水に溶けると温度が下がる現象について

化学反応すると熱が発生するイメージがありますが、逆に激しく熱を奪う反応があります。

たとえば、食塩を水に溶かすと水温が下がること、不思議ですよね?
しかし、すべての物質がそうではなく、水に溶かすと発熱する物質も存在します。
どうして、こんな違いが起こるのでしょう?

今日は、一つの動画を紹介しつつ、そんな話をしてみます。

今回紹介するのは水酸化バリウム8水和物から解離した水分子に塩化アンモニウムが溶解することで水酸化バリウムと塩化アンモニウムが反応し、急激に温度が下がる反応です。
(呪文、、、)

この動画では、吸熱反応で氷点下にまで冷却したビーカーを、湿らせた木の板の上におき、ビーカーと木の板が凍結する様子をデモンストレーションしています。

今回紹介するのは、水酸化バリウム8水和物から解離した水分子に塩化アンモニウムが溶解することで水酸化バリウムと塩化アンモニウムが反応し、急激に温度が下がる反応です。

なんと、その温度変化は22℃から-25℃!

びっくり仰天です。。。Σ( ̄ロ ̄lll)

(あ、温度が下がることを視覚的に表現する手段として、温度計ではなく湿らせた木の板を使うことが面白いと思いました。)

ここで、ちょっと動画から離れて、食塩を水に溶かす話をしてみます。

1.食塩が水に溶けるときの反応
NaClが水に溶けるとき、次の反応が起きます。

①NaとClの結合が切れる
②Na+とCl-が水和(水分子とNa+とCl-が電気的に結びついて液中に均一に拡散すること。溶解現象のこと)する

NaとClの結合が切れる反応は吸熱反応です。
液体が蒸発するときに、多くの蒸発エネルギーを必要とするように、結合が切れるためには、多くの熱エネルギーを必要とします。
結合が切れてNa+とCl-に分かれると、この二種類のイオンには水が水和しますが、この反応は発熱反応です。
水分子はO分子がある場所がマイナスの電荷を、H分子がある方がプラスの電荷を帯びており、Na+とOとCl-とHの間には電気的な結合ができてしまうためです。
(ちなみに、NaとClの結合を切ってしまうのも、このOとHの電荷の力によります)

①と②で奪われる/発生する熱は物質によって違います。
食塩の溶解熱がマイナスなのは、①で奪われる熱が、②で発生する熱よりも大きいためです。
溶解熱がプラスの物質は、その逆になります。

2.結晶水の話
もう一つ、溶解熱に関係のある要素として、結晶水の話を紹介させていただきます。
世の中にある物質には、結晶水といわれる水を含んでいる物質が存在します。
この結晶水というものは、物質の結晶中に存在するのですが、結晶を構成する物質とは化学結合をしていないと考えられている水分子のことです。
結晶水は結晶水中の原子やイオンと水和している状態を作っています。
(結晶水を含む物質に熱をかけてやることなどにより、結晶水を引き抜くことができますが、これは吸熱反応になります。)

結晶水を含む物質は、最初から水和しているわけですから、水に溶かしたときに発生する水和熱が小さくなります。
こうなると、結合が切れて奪われる熱が、水和して発生する熱を上回りやすくなります。

なので例えば、炭酸ナトリウム10水和物(炭酸ナトリウム1分子につき、結晶水10個)を水に溶かすと、溶解熱はマイナスになります!
『結晶水がたくさんくっついている物質は、溶解熱がマイナスになりやすい』と考えてしまっても大丈夫でしょう!

ちなみに、一般的な市販の急速冷却剤は、使用時に硝酸アンモニウム(NH4NO3)と水を混ぜ合わせるものだそうです!
ここまで説明した結晶水が付いていないのがちょっと残念です。

大変話が長くなってしまいましたが、溶解熱の話はこんなところです。
これだけウンチクを詰め込んでおけば、水に何かを溶かす時に温度が上がったり下がったりしても、割とするりと受け入れられるのではないのでしょうか?
ここまで読んでから、先ほどの動画をもう一度見ると、見え方も違ってくるのではないのでしょうか?



複雑で、長い話になってしまいました。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!

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