車に押し込まれた話

 私がストリートを歩いていると、突然、黒いフォードが走ってきて、さっと首根っこを捕まえて連れ去られてしまった。それを見たポリスが6連発でフォードを撃つと、パチンという音がして大きな破れたゴム風船だけがストリートに残された。
 通行人がゴム風船の残骸の近くにおそるおそる近づいたが、そこから行進曲と共にフォードの広告がたくさん舞い上がったので、何だコマーシャルだったのかと、みなが胸を撫で下ろした。
 私は六連発が当たる直前にとっさに押し込まれたマンホールの下で、痛む背中をさすりながら、私を残してお月さまの仲間逹が地下水道を走り去っていくのを、確かにはっきりと見ていた。

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