むクローン達に
洗脳されたかのように
徐々に表情を失っていくayu
大きく見開かれたその瞳が
力を失っていくかのよう


「そうつまり欲しいものしか
 もう欲しくないって事
 それだけなの」

“人間として生きる”
そう決めた覚悟を
最後振り絞るように歌い上げたあと
その場に崩れ落ちるayu
瞬きひとつせず
宙を見つめる瞳


ダンサーズの持つ
それぞれの白いライトが
左右上下に交差する

その場で動かないayuを
一瞬照らしたかと思えば
次の瞬間には
ayuの姿はなくなり
残ったのは
積み重ねられた
マネキンの腕と足
そして
どこか満足げな表情のダンサーズたち・・・

あるがままに
人間として
生きると決めた彼女と
それを許さないかのような
冷たいクローン達との温度差が
不気味にステージに残る


最後は
覚悟も虚しく
クローンに取り込まれてしまったのか


いや
そうじゃない

そう見せかけて
本当は抜け出せたんじゃないか

仮面を取ったダンサーズは
本当はクローンの仮面を被った人間達で
ayuを手助けしたんじゃないか

あの表情は
自由を勝ち取った
勝者の笑みだったんじゃないか


時にキズつき彷徨いながらも
私たちは自由でいていいはずだと
終わらない戦いの中で
同じようにもがく人々の
温もりに気づくHeartplace

人間味の薄い組織や世間の中でも
余計な飾りなど捨ててあるがままに
どんな運命でも宿命でも
越えていく覚悟を決めたalterna

2曲が並ぶこのパートは
浜崎あゆみのアーティストとしての人生
そのもの


“ステージこそが浜崎あゆみの生きる場所”
それは真っ直ぐにayuが向き合ってきた真実だ
ステージに賭ける想いが
並々ならないものであることは言うまでもない

だけどそれは
逆に言えば
ステージでしか生きられないのが浜崎あゆみ
ということ
なのかもしれない

今にも壊れそうなほど危うく
時に終焉の気配を感じるときがあっても
ステージで浜崎あゆみを生かし続けるために
浜崎あゆみが浜崎あゆみで在り続けるために
どれほどの痛みや犠牲があったのか


clone factoryを抜け出して
真のHeartplaceを
見つけていてほしい

そう願わずにはいられない




13. acoustic show

静まった会場で
優しいバイオリンの音色が
奏でるHEAVEN

キーボードとベースが
寄り添うい紡ぐDearestに
コーラスの声が重なる

オーケストラが
切なくHANABIを奏でたあと

穏やかなギターリフが
TO BEへと導く

最後は
総勢で
一つになり
SEASONSで締めくくる

ここもまた
歴史を感じるアコースティックパート


ayuのバラードは
不思議な力を持つ

時に
悲しみのどん底で
代わりに泣いてくれたかと思えば

ふっと
心を撫で
癒しを与えてくれる

同じ曲であっても
時が経てば
まるで違う表情で
寄り添ってくれたりする


きっと
この代々木にいる
それぞれのTAの人生にも
いろんな感情や風景を
刻んできたであろう名曲達


A strings、バンド、コーラスの方達が
生み出す音の波に
ピンクのTAの大切な記憶達が重なって
代々木全体が
ひとつのオルゴールになったみたい



14. beloved

優しくて温かい
ピアノの旋律

ゆっくりと一歩ずつ
後方ステージから
歩みを進めながら
歌うayu


「昨日の僕はまた うまく歩けなくて
 言葉振り回して 誰かを傷つけたよ」

「今日の僕はそして 後ろ指を指されて
 冷たい視線さける ように俯いているよ」


スワロフスキーの輝きが
至る所に散りばめられた
ヴェールのような衣装が
ビビットピンクのセットアップを包む
ドーム型の枠組みで作られた
丸みを帯びたドレスは
シアーな素材になっていて
ayuが歩くたびに
キラキラと光を放つ

そんな
可愛らしくて
キレイなドレスだからこそ

ayuのこれまでの痛みが
透けて見えるようで

乗り越えた傷跡達が
ひとつひとつ
光となっていくかのようで
息を呑む


「いつまでも変わらない あなたのままで
 ただそこに そこに居て欲しい」

「いつまでも変われない 僕のまんまで
 ぎこちない笑顔だけど 側に 側に居させて」

ayuの
痛いほどに
真っ直ぐな祈りを
ピンクのTAの海が
包み込む


「ねえ あなただけには誉められたい
 人が僕を否定しても」


“大丈夫だよ、ayu
 大丈夫だよ、私たちがいるから”


揺れるピンクのひとつひとつの光が
そうささやいているみたいで


ほんの少しでも
身を委ねられるような
安心感を
覚えてもらえたら
そんなTAの想いは
ayuにきっと届いているかな


「ねえ あなたも本当は そんなに強く
 ない事を 僕は知ってます
 僕がしてあげられる事なんて
 なにもないけれど 
 その心 いつも抱きしめてます」


痛いほどに
伝わっているから
ちゃんと
聴こえているから

だから
ayuもどうか
忘れないでいて
信じていて

私たちTAが
ずっと側にいることを

互いを想うbeloved
Nonfictionのときのような
ビビッドなピンクを
あえて宝石達で包み込んだのは
この柔らかなピンクの海と
溶け込むようにひとつになりたい
そんなayuの
願いだったかもしれない




