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天海春香学会Vol.4サンプル「担当の条件~春香とエレナと、時々あの子~」

掲載:天海春香学会Vol.4
(頒布ページはこちら
著者:そにっぴー
※noteに投稿するにあたり、一部学会誌と体裁が異なりますのでご了承ください。

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 本稿では特集テーマ“Haruka with...”にちなみ、私が担当しているアイドルたち(+α)との歩みについて、「担当の条件」という観点から書き連ねていきたい。自分語りが多く大変恐縮なのだが、しばしお付き合い願いたい。


 皆さんは、アイドルを担当するにあたっての「条件」を自らに課しているだろうか。もちろん、必ず厳格な条件を課さなければならないわけではない。ましてや他人に条件を押し付けるのは論外だ。とはいえ、何かしら自分に条件を課して担当を増減している、という方は一定数いらっしゃるだろう。私はというと、そもそも最初は担当アイドルを複数受け持つという発想が無かった

 私がアイマスにハマったのは2017年の夏頃で、偶然出会ったニコマスのBGMに使われていた美希の『relations』[1]に惹かれたのが始まりだった。その後、朝から晩までニコマスを見る自堕落な生活が始まり、同時期にちょうどよくリリースされたミリシタも少しずつ進めていた。ミリシタは一瞬で飽きる可能性もあったのだが、デフォルトで収録されていた『Marionetteは眠らない』が刺さったので続けられていた。
 さて、ここまでの経緯をまとめると、『relations』と『Marionetteは眠らない』が好き……って、お前美希Pになるのか? といった具合である。実際私はちょっとレトロなポップスやバラードが好きなので、当時は美希や千早の曲をめちゃくちゃ聴いていた。しかし、そうはならなかった。もちろん美希・千早は当時から今までとても好きだ。キャラクター性も持ち曲も、大好きだ。しかし、それはあくまで「ファン目線」なのだ。大好きではあるけれど、それ以上でもそれ以下でもない。
 私が担当を名乗るようになったのは、結局、天海春香だった。春香に惹かれた大まかなきっかけは、当時ニコマスにハマっていた私が主に手を出していたノベマスだ。ノベマスにも色々あるが、春香が扱いやすいギャグ要員として立ち回っているものが多く存在したのだ(例:簀巻きP作「春香さんまっしぐら!」)[2]。元々春香のような容姿の子が好きだったというのもあり、様々な場面でひょうきんな姿を見せる春香に次第に惹かれていった。
 
しかし……「ニコマスの春香」を追い求めていると、避けては通れないものがある。春香のドームEDだ。無印において、春香の「もっと近くに置いてほしい」という願いを、無下にも、しかし「アイドルとしての栄光をスキャンダルで台無しにしたくない」という正当な理由で拒否するトゥルーED。私には、それが耐えられなかった。なぜ、一番良い結果を残したEDで、いくら正しいとはいえ、春香の真剣な願いを却下しなければならないのか。私は、その罪悪感に耐えられなかった。その後Xbox版やアーケードで実際にドームEDにたどり着いてみたが、罪悪感は増す一方だった。
 このとき、春香に対して「この子をなんとかしたい。他でもない『私が』なんとかしたい。そしてこの子について語り尽くしたい」という思いを抱いていた。言い換えると「主体性」となるのだろうか。ファン目線でどんなに他の子を好きになっても抱けない、特別な感覚だった。ここまで書けばお察しいただけると思うが、この「主体性」こそが、私が自分に課している「担当の条件」である。すなわち、「主体的にその子に関わり、周囲に何かを発信したい」子であれば担当になりうる、ということだ。
 とはいえ、その条件を自覚したのはずっと後になってからである。強いて言うなら「新参の自分もさすがに春香Pを名乗っていいかな」と思ったきっかけはある。2018年に行われたMR ST@GEの春香主演回で、『乙女よ大志を抱け!』に初めてコールを入れられたときだ。もちろん、そこまで深く考えていたわけではなかったが。

 さて、とにかく寝ても覚めても天海春香のことしか考えられなくなった私は、ニコマスの影響もあり、いわゆる「765AS」[3]をメインに活動し始めた。当時活動の場が限られていたASを尻目に、ミリオンライブには続々出番があった。ミリオンにも春香はいるので追ってはいたが、同時に妬ましい気持ちもあった(今は違うことを申し添える)。

