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“学会員”インタビュー⑫ArisakaPさん

天海春香学会Vol.2出版記念企画として、「学会員」のみなさんへインタビューを行うシリーズ企画。

第12回は、ArisakaPさんへのインタビューをお届けいたします。


インタビュー:そにっぴー/スタントン

文:スタントン

———

真摯なところが

——宜しくお願いいたします。

ArisakaP:
お願いします。

——早速お伺いしますが、天海春香の魅力はなんでしょうか。

ArisakaP:
うーん、初っ端から難しい質問がきますね(笑)。最近思うのは、彼女の真面目なところですね。彼女は過度に自分のドジを仕事上の売りにすることを忌避するきらいがあるので、そういった側面でも仕事に真摯に向き合っているなと感じます。

——ありがとうございます。そこが、私たちが「春香ってあざといよね」と言われた時に違和感を覚える理由かもしれませんね。転ぶ描写に目が行きがちですが、基本的には転ばないように気を付けていますし。

ArisakaP:
そうだと思います。基本的には、彼女自身はドジに気を付けていますよね。

人となりの理解

——Arisakaさんは春香学会Vol.1にもご参加いただいています。今回、引き続きご参加いただいたきっかけはなんでしょうか。

ArisakaP:
まだまだしゃべりたいから、というのはありますね。Vol.1では2のことしかしゃべってなかったので、僕の"入り口"であるSPのことも書きたいなという考えがありました。まあ、といってもSPのなかでもニッチなところを攻めすぎちゃったなとは思います(笑)。一種のプロモーションにでもなればいいですね。

——前回と今回、一貫してゲーム内のコミュ、いわば"原典"に忠実な考察をされています。何かお考えはありますか。

ArisakaP:
やっぱり、いちばん資料として確実なものだと思うからです。彼女自身の話したことがコミュのなかに表れているじゃないですか。何といいますか、発言内容の正確性、確実さに長けると思うんですよ。そこを追っていくことで、彼女の人となりを理解することができるんじゃないかな、と思って最近活動しています。

——なるべく、客観的に資料を読み解こうとされていますね。

ArisakaP:
今回の学会誌ですと、現実の要素を用いてらした方が多いと思いました。それこそ、そうP@765AS春香派さんの"昭和アイドル"とか、ラにょッティさんの文章スタントンさんの文章も現実のアイドルを引き合いに出して議論されていましたし、なかやまPさんの"本棚"も現実の参考書と照らし合わせて論じられていました。それって、彼女を劇中世界から現実世界へ引っ張り出して議論するってことじゃないかと思うんです。僕はあまりそういうことをしないので新鮮だと感じました。天海春香を一人の人間として考えるとするならば、現実の側に引っ張り出して考えるほうが適切ですし、一方の僕はあくまで天海春香を(ゲーム内の)キャラクターとして見ているのかな、と気づかされました。

——興味深い着眼点だと思います。人によっては、「キャラクター」という言葉を使いたくない、という方もいらっしゃいますし。

ArisakaP:
僕もどちらかといえばそのタイプですね。コミュを資料として俯瞰するときの自分と、ゲームを実際にプレイするときの自分とでは人格が違うな、と最近思うようになりました。


チャンスコミュ

——寄稿いただいた文章についてお伺いいたします。今回はSPのチャンスコミュを題材にされました。いわゆる無印系のコミュだと「ある日の風景」や「季節のお仕事」などもありますが、そうしたコミュとチャンスコミュとでどのような違いないしは共通点がありますか。

ArisakaP:
お話の雰囲気に違いはないと思いますが、文中でも書かせていただいたようにシステムが全く違っています。例えばある日の風景コミュであれば、2個の選択肢でどっちもパーフェクトを取れば最終的にパーフェクトで、どちらもバッドならバッド、というように進んでいきますが、チャンスコミュはそうじゃないんです。最後の選択肢だけが結果の合否を判定していて、最初にいい選択肢を選んでいても、最後を外してしまうとバッドになるという特徴がありまして、完全に運に任せているシビアな難しさがあります。