15. End roll ~ As if... ~ Dolls

belovedの最後に
センターで
会場をぐるりと見渡して
ありがとうとその口が告げる
こぼれ落ちそうな
涙をおさえるayu
至る所から
その名を呼ぶ声が響く



End rollのイントロと共に
センターステージから
花道へと一本の道が
ライトアップされていく

また歩き出すayu
そして
前方からみどりんぐ
後方からZINさん

「もう戻れないよ
 どんなに懐かしく想っても
 あの頃確かに楽しかったけど
 それは今じゃない」

「思い出している
 いつも不器用な
 幕の引き方をしてきたこと」

「君はどこにいるの
 君はどこへ行ったのか
 遠い旅にでも出たんだね
 一番大切な人と」


ソロとしては珍しい組み合わせ
言わずと知れた
ダンサーズの核をなす二人

一番最初のステージから
ayuと同じだけの歴史を刻んできたみどりんぐ

そして常にayuの良き理解者として
浜崎あゆみの頭の中を
パフォーマンスに落とし込んできたZINさん

この長い花道が
これまでの道のりのようで
たくさんの出会いと別れを繰り返しながら
振り向かないようにと
歩いてきた
浜崎あゆみの25年のようで

この
アーティスト人生の一本道で
くぐり抜けてきた過去があるから
今がある


「人は哀しいもの?
 人は悲しいものなの?
 人は嬉しいものだって
 それでも思ってていいよね」

「そして歩いていく
 君も歩いてくんだね
 二人別々の道でも
 光照らしていけるように」


みどりんぐが
花道の上に
そっと置いた花束は
去っていた人たちへの餞


そんな二人を見て
涙ぐむayu

出逢いもあれば
別れもあるのが世の常

いつも
不器用なEnd rollの引き方しか
出来ないのも浜崎あゆみ

それでも
今もどこかで
別の道を歩む
かつての同志への
想いは変わらないよ、と




あまり
聞き慣れないフレーズ
まさかこの曲を聴けるとは

1st アルバムからのAs If. . .

「たとえばこのまま会わなくなっても
 それも仕方のない事と言って
 あなたは諦めるの?」


不器用な幕の引き方しか
知らないワケじゃない

不器用にでも
幕を引かざるを得ない
場面もきっとあったはずで

「いつの日か いつの日か
 きっと一緒にいられるよね...」

まるで泣きじゃくるかのような
ayuの声だけが
こだまする




再び静まり返った会場
穏やかなそよ風のような音色が
聞こえてきたかと思えば

ステージ中央
宙に浮く二つの影

ドレスを外して
ピンクのセットアップのayuが
横になったまま上方へと上がっていく
それを支えるのは
ダンサーズのリキ
足の甲2つだけで
ayuを支えながら
両腕に絡ませた
ティッシュのみで
二人分の重みを支える

命綱なんてひとつもない
生身の人間が極限まで挑んだ
その二つの影が
強くて美しい



地上へ降り立った
ayuが歌うのはDolls

「あなたは今何を想うのでしょう
 私には何が出来るでしょう」


人の儚く美しい
刹那を描いた曲


「綺麗な花を咲かせましょう
 そしてあなたに捧げましょう」


バックスクリーンには
大輪の花
ayuの歌声で
麗しく咲いていく


歌という水を得て
咲き誇る
浜崎あゆみもまた
一輪の花

永遠はないと知りながら
今という瞬間を
懸命に咲き誇る花


丁寧に歌い上げた後
再び宙へと舞い上がっていく

次はトモキと対をなし
ゆっくりと
回転しながら
上方へ

文字通り
命懸けのステージ

ayuが
過去の自分を越えたいと
言っていたのは
このパフォーマンスのことだったんだね


多くの出逢いと別れを繰り返し
今ここに残ったものは
きっと残るべくして残ったもの

いつかは
終わりが来ることを
知っていても


出来るのは
やっぱり歌うことだけ、と

「私は歌を歌いましょう
 あなたのそばで歌いましょう」


そのシンプルで
分かりやすい歌詞が


目の前の
数万のTAへと
差し出されている


一度は離れそうになった
でも結局離れられなかった
傷つけたこともあった
だけど信じていてくれた
諦めそうになったときも沢山あった
それでも諦めずにいてくれた


浜崎あゆみにとってのTA
TAにとっての浜崎あゆみ



一つに溶け合って
ピンクの海となり
それぞれの
痛みや悲しみも
優しく包み込み
生きる希望へと
昇華させていく


「私は歌を歌いましょう
 あなたのそばで歌いましょう」


その言葉を今聞けて
何よりも嬉しいよ




昔ツアードキュメンタリーで
私は歌を歌うことしかできない
ダンサーズもバンドさん達も
そのほかの大勢のスタッフ達も
私ができないことをやってくれている
任せることを決めたのも自分
信じると決めたのも自分
というような事を話していた

みんなの安全を第一に考えるのは大前提で
それぞれのパフォーマンスに
さらなる高みを求めることの厳しさは
誰よりもわかっている
そして求める以上は
それを越える座長でいるべきだと
自分自身に対しても
厳しい要求を課していく


ずっとずっと
そんな生身の人間達の
刹那の戦いの連続が
気づいたら
25年という長い月日を創った

その結晶が
2023年4月8日
今ここ代々木で
ひとつの光となり

配信を見ているであろう
全国のTA含めて
多くの人の心を震わせる




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