万華鏡の話

 ガヤガヤと賑やかいステーションの待合室に座っていると、万華鏡がひとつベンチの上に置き去りにされているのを見つけた。
私は何気なく、それを手に取り中を覗き込むと、フランス語の書いたラベルカードがくるくるとたくさん鏡に写っていた。

オ・ルヴォワール!

 私がその内の一つを読み上げると、急に悲しい気分になった。私が万華鏡から顔を上げると、ホームの中から人が消え失せていた。駅にはゴトンゴトンと無人の列車が入ってきましたとさ。

 トンコロン、トンコロン、トンコロン。

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