——文章中でも書かれていたように、チャンスコミュの発生頻度は低めだと思います。そのなかで網羅的に資料を観るのは難しかったのではないでしょうか。

ArisakaP:
正直なところ、めちゃくちゃ面倒くさかったです。確実なデータがあるわけではないので文章には載せなかったのですが、テンションが低い時ほどチャンスコミュの発生率が上がる、という定説がありまして——実際僕もそう思いましたが——テンションを一旦下げて、ひたすらリセットを繰り返す作業を延々続けていましたよ(笑)。単純に1コミュあたり5回見なくてはいけなくて、それを各ランク2回ずつやるので大変でした。

——いま手元にファミ通の「プロデューサーズガイド」があるのですが、チャンスコミュについて記載があるものの少ないのですよね。知っている人が少し振り返る分にはいいのですが、詳細を確認するとなるとやはりゲームをやるしかなくなります。

ArisakaP:
大まかで希釈された内容しか(ガイドには)載っていないですものね。ただ、チャンスコミュって名前がとても質素な分、「どのコミュがどれだっけ」っていう対応表として使うなら(プロデューサーズガイドも)いいかもしれません。

——チャンスコミュについて、文中では各ランク1つずつ紹介されていました。お好きなチャンスコミュはありますか。

ArisakaP:
これは難しいですね(笑)。好きなのどれかな……ちょっと待ってくださいね。……コミュの内容をEvernoteに書き起こしているので読んでいるのですが……えー、やっぱり「チャンス2 B」は——文章でも使わせていただいたんですけれども——幼少期の遊びでも「アイドルになりたい」っていう願いを込めていたエピソードが語られているんですね。それで、そのエピソードを話したあとに、それを再現する形で遊ぶんですけれど、今度は「トップアイドルになりたい」っていう風に願っているんです。幼少期の遊びでも、16歳でも、(アイドルに)本気で向き合う春香の純真さが味わえる良いコミュだなって思いました。

ランク B チャンス2:
DVD特典の撮影が難航していた。監督から子供のような笑顔を求められたが、春香にはそれができないのだ。そこで、ジャンケンすごろくゲームをして童心に返る作戦に出た。春香が勝てれば、最高の笑顔が見られるはずだ。

株式会社エンターブレイン『アイドルマスターSP パーフェクトサン/ワンダリングスター/ミッシングムーン プロデューサーズガイド』、2009、P87より

春香とくっつくべきか、距離を置くべきか。

ArisakaP:
チャンスコミュって僕の中で大きく2つに分けているんですよ。「お仕事系」と「Pドル系」みたいな。「Pドル系」っていうのが、言ってしまえば「いい感じな雰囲気になるコミュ」なんですけれども、「チャンス1 B」もその「Pドル系コミュ」でいちゃいちゃコミュです。最初に春香が明言しちゃうんですよね、「今日はデートなんです」って。

ランクB チャンス1:
オフの日、春香に誘われて遊園地にやって来た。春香は、日ごろお世話になっているプロデューサーに、楽しい一日をプレゼントしたかったのだ。だが、これからというときに、ファンに見つかってしまう。無事に逃げ切ることができるか?


株式会社エンターブレイン『アイドルマスターSP パーフェクトサン/ワンダリングスター/ミッシングムーン プロデューサーズガイド』、2009、P87より

——それでは「Pドル」の話が出たので……なかなか人を選ぶ質問なのですが、天海春香とプロデューサーってくっつくべきでしょうか。それとも、距離を置くべきでしょうか。

ArisakaP:
うーん……ちょっとこれは難しいですね(笑)。どう言えばいいんだろうな……。


~長考~


ArisakaP:
うーん、うーん……端的に言ってしまえば、僕は「くっつくのはアリ」だと考えている派です。

——くっつくのはアリ派、なのですね。

ArisakaP:
どちらかといえば。……しかし難しいなあ。"ドームエンド"について考える人って結構多いと思うんですけれど、僕はあまり考えていなかったので。ただ、僕はあれを今生の別れだとは思っていなくて、いつか再会するだろうって楽観的な見方をしています。なので一連の流れを「悲劇」だと受け止め切れていないんですね。そういう意味では「くっつくべき」と考えているんです。

——「最終的にくっつく」からドームエンドは今生の別れではない、ゆえにくっつくのはアリ派、といお考えなのですね。

ArisakaP:
そういう帰結になっていきますよね。僕がドームTrueの選択肢のなかで一番好きなのが、「時間を置きたいだけだ」なのですが、一回離れて、冷静になって考えよう、みたいな会話があるんです。
……まあ、僕の考えというよりは劇中Pがこう言ってる、っていういつもの流れになっちゃうんですけれど(笑)。単なる仕事仲間だったわけだし、それ以上の関係になるのがいいかどうかは時間をおいて考えよう、っていうのが僕の考えることです。

