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第1章 自分をどこまで信用する?~認知エラーについて

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「A Little Dough」はこれから社会人になる人、あるいはこれからのライフデザインを考えている人達の参考になるような「パーソナル・ファイナンスの考え方」について記載してい…
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#プロスペクト理論

🅂1 自分をどこまで信用する?

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂1 ▽錯視というのがあります。下の図はミュラー・リヤーの錯視としてよく出てくるものです。私には上段の線が長く、下段が短く見えます。横線の長さは同じですが、両端についている短い斜線の効果で私のような錯覚に陥るというものです。 ノーベル経済学賞を受賞した認知心理学者で「ファスト&スロー」の著者であるダニエル・カーネマンは、この錯覚に逆らうために私たちにできることはたった一つしかない、といっています。 「羽根

🅂22 自分をどこまで信用する?(完)

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂22 1.自分をどこまで信用する? ▶第1章では「自分をどこまで信用する?」という問いのもとに、行動経済学で明らかになってきた私たちの自己認知力について取り上げてきました。物凄くシンプルな「サンクコスト」という概念さえ、私たちは違和感を覚えてしまいますが、さまざまな例をあげたヒューリスティクスやプロスペクト理論による損失回避性、そして時間選好など、日常的に私たちの判断に大きな影響を与えているにも関わらず、

🅂15 一度手にしたら離したくない!

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂15 ▽平成の初め頃、ベイエリアにあったイトキンやオンワードなどのアパレル会社の社員家族販売会。私が家族でない訳ですから想像はできましたが、いってみるととても社員の家族といった規模感ではなく、大変な混雑でした。僕は土地勘があったので車で行きましたが、田町の駅辺りからマイクロバスでピストン輸送しているらしく、何時も長蛇の列だったのを覚えています。 ▽やっとの思いで中に入ると、「さぁ、買ってくれ!」といわん

🅂3 サンクコストの誤謬(2)

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂3 ▽前回に引き続きサンクコストの誤謬を取り上げ、企業の投資を例にとって少し理解を深めたいと思います。 ▽サンクコストの誤謬とは、「取り返せない費用を取り返せると勘違いしてしまう」という場合と、「取り返せない費用に捕らわれて新たな収益機会を逃してしまう」場合とが考えられます。こうした場合に引き合いに出されるのが投資案件の継続検討のケースです。例えばあるプロジェクトに2年間で1億円の投資をした結果、1年目