哀れなるものたち
ここ数ヶ月、深く沈み込んでいた。
どうして世の中は、こんなに私を強くさせるのだろうか。
そう思った。
私が素朴に疑問だったのは、もっと私は誰かに甘え、穏やかで心の振り幅のない人生を送りたかったはずなのに、なぜこんなに本質に迫られるのかということだった。
かすかな甘えさえ、許されない状態だった。
◆
泣きながら理不尽を叫んだ。
叫んでも叫んでも、自分が「弱者である」と馬鹿にされた気がした。
自分でも自分に自信が持てなかった。
人からは、「そんな君は強いね」と言われた。
そのたびに「強くなんかなりたくない。安心できる誰かの腕枕と心の拠り所を下さい」と思った。
また、ある人は私に言った。
「確信を持って、その辛い道を行きなさい」と。
その時、私は「こんなに辛いのに、この辛さに確信を持つなんて、無理に決まってる」と思った。
そんなことを言うのは、無責任だと感じた。
私がこんなに辛いのは、人のせいなのに、その人たちを恨まず、この辛さに確信を持て、だなんてなぜそんな酷なことを言えるのか疑問だった。
◆
しかし、今日、全てのパズルのピースが揃った。
「哀れなるものたち」をみた。
主人公のベラは、私だった。
他人に人生の主導権を何度も握られ、尊敬は消え、思考すら阻止されて。
しかし、それでも、何度も何度も彼女は自分の力で立ち上がった。
傷つくより前に、自分を信じた。
ベラを見ていて、もう人を赦そうと思った。
現実的に許せないことは沢山ある。
しかし、相手がどうであれ、私はこの苦しみから手を引く。
なぜなら今、私は強く自分の尊厳をもって、自分の人生を生きているから。
哀れだねと笑って石を投げつけてくる人もいる。
でも、その人たちも、それなりに元気にやっていて欲しいと思う。
私は、もう誰のことも恨まない。
あの、「確信を持って、その辛い道を行きなさい」と言った人に、今なら感謝できる。
私はもう、その確信をとっくに持っていたのだ。
これからも自分の力で立ち、高らかに笑い、誇りと共に生きていく。
(おしまい)
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