 そんな最中、大事件が起きた。ミリオン6thライブツアー仙台公演でCleaskyが『笑って!』をカバーしたのだ。なぜ大事件なのか。前述した「他でもない『私が』(春香を)なんとかしたい」という思いについて、ひとつの回答として神聖視していたのが『笑って!』だったからだ。この曲が最初に収録されたCD『MASTER SPECIAL SPRING』にはドラマパートも収録されていた。そのドラマパートや、そこからシームレスに繋がる『笑って!』は「ドームEDの先の春香は苦しみながらではなく、笑顔で待ってくれている」とも解釈できる内容であり、そのことが当時の私を救っていた。それに加え、『笑って!』がアイマス2以前の「最終回」として設計された大事な曲であること[4]、またそういった背景抜きにしても辛いときに歌詞に励まされたこともあり、私の中で『笑って!』は何にも代えられない神聖不可侵な楽曲となっていた。
 『笑って!』は自分にとって救いそのもので、ゆえに春香以外の人が歌うなんて一切考えたことがなかった。だから、Cleaskyがこの曲を歌った後に酷く混乱してしまった。なぜ、よりによって私の人生の支えであるこの曲をカバーされなければならないのだ、と。急に家に土足で踏み入られた気分だった。
 しかし、めちゃくちゃに怒っていたわけでもない。Cleaskyのパフォーマンス自体は素晴らしく、またCleaskyのドラマパートを踏まえると『笑って!』の選曲自体は納得のゆくものだったからだ。結局Cleaskyを拒否するか受け入れるかの選択を迫られたわけだが、そんな素敵なユニットを嫌いになることもできず、受け入れることにした。私のP人生の大きな転換点であった。
 そこからは逆にCleaskyのことを大好きになり、それに併せてミリオンのことも少しずつ素直に受け入れられるようになっていった。そうなると当然、Cleaskyのメンバーである美也とエレナを次第に好きになっていく。
 美也のことは大好きだ。親近感を覚えてしまうふんわりとした外見が好きだし、『ふわりずむ』のような心にじんわり響く曲から『初恋バタフライ』のようにエキゾチックな曲まで歌いこなす懐の深さにはいつも驚かされる。しかし、これはファン目線の話だ。

 結果から言えば、私が担当に加えたのはエレナだった。ただし、実際に担当に加えるまではそれなりに長い時間を要した。

 2019年、前述のミリオン6thが終わったあとに私はエレナの中の人である角元明日香さんのファンになり、個人の活動を追うようになった。それに付随するように、エレナのことも少しずつ知っていき、好きになっていった。エレナと角元さんのどっちが先、というのは無く、車軸の両輪だったように思える。
 エレナは一見すると、明るい能天気サンバガールといった印象である。しかし、深く見ていくとそれだけではエレナを説明できないことがわかる。
 エレナは日本人の父とブラジル人の母を持ち、幼い頃にブラジルから日本にやって来ている。最初は言語の壁があってなかなか友達ができず、寂しい思いをしていた。それでもめげずにたくさん友達を作っていったエレナをプロデューサーは「えらかったな」と褒めている[5]。そんなプロデューサーはエレナのことを『寂しさを知っているからこそ、みんなには心から笑ってほしいと願う……エレナはそういう子だ』[6]と評した。
 ただ明るいだけでなく、寂しさを知っているからこそ、その明るさがひときわ輝く。このエピソードを知ったことで、私の中でエレナの解像度がぐっと上がった。
 また、そんなエレナが歌う曲は、しばしば私の心を救ってくれた。私には、エレナの曲を土台に確立した私なりのエレナ像がある。それは「手を引いてステージの明かりの下まで連れて行ってくれる子」[7]というものだ。今思うと、ずっと担当していた春香と少し似ているところがある。春香はどちらかというと隣にそっと寄り添ってくれるイメージだが、いずれにせよ塞ぎこむ心を温めてくれる存在であることに変わりはない。だから春香もエレナも、私はよく同じフレーズで形容している。「太陽のようだ」と。

 さて、次第にエレナへの愛が高まっていくにつれて、私は思い悩むようになった。「エレナだけは特別だ、しかし担当と呼ぶことはできるのだろうか」と。

 これは2021年の私のポスト[8]である。私は結局エレナに対して、他の子よりも特別に感じているけれど、担当とは呼べない……という曖昧な態度をとり続けることになった。
 状況を打破したきっかけのひとつは、前述した「担当の条件」の熟考だった。ある時、私は改めて「なぜ私は担当を増やすことを躊躇しているのか」と考えた。当然、長い間1人だけ担当している人もいれば、複数人担当している人もいる。考え方はそれぞれで、そこに優劣など無い。では、なぜ私は春香1人だけ担当することにこだわっているのだろうか。前述のとおり、不器用ゆえに複数人を担当する自信が無かったのは確かだ。
 しかし、ふと私の心の奥底にとある恐れがあることに気づいた。「担当を増やすことで、ずっと1人を担当している人から尻が軽いと軽蔑されるのではないか」と。確かに、そう思われることはあり得るだろう。しかし、これは「担当の条件」としては不純だ。自分の担当のことなのに、「他人からどう見られるか」を大事にしているからだ。
 これに気づいたとき、私は自分に対して、真に「担当の条件とは何か」を問うことができるようになった。そこでようやく思い至ったのが「主体性」である。あくまで私自身についてだが、「大好き・ファン目線」と「担当」との間に違いがあるとすれば、それは主体性であると考えた。私にとって春香が特別なのは「他でもない『私が』なんとかしたい」からだった。では、私にとってエレナは……?

