ほうき星と競争をした話

 ある晩のこと、交差点で車を止めると、車の扉を開けて飛び込んで来るものがあった。彼はほうき星に財布をとられて追いかけているのだ、と言った。逃げたほうき星を追うように頼まれた私は、アクセルを踏み込み、彼の言うとおりに進路を選んではしると、やがて光るものが見え始め、とうとうほうき星に追い付いた。
 エンジンがひときわ大きな音を立てた。ほうき星が電信柱をかすめて火花を散らした。
 曲がり角を曲がるところで、ほうき星と私たちは接触し、もつれ合いながら空き地へと突っ込んだ。騒ぎを聞き付けたポリスがきたが、その頃には彼もほうき星も姿を消してしまっていた。
『ははあ、してやられましたな』
 見知ったポリスが私に意味ありげな笑いを浮かべながらシガレットを一本さしだした。それを受け取りながら、どうやらしてやられたという気分になってしまった。

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