腐女子文字書きの戦闘描写Tips

前置き

何が書いてあるnoteなの?
 アマチュア文字書きによる『戦闘描写Tips』になります。
 いつも「文字書き」と名乗ることも烏滸がましいほどに、ただただ界隈の隅っこで自己満足発電を繰り返している私ですが、手癖が戦闘描写なせいか、割と「どうやったら小説で戦闘シーンが書けるのか?」という質問をいただきます。戦闘描写を読むことも好きなので、少しでも誰かの役に立てて、大好きな戦闘描写も増えたら嬉しいなと思い、本Tipsを作成しました。
 私はきちんとした文章の書き方を学んだこともないので、間違いも多々あるかと思います。あくまで「こういう方法で書いている奴もいるんだな」ぐらいで、読み流していただければ幸いです。

『私』はどんな話を書くの?
 文字書きを、脳内映像を文字として出力するタイプと、そもそも文字の状態で描写を想起するタイプとで大別するならば、私は前者になります。
 地の文は、なんちゃって三人称。平気で一人称も混ぜ込むので、あくまで「なんちゃって」です。戦闘シーンには、複数人の動きを俯瞰した描写や、動いているキャラクターが他者にどういう印象を与えているかの描写を入れたいと思っているので、三人称は何かと都合がいいんですよね。
 これを心理描写メインや、推しをとにかく気持ちよくしたいスケベ小説などに適用するのであれば、一人称の方が上手く描けるのではないかな、と思っています。
 腐女子なので推しCPに幸せなキスをしてほしいだけなのですが、チューするまでに十万字以上かかる長編を書いたこともあります。八割、戦闘描写でした。多分、推しCPがチューするより、今まで屠る、もしくは破壊してきた有象無象の数の方が多いかもしれません。


インプット編

 とにもかくにもインプットが無ければ、アウトプットはできません。まずは色々な参考資料を見ていきましょう。
 私が脳内映像出力型なので、本Tipsでの参考資料例は映像がメインになりますが、文章出力型の場合は書籍でインプットすることをおすすめします。

1.アクションシーンを見る
 おすすめはアニメ映像です。等倍速ではなく、一度コマ送りで再生してみてください。しっかりとキャラクターが描かれているコマと、簡略化されているコマに別れているはずです。
 小説とは読者の脳内補完に大きく頼る媒体だと思っています。裏を返せば全てを文字にして起こす必要はなく、アニメでしっかりと描かれているコマだけを書けば、あとは読者が勝手に脳内補完して、つなげてくれるのです。すごくありがたい。
 また、そうやって描写を限定することで、読書ストレスを軽減する効果もあります。文字数が多いのは嬉しいけれど、やっぱり文字を読むって相当なストレスなんですよ。それが少ない文字数で済むのであれば、読者も「読みやすい!」と読み込むスピードを上げていき、最終的に「スピード感があった」という感想へつながるのではないかな、と。
 OP映像は、どれもグリングリン動くものが多いので、取っ掛かりとしては最高なんじゃないでしょうか。やっぱり見ていて楽しいですしね。

2.得られた感情をラベリングする
 インプットを限定的にする必要はありません。寧ろ幅広い方がいいと思っています。
 例えば、日本刀をメインウェポンとするキャラクターの戦闘シーンを書きたいとして、日本刀のアクションシーンばかりをインプットすればいいのか? そんなことはありませんし、なんなら私はロボットアニメのアクションシーンを参考にして日本刀戦闘シーンを書いたこともありました。
 重要なのは、そのシーンを見た時にあなたがどういう感情を得たかを明確にしておくことです。
 戦闘シーンで得られる感情には、どんなものがあるのでしょうか? 爽快感、興奮、畏怖など、様々だと思います。極論、これらは戦闘シーンでなくても、得られる感情です。推理モノで犯人の所業が詳らかになり、狼狽える描写を見てスカッとした。恋愛モノで相手と別れる際、キャラクターが言い放った台詞が格好良すぎてテンションブチ上がった。現実世界で、自分のモラルからは考えられない他人の言動を目撃して「ないわー」とドン引きした。もう全部、インプット。参考資料です。
 是非、今日から上記を意識し、あなただけの激エモ参考資料引き出しを作成してみてください。

