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第1章 自分をどこまで信用する?~認知エラーについて

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「A Little Dough」はこれから社会人になる人、あるいはこれからのライフデザインを考えている人達の参考になるような「パーソナル・ファイナンスの考え方」について記載してい…
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#ヒューリスティクス

🅂1 自分をどこまで信用する?

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂1 ▽錯視というのがあります。下の図はミュラー・リヤーの錯視としてよく出てくるものです。私には上段の線が長く、下段が短く見えます。横線の長さは同じですが、両端についている短い斜線の効果で私のような錯覚に陥るというものです。 ノーベル経済学賞を受賞した認知心理学者で「ファスト&スロー」の著者であるダニエル・カーネマンは、この錯覚に逆らうために私たちにできることはたった一つしかない、といっています。 「羽根

🅂22 自分をどこまで信用する?(完)

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂22 1.自分をどこまで信用する? ▶第1章では「自分をどこまで信用する?」という問いのもとに、行動経済学で明らかになってきた私たちの自己認知力について取り上げてきました。物凄くシンプルな「サンクコスト」という概念さえ、私たちは違和感を覚えてしまいますが、さまざまな例をあげたヒューリスティクスやプロスペクト理論による損失回避性、そして時間選好など、日常的に私たちの判断に大きな影響を与えているにも関わらず、

🅂7 節操のない信頼感...⁉

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂7 ▽私たちが意思決定をしようとするときには、なんらかの情報が必要になります。与えられた課題に対して100%マッチしそうな情報もあれば、ヒューリスティクスで使うステレオタイプの様に、個別の事象については半信半疑くらいに考えるべき情報もあります。どんな情報であれ、なければ「あてずっぽう」すらできないのですから、とにかく脳は情報を欲しがるということになります。そしてシステム1はせっかちでスピードが命ですから、

🅂6 「代表性」という罠...

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂6 ▽ヒューリスティックは「取り敢えず」的な発想で、無意識のうちについつい多用しているわけですが、思わぬ罠も待っています。というより用心しないとその先は罠だらけ、って感じもします。タイトルにある「代表性」ヒューリスティックとは、対象の属性情報などから典型的なパターンやステレオタイプに置き換えて判断することを言います。例えば初対面の方を紹介された時に「○○銀行の鈴木です」といわれたら、漠然と「まじめできっち

🅂5 ヒューリスティックの先にあるもの

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂5 ▽システム1は、ほぼ努力せず、無意識のうちに、多くのことを、素早く直感的に判断します。より主観的で文脈を重視し、感情との結び付きが強いといわれます。このようなシステム1の判断根拠の源は、過去の経験則です。例えば、プロ棋士の羽生善治は「直感には邪念の入りようがない…(中略)迷ったら元に戻って直感に委ねることがよくある」といっています。プロ棋士の直感は、数えきれないほどの状況や戦術の記憶とその中から次の一

🅂4 「あてずっぽう」よりまし⁉

「A little dough」 第1章 自分をどこまで信用する? 🅂4 ▽このマガジンの最初に、ダニエル・カーネマンの二つのシステムの話を記載しましたが、私たちの脳の働きを理解するうえで、「二つ」に分けるという発想は、話をかなり分かりやすくしてくれると思います。例えば感情と理性、あるいは右脳と左脳、といった言葉が何気なく使われるのは、それが本当かどうかは別にして、専門家ではない私たちのアバウトな理解のための大いに役立つからだと思います。システム1とシステム2という名称を初