ある晩の出来事

 ある晩の出来事夜の酒場で、彼はチョコレットを口に放り込むと、言った。 

 『こんな晩に』 

 『晩がどうしたね』

 私が怪訝そうにいうと、友人はポケットから鉛筆を取りだし、ナプキンに鋭角のある三角形を書き始めた。

『そんなものをどうするんだい』

 『こうするのさ』

 三角形の鋭角に彼の人差し指が触れたとき、パチン、と音がすると、鉛筆とナプキンだけを残して、彼の姿が消えてしまった。 驚いた私が給仕を呼ぼうと立ち上がったところで、三角形の鋭角が風に乗って舞い上がると私に向かってきて、パチン!

床には、二枚の破れたゴム風船だけが残った。

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