3.得物の構造を把握する
 とはいえ、エモさだけで戦闘シーンは乗り切れません。やはりキャラクターが使用するメインウェポンの構造把握は必要です。各部位の名称。そして、それぞれにどんな役割があるのか。間合いの距離は? 初撃から二撃目までにかかる時間は? なんだったら製造方法まで。
 注意点としては、この知識はあくまでも書き手側が得物造詣を深めるために用いる、ということです。
 銃の型番をバシバシ書いてみても、知らない単語が出てきた瞬間、読者の心のシャッターはガラガラピッシャンします。読者のことを「舐めている」というわけではなく、少しでも読書ストレスを軽減する方法があるのであれば採用しない手はないな、というのが持論です。どうしても記述したい場合は、元ネタで周知されている単語かどうか。もしくは、皆が理解しやすい単語に置き換えられないか確認してみてください。
 また人体の可動領域についても、確認しておくといいかと。特に人外の戦闘シーンを書く場合には、人間ではあり得ない動きを描写することで、「人外です」という説明文を挟まずとも読者に「ああ、これは人外なんだな」と強く印象づけることができます。
 この辺りのインプットは実写映像が一番向いていると思っています。映画などの本編映像よりは、バックステージというか、トレーニング映像の方ですね。


プロット編

 ある程度インプットが完了したら、続いてプロットを組み立てます。とはいえ私は、創作においてプロットを作れない人間なので、あくまでトレーニング用の簡易的な組立方法の紹介になります。
 ちなみに私は、この手法をスケベシーンに用いて練習していた時期があり、今では何もせずともスケベが書ける人間になりました。世界一いらない報告ですね。

1.インプットしたエモシーンを箇条書きにする
 インプット編で集めたエモを箇条書きにして用意します。後の工程のために、付箋にひとつひとつ書き出す、デジタルで書き出す、などの工夫をしておくと作業がしやすいです。
 先ほどエモシーンにラベリングをしているはずなので、爽快感をもたらすシーンの数が多ければスカッとする戦闘描写になりますし、ラベリングの配分量によってそれぞれ違った印象を与える戦闘シーンが生まれます。
 が、初めてのトレーニングの場合は、出し惜しみをしている場合じゃありません。全部です。とにかく集めてきたエモを全部、箇条書きにしてください。「このキャラはこんなこと言わないしなー」などの選り分けは必要ありません。別に、そのキャラに言わせる必要なんてないんですから。
 まずはそうやって、自分の手札を最強のエモエモの塊にしておきましょう。

2.箇条書きを並び替える
 1で用意した手札をパズルの要領で並び替え、シーンの流れを考えます。この時の心構えとして、用意した手札は一枚残らず使い切るようにしましょう。勿論、多少の手札改変は可能です。
 続いて、具体例を記しておきます。とりあえず「興奮」ラベルの手札を用意してみました。

 ア.倒置法な台詞
 イ.ガラス張りの建物、思いっきり壊れる
 ウ.傷口グリグリ
 エ.攻撃を受け流す
 オ.刀使っているのに拳が出る

 上記、ア〜オを並べ替えます。何だったら、同じシーンを複数回使用しても構いません。

 ① エ.攻撃を受け流す → 当たる寸前で避ける、に変更
 ② ア.倒置法な台詞
 ③ エ.攻撃を受け流す → 身体の力を抜く、に変更
 ④ ウ.傷口グリグリ
 ⑤ オ.刀使っているのに拳が出る
 ⑥ イ.ガラス張りの建物、思いっきり壊れる

