アセチレン灯の話

 ある昼下がり、人込みを歩いていると山高帽子を被ったアセチレン灯が歩いているのをみつけた。

  『そんなにおしゃれをして一体どこにいくんだい』私がそう聞くと、アセチレン灯はぐっと弓なりに反ったと思うと、ダーッとすさまじい速さで走り出した。 

 私は颯爽とオートモーヴィルにまたがると、アセチレン灯を追いかけ始めた。

 私たちは跨線橋を越えた。放水路を走り抜けた。モニュメントの前を通りすぎた。トンネルをくぐった。そして市立公園のなかに入ったところでアセチレン灯の姿はどこにも見えなくなってしまった。

空にはボール紙に穴を開けたようなお星さまがキラキラと瞬いていました。

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