ArisakaP:
ラにょッティさん(の文章)だったと思うのですが、スキャンダルになってしまったらそれこそ彼女を苦しめることになってしまうという意見を見て腑に落ちました。その意見は僕の「時間を置きたい」というところと合っていて共感できるなと思いました。……でも、あんまりドームエンドについて考えたことはなかったですね。

——春香Pのなかで、どうしてもドームエンドが大きくなりすぎている側面はあるかもしれませんね。

ArisakaP:
そうですね。あまり、終わりのことばかり考えてしまうのもよくないのかなあと、どちらかというと、活動中のことにフィーチャーしたいなと思います。天海春香がどういう人なのかを考えておかないと、夢の大橋での春香に対してもうまくアプローチできないんじゃないかなと。

——文章中に載せきれなかったものはなにかありますか。

ArisakaP:
そもそも(チャンスコミュを)半分しか伝えられていないんですね。全部載せてしまうと冗長になってしまうので避けたのですが、ぜひ残りの部分はみなさんに実際に見てほしいと思います。どうしても(同ランクの)2つのコミュを見比べて掲載を決める過程で主観が入ってきてしまいましたから……


他作品について

——学会誌の他の作品で気になったものや面白かったものは何かありますか。

ArisakaP:
うーん、これだけ(作品が)あると選ぶの難しいですね。印象的なのが、春香P以外の方からの参加者が(Vol.1の時と比べて)大幅に増えましたよね。れぽてんさんとか、ゆきぽくんとか。


ArisakaP:
僕も、MRライブで他の子の主演回に行って、そこで新鮮な視点を得ることによって春香に今までとは違ったアプローチができるようになった経験があったので、外部からの意見が入ることは天海春香どっぷりの人間からしたら新鮮でした。
他だと、フブキさんの「理想を瓶詰め」は最後ゾクっときました。オチが非常によかったです。あとはゆきますくさんの文量がすごいですよね。それでいて中身が非常にしっかりしていて読み応えがありました。あとはじんさんのハルカニウムの話。これは……なんて言ったらいいんでしょう。悪い意味ではないんですけど、「何の話を読んでるんだろう」って思いながら読んでました。スケールが大きいですよね。


ーーイラストはどうでしたか。

ArisakaP:
どれを……というのは本当に難しいですが、ななみんさんのイラストに関しては、制作の過程をツイッターで拝見していたので、完成品を見たときに「いいなあ!」と思いましたね。かっこいい春香もかわいい春香も居ますが、Vol.1の時にどなたかが仰っていたんですけれど、これだけイラストがあってかぶらないのがすごいですよね。


次回作は……

——もし天海春香学会Vol.3に参加されるとしたら、次はどのような作品を作りたいですか。

ArisakaP:
これは……どうしようかなと考えているんですが、うっすらとテーマが決まっています。いままでは一つの作品に絞って検討する形をとっていたのですが、次回は作品ごとの対比を交えた構成にしようかなとは考えています。


目標

——あなたにとって、天海春香とは。

ArisakaP:
うーん……これは前回書面でお答えさせていただいたときも結構お時間いただいたので、難しい質問ですよね。



~長考~



ArisakaP:
……「目標」なのかな?とうっすら思いました。

——目標。

ArisakaP:
なんだろうな、言葉にするのが難しい。彼女のことをもっと知りたいって思って、コミュを観たりCDを聞いたりしているんですけど、考察をしているオタクとしての人格であるときも、春香っていうのは理解したい、しなきゃいけない目標として存在していて、そこに向かって活動しているんですけれど、それに加えて、人に見える範囲で彼女に恥じない人間であろうとする意識は多少なりともあるので、彼女を道徳的な指標、自分を律してくれる存在として見ている気がします。だから、目標っていう言葉が一番近いのかな。

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春香との向き合い方について、じっくりと語っていただいたインタビューでした。

天海春香学会Vol.2は現在完売となっています。

再販・増刷時にはツイッターにてアナウンスいたしますので、今しばらくお待ちくださいませ。


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