 このプロットを受け、できあがったシーンが下記になります。

 次の攻撃。それは●●●からだった。真っ直ぐに切り込まれる。受け止めて流し、相手に隙が生まれた瞬間に切り捨てる。普通ならばそれが正解。
(普通ならば、な……!)
 受け止めるには重すぎる一撃に、○○○は咄嗟に上体を反らす。止まるわけにはいかない。流れるように相手の背後を取り、一閃。だが、これも止められる。埒が明かない。
「明確だろう? 結果は」
 答えずに○○○は走る。まだ一撃もその身に受けていない。拮抗する剣戟。それでも、
「君の素早さはその脚だけじゃない。柔軟な体幹によって支えられている」
 確かに●●●は、研究所にいた頃から○○○との接触を避けていた。だが、見ていなかったわけではない。
「やっぱり救護施設の襲撃は正解だったみたいだね。おかげで、」
 幾度目かの鍔迫り合い。またもや素早く離脱しようとした○○○だったが、それよりも●●●が力を抜く方が先だった。
「な……っ!?」
 傾く身体。伸ばされる腕。そして、
「ぐあっ!!」
 掴まれた腹。
 力をこめられる度に、にじむ赤。

「君を確実に仕留めることが出来る」
 必死に引き剥がそうとするが、びくともしない。片手でこの威力。ならばもう片方の手は? 顔を上げた瞬間、眼前に迫っていたのは黒い拳だ。
 ボグッ!
 鈍い音。脳が揺さぶられる。そのまま文字通り吹き飛ばされて、背後には硝子の壁。受け身を取る間もなかった。ガシャアン!と派手な音を立ててミュージアムの中へ。備え付けの椅子に激突しながら転がり続け、結局○○○は地に這いつくばった。

 上手いかどうかはさておき、それっぽいものがアウトプットできたんじゃないでしょうか。やったね。


アウトプット編

 最後は、出力する際の小技編です。これは書く人の文体によって別れるところだと思うので「取り入れられそうだなー」だったら使用する、レベルで構いません。
 私がよく使うものを紹介して、本Tipsを終えたいと思います。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!

1.体言止め
 
短めに文章を区切り、かつ体言止めにして機械的な印象を与えることでスピード感が出ます。そんな気がします。

 鈍い音。脳が揺さぶられる。そのまま文字通り吹き飛ばされて、背後には硝子の壁。受け身を取る間もなかった。

2.擬音をためらわない
 爆発したらドカーンッ!と鳴りますし、ビームが出たらビカーッ!って光ります。「これは全画面使いたい!」というシーンであれば、ためらわずに丸々一行消費しましょう。

 顔を上げた瞬間、眼前に迫っていたのは黒い拳だ。
 ボグッ!
 鈍い音。脳が揺さぶられる。そのまま文字通り吹き飛ばされて、背後には硝子の壁。受け身を取る間もなかった。ガシャアン!と派手な音を立ててミュージアムの中へ。

3.読点で止める
 なんだかまだ続きがあるみたいな印象を与えるというか、いい意味で引きが強い気がするので、よくやっちゃいます。ただ多用しすぎると、くどくなるのでさじ加減が重要です。

 傾く身体。伸ばされる腕。そして、
「ぐあっ!!」
 掴まれた腹。
 力をこめられる度に、にじむ赤。

4.めっちゃ繰り返す
 上記例には入っていませんでしたが、スピード感を出すために、同じ文章を繰り返すこともします。その際、繰り返す文章は短めの方が、それっぽくなります。

 それでも○○○は止まらない。走る。走る、走る。肉薄する。


 という感じで偉そうに講釈を垂れてきましたが、結局のところ私はアマチュアなので、これが正解ではないと思っています。もっと論理的な文章練習法が沢山あるはずですし。
 それでも本Tipsが誰かのお役に立って、そして推しCPの戦闘描写が生まれるならばウルトラハッピーなので、このnoteを備忘録として残しておきますね。

 それでは皆様、良き創作ライフを!


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