「寂しさを知っているからこそ、みんなには心から笑ってほしいと願う子……そんな子を『私が』支えてあげたい。そして、エレナはこんなに素敵な子なのだと自ら発信していきたい」

 エレナは、私が自分に課した担当の条件を満たしていた。

 2022年10月26日。エレナを好きになってから、約3年。エレナの誕生日に、私は「担当になること」をプレゼントした。


 ……とまあ紆余曲折はあったものの、こうして今は春香とエレナのハッピー2人担当ライフを送っている。Cleaskyと対峙してしまった期間があった分、思いっきりエレナを可愛がることにしている。いざエレナを担当に加えてみると、この2人には前述した「太陽のような子であること」や「ただ明るいだけではないこと」といった共通点があることがわかってきた。遅かれ早かれ、担当する運命だったのかもしれない。
 時にキャパオーバーを感じたり、2人を平等に扱えず悩んだりすることもある。それでも、エレナを担当に加えたことを後悔したことはない。春香への愛が薄れたこともない。皆さんも、何か担当のことで迷ったり悩んだりしたときは考えてみてほしい。あなたにとって、担当アイドルはどんな存在か。そこから見えてくる、あなたなりの「担当の条件」は何か。
 もちろん、繰り返しになるが、それを他の人に押し付けることのなきように……。


 と、ここで文章を〆る流れではあるのだが、実は最近新たな伏兵が現れてしまった。


 最上静香である。


 実はアイマスに触れ始めた当初から静香は好きだった。しかし、大きな転機となったのは2023年6月にミリシタに実装された『Legend Girls!!』のイベントコミュである。後述するが、このコミュの静香の描写があまりにも深く刺さったのだ。[9]その後も10thライブツアー Act-2での『SING MY SONG』の披露やミリアニでの活躍などもあり、執筆時点でめちゃくちゃ静香に惹かれているところだ。
 さて、大事なのはここからだ。なんと静香、私のファースト担当である春香と共通点が多い上に、「担当の条件」を満たしてしまっているのだ
 春香と静香の共通点を端的に言うと、2人とも幼い頃からアイドルに憧れている。静香には父親から課せられた「アイドルは中学生の間だけ」という条件があるため、余裕が無い雰囲気をまとわせることもあるが、実は明るく元気な春香と同様のルーツを持っているのだ。『Legend Girls!!』のイベントコミュでは、春香の言葉に影響を受けた静香[10]が、アイドルを目指す子たちに向けて「アイドルは……とっても、楽しいですよ!」[11]と語り、私は静香の口からそのような台詞が出たことに涙した。
 そして担当の条件について。前述したとおり静香は父親から時間制限を課せられている。メインコミュ第67話「夢の黎明」で、父親の言葉に思い悩む静香や、そんな父親に直談判しにいくプロデューサーの姿が見られたのは印象的だった。そんな静香の姿を見ていた私は、最近しばしばこう考えてしまうのだ。「この子を、『私が』なんとかしてあげたい。笑顔にしてあげたい」、と。これではまるっきり、「自主性」という担当の条件を満たしてしまっているではないか! もちろん、条件を満たすからといって必ず担当するというわけではない。しかし、私にとって静香がまた特別な存在になりつつあるのは確かである。一過性の熱なのか、それとも……

 そにっぴーPの明日はどっちだ。

 もちろん、それを決めるのは私自身なのだが……。


本記事を掲載している『天海春香学会Vol.4』はBOOTHにて頒布中です!

ぜひご覧ください!



[1] BFF氏作「エースコンバット6PV風 衝撃のDLC3「覚醒美機」 アイドルマスター」, https://www.nicovideo.jp/watch/sm2184438 , 2023/9/18最終閲覧

[2] 例:簀巻きP作「春香さんまっしぐら!」, https://www.nicovideo.jp/watch/sm9784657, 2023/9/18最終閲覧

[3] 「」を付けているのは、あまり“AS”という呼称がしっくりこないため。ご容赦……

[4] 2011 Jun. Vol.5.1 リスアニ!, 株式会社ソニー・マガジンズ, 2011, p.64

[5] ミリシタ,島原 エレナとのメモリアルコミュ5

[6] 同上

[7] ファンタジスタ・カーニバル「その場所がステージになる」、シャクネツのパレード「キミのことを待ってる人がいるんだヨ」あたりがわかりやすい。

[8] “X”,https://twitter.com/f_of_panda/status/1421861107602321414?s=20 ,  @f_of_panda 2021年8月2日ポスト(一部改変あり)

[9] 最上静香が普通の女の子になった日 ~Legend Girls!!イベントコミュ感想~, https://note.com/f_of_panda/n/na4f9c1047f22, 2023/9/18最終閲覧 参照のこと

[10] Legend Girls!! イベントコミュ第5話「ただ、伝わるもの」

[11] Legend Girls!! イベントコミュ第6話「今、立っている場所」

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