らくがき (前編)
帰宅後、息子が、
少しニヤニヤしながら学校での出来事を話し始めた。
「今日さ、ちょっとした大事件があってさぁ。
2時間目と3時間目の業間休みに、
校長室で話し合いになっちゃってさぁ。」
”!!”
息子の学校では、往々にして
”校長室での話し合い”=先生に怒られた、
ということなのだが、
先に確認した連絡帳に、
担任の先生から
”本日、電話させていただきます”と書かれていたのは、
コレかぁ・・・?
と、内心思いつつ、
素知らぬ顔で
「そうなの?何があったの?」
と言うと、
息子は一瞬まじめな顔になり、
暫し考えて、
そしてためらった。
うーーん、これは
何かやってしまったかな。
でも、聞かないことには状況が分からない。
息子は割と、状況をきちんと理解していて、
説明してくれることの方が多いので、
「いいよ、怒らないから言ってごらん。」
と話を促した。
「・・・友達がね、
俺の筆箱に落書きをしたんだけど、」
(んん?君がやってしまった訳ではないのか?)
「それが、先生に知られちゃって、
怒られちゃって。
それで、校長室で話し合いになった。
次の授業も、ちょっと始まっちゃった。」
聞けば、同じクラスのお友達3人が、
息子の筆箱の内側に、
油性ペンで、落書きをしたそう。
2人は、息子の名前を書き、
もう一人は、”う〇ち”と書いた。
「ん?それは、勝手に書かれちゃったの?」
「違うよ!俺がいいって言ったの。」
そもそも、息子の筆箱の内側は、
下の娘が、黒マジックで散々落書きをしており(汗)
そりゃあ、お世辞にも綺麗とは言えない状態で
さらにそこに書いたところで
あんまり変わらないと思ったらしく、
「ここに書いていい?」と聞かれて、
息子はのんきに
「いいよー」と答えたらしい。
(そりゃ、持ち主がいいと言えば、
書くよね。)
ところが、
それを別のお友達が見ていて
「えー、人の筆箱に落書きなんてしたら
ダメなんじゃないの~!!」
と大きな声で言ったもんだから、
先生が気が付いて・・・
というのが下りのようだった。
うーん、まぁ、なんというか。
そのお友達3人とも知っているので、
それぞれのやり取りも想像できてしまう。
面子的にも、
息子の話の感じ的にも、
誰も悪気はないし、
息子への悪意もない。
息子を含めた4人で、
ちょっと楽しくなって書いちゃった、程度だったのだろう。
(息子に至っては、
”うん〇と書かれて、ちょっと面白い!”
くらいに思っていたに違いない。)
小学二年生。
まだまだ全力で子供。
どこか間抜けで、可笑しい。
やってることが、くだらなくて、愛らしい。
私は、笑いをこらえながら
「で、あなたはそれは嫌だったの?」
と聞くと、
「ううん、全然。嫌じゃなかったよ。
だから、いいよーって言ったんだよ!
だけどさ、
校長室で話し合いになっちゃってさ、、、
そしたら、
〇〇ちゃん泣いちゃってさ・・・」
あぁ~。。。
そういうことか。
うううーん。
構造的に、息子は”被害者”で、
らくがきをした子供たちは”加害者”と位置付けられた、
ような気がした。
先生からどの程度の叱責があったかは分からないが、
”同じスタンスでふざけていた子たち”が
らくがき=してはいけないこと!の
一般的な線引きの前に、
強制的に、その立場を隔てられてしまったのだ。
うーーん。
息子の話を聞き終えて、出かける準備をしながら
私は首をかしげた。
ちょっと、やりすぎじゃない??
そもそも、話し合いってなんだろう?
持ち主が許可していても、
そのらくがきは、
”やったらダメなこと”だったのか?
百歩譲って、
”人の「持ち物」に書くことはダメ”だったとしても
その場で、教室で、
注意すれば済む話だったんじゃないのかなぁ?
わざわざ校長室で、
担任の先生以外も含めて話をする意味は、
一体どこにあったのだろう?
なんで、学校は
そんなにことを
”大ごと”にしたがっているんだろう・・・?
やったこと自体は、
正直たいしたことじゃない。
なのに、
そこに下手に大人が介入したことによって、
”いじめの一歩手前!”みたいな状況に
すり替得られてしまったように感じられる。
私には、”落書きをされた”という事実よりも、
その後の学校側の対応の方が、
不自然で
違和感でしかなかった。
そう思っているうちに、
一人の子のママから、謝罪の連絡がきた。
申し訳ない、
すごく反省している、と。
え、え?
ちょっと待って。
この流れで行くと、
各家庭に学校から連絡がいく
→お友達の親から連絡が来る、の、かも。
これは困った。
お友達に悪意はないのに、
一緒にふざけていただけの息子に
謝ってもらうことの気まずさ。
学校から連絡を受けて
先ほどの対立(させられた)構図を伝えられた
親御さんの心境、
そして、
逆に泣くほど自分を責めてしまったお友達への
申し訳なさ。
これらを考えると、
むしろ謝りたいのはこっちだけどなぁ。
う、う、うぅーーん。。。
スマホを前にして、
私は頭を抱えてしまった。
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