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第1章 自分をどこまで信用する?~認知エラーについて

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「A Little Dough」はこれから社会人になる人、あるいはこれからのライフデザインを考えている人達の参考になるような「パーソナル・ファイナンスの考え方」について記載してい…
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#パーソナルファイナンス

🅂1 自分をどこまで信用する?

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂1 ▽錯視というのがあります。下の図はミュラー・リヤーの錯視としてよく出てくるものです。私には上段の線が長く、下段が短く見えます。横線の長さは同じですが、両端についている短い斜線の効果で私のような錯覚に陥るというものです。 ノーベル経済学賞を受賞した認知心理学者で「ファスト&スロー」の著者であるダニエル・カーネマンは、この錯覚に逆らうために私たちにできることはたった一つしかない、といっています。 「羽根

🅂8 暗示にかけないで...(アンカリング)

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂8 ▽その昔「ピザって10回言って」という前振りの後に、肘を指して「これなーぁに?」というクイズがありました。私はヒューリスティクス依存症なので、迷わず「膝」と答えたものです。ほかにも「シャンデリアを10回言って」の後に、「毒リンゴを食べたのは?」と訊かれて「シンデレラ」と答えたり、この手のクイズにはなすすべもなく引っ掛かっていました。誰だって10回も繰り返せば、呪文を唱えたようなものです。呪文は心に引っ

🅂5 ヒューリスティックの先にあるもの

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂5 ▽システム1は、ほぼ努力せず、無意識のうちに、多くのことを、素早く直感的に判断します。より主観的で文脈を重視し、感情との結び付きが強いといわれます。このようなシステム1の判断根拠の源は、過去の経験則です。例えば、プロ棋士の羽生善治は「直感には邪念の入りようがない…(中略)迷ったら元に戻って直感に委ねることがよくある」といっています。プロ棋士の直感は、数えきれないほどの状況や戦術の記憶とその中から次の一

🅂4 「あてずっぽう」よりまし⁉

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂4 ▽このマガジンの最初に、ダニエル・カーネマンの二つのシステムの話を記載しましたが、私たちの脳の働きを理解するうえで、「二つ」に分けるという発想は、話をかなり分かりやすくしてくれると思います。例えば感情と理性、あるいは右脳と左脳、といった言葉が何気なく使われるのは、それが本当かどうかは別にして、専門家ではない私たちのアバウトな理解のための大いに役立つからだと思います。システム1とシステム2という名称を初

🅂2 サンクコストの誤謬(1)

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂2 ▽ファイナンスに関する認知エラー事例はたくさんありますが、最もポピュラーなものが、このサンクコスト(埋没費用)だと思います。埋没費用と書くとなんだか特殊な費用のような気がしますが、単に「過去に支払った費用で、今更返してもらえない費用」という意味でしかありません。「過去に支払った費用が、返してもらえない」というのは、普通に考えて当たり前の話ですが、これが何故認知エラーを起こすのでしょうか? ▽カーネマ