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episode2 寝ても覚めても

それからというもの
私の生活は
ayu一色に染まった

ありったけのお小遣いで
ayuのCD、アルバム、載っている雑誌を買い
今までリリースされたCDも全て買い
歌詞カードを眺めては
その言葉を反芻し
兄から譲り受けたコンポからは
毎日寝ても覚めても
彼女の歌声が流れ続けた

朝は目覚ましがわりに彼女の曲がかかる
夜はスリープタイマーをつけて
彼女の曲を聴きがなら眠る
それが私の当たり前になった



当時は
2ヶ月に1曲、1年に1枚のアルバムという
驚異的なリリースを
立て続けに行っていたayu


新しい曲を生み出すということは
それに伴って
制作からレコーディング
MVの撮影
ジャケット撮影
だけでなく


リリースに合わせて
あらゆるプロモーションも行う
歌番組への出演
雑誌掲載


それと並行して
ayuは毎年ツアーを行い
年末にはカウントダウンライブを行い
その構成から打ち合わせ
バンドメンバー、ダンサーズ
それぞれとのリハーサルと修正

隙間を縫うように
彼女のスケジュールは
確実に限界を超えていた



数年前の
音楽番組のトークで
あの時の記憶はほぼないと
話していた



そんなこととはつゆ知らず

ayuがTVに出て歌う姿を見て
年間数曲の新曲に胸を躍らせ
1年が明けると新しいアルバムを手に取り
アルバム曲の中に隠れた名曲を見つけ
MVやそのメイキング映像で
制作の裏側を垣間見ては感動し
ayuの歌詞を書き写した
ルーズリーフが
どんどん積み重なっていった

そんなんが
私の当たり前の日常になった




彼女がどんな新しい歌を
どんな新しい言葉を
創り出していくのか

それが私の一番の楽しみだった


LIVEは
自分で稼いだお金で行くと
決めていた私は

早く生の歌声を聴きたいと
思いながら
何度も
その瞬間を妄想して

LIVE会場ってどんなんだろう
どんな音の大きさなんだろう
ayuの表情は見えるかな
隣で参戦する人はどんな人だろう
どんなファンが観にくるんだろう
MCでは何を話すんだろう
そこにいる私は
どんな感情を抱くんだろう


そんなんが
楽しくて
楽しくて
仕方がなかった


カラオケではayuばかりを歌うようになり
友達からも
家族からも
ayuのことが好きでたまらない子という
お墨付きをもらうようになった


今でも
同級生からは

あの頃
よく
授業中に
ノートにayuの歌詞書いてたよね
って言われる


自分でも
何がそうさせていたのか
未だにわからない

何がそんなに惹きつけて
私を突き動かしていたのか


ただ
彼女が
生み出す音楽と
言葉と
創るその世界と

そしてその全てに
感じられる
覚悟と責任が


たまらなく
かっこよくって


私も
こんな人になりたい


そう
思うのが
必然だった





それは
もしかしたら

文字通り
彼女が
音楽のために
削った命を

受け取っていたのかもしれない



ただ単に
この歌が好き
この人が好き
というレベルを遥かに超えて

この生き方が
私を揺さぶる

彼女が
私の生きる道標

そんなことを
幼いながらに
全身で受け取っていた気がする




20年以上経ってもなお
こんな風に
一人の人を
追いかけ続けているなんて
思いもしなかった


それは
そこで生きると決めた
彼女の
血の滲むような
覚悟が
あったからこそで




一生
追いつけなくって
一生
適わない人





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