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君はバカ

また君とデートできるなら
わざと変なところで待ち合わせする

いわゆる名所での待ち合わせは
いかにもデートって感じで
なんか無駄に緊張するから
なんか、よくわかんない
変な雑多なところでわざと待ち合わせにする。

それでお互い
用事の途中で
たまたま出てきましたって感じを装って
洋服も構わずに、
大きなリュックなんか背負っちゃって

本当は今から君と過ごす時間を
ワクワクと期待してるんだけど
そんなのはおくびにも出さずに

「まずはタコ焼きでも食おうぜ」

なんて言って
精神的ハードルを下げて
気だるいような感じで
なんてことないふりして。

お互い、いちいち喜ぶなんて、
そんなのダサいし、ナイよね。
みたいな、わざとそんな気だるいフリをして

どっちが奢ってもいいように、
お金の心配が要らないようなお店に入って
そこで緊張をほぐすように
1杯ずつハイボールを飲んで

「え?そんなに飲むなんて珍しいね?」

なんてお互いに言って

それでさ
そうだなぁ
映画でもみる?

でもさ、君と私の映画の趣味は
全然合わないでしょ?
だから、その日はあたしが折れるよ

「今日は君に合わせる 」

なん言って、
そのときはチケットを君に買ってもらおうかな
いいかな。

なんせ映画の良いところは
少し君に触れようと思えば
腕にほんの少し触れられるところで

ささやかに
時間が止まったような
そんな小さな幸せを味わえるから
本当は好きなプランだったりする

なんか、それだけで、
胸がギュッとなるというか。

本当は、ただ君に触れていたくて
映画の内容なんてどうでもよくて
1ミリだけでいいから
君に触れられたら
それで満足で

それ以外はどうでもよくて
少しでも触れられたら
心がギュッと熱くなって

耐えられなくなって
心臓がバクバク騒ぎ出して
肺あたりに熱い汁が湧き出して
なんだこれは、って大洪水起きるの、ホント。

あ、下ネタではないです。
喜びの湧き水が起きるのは、肺ね、肺。

それだけですごくすごーく幸せな気持ちになって
世界中の人に言いたくなるの

あたしね、
いま、この人と並んでおります!って
好きな人と、隣で並んでいますよ!奇跡。って。

あたしはただただ、
この人との並びを凄く気に入ってるの。

どれくらい幸せかっていうと。

君といるとね、
明日も頑張ろうって思えるの。

君はね、
自分がカッコイイと思っているタイミングには
全然カッコ良くなくて
逆にカッコつけマンで
キモくてダサくて鈍臭くてキモくて

逆にさ、本人が気づいていない
カッコつけてないときのほうが
凄くチャーミングなの。

それは、あたしだけが知ってたと思う、今でも。

そこに気づいていない感じがね
隙がある感じで、とても良かったよ。

バカでアホで、
犬みたいにつぶらな瞳してんのに
本人はそれに気がついていないなんて

バカだよね

君はバカ

あたしだけが知ってるんだよな多分。

でね、アイツもね、たぶん、あの頃。

世界中で私だけを
信用してくれていた気がするんだよな。

なんかね、それだけで、
幸せで幸せで
わけのわからない涙が出てくんだよね。

アイツがふとした瞬間にみせる
あたしに対して隙のある態度とか
「あぁ、あたし信頼されてるな」って思えるの。

あぁ
裏切っちゃいけない
あたしが守るよって

この気持ちは
世界中の誰にも教えたくないなって

本当はあたし
声を大きくして言いたいの

あたしとこの人は
お互いに好きな者同士で並んで
どう?お似合いでしょう、って。

そんなこと他人からすれば
どうでも良いんだろうけど。

君を見つめてるだけで
ギュッと苦しくなるんだ。

君が食事中に
フォークを落とすダサいとこも
全部、一切合切、愛おしかった

バーカ
バーカ

君の肩
変な匂いで好きだった

背負ってる大きな荷物
「それ、何入ってんの?」
「重すぎて、身体壊すよ?」
ってあたしが毎回言うほどのカバン。

一度ほんとうに持ち上げてみたら、
重すぎて、お米でも入ってるのかと思った。

男の人って凄いよね
私には絶対持てない大きさだった

君はあたしに女らしさとか全然求めなくて、
とうとう浴衣のデートは出来なかったままだし

もしあたしが思い切って浴衣姿を見せたとしても
そういうところは可愛いとか感じない人だったし

「女ってめんどくさ」

って言いだす感じだったと思うけど

でもね、
ホントはあたし
一緒にお祭りに行ってさ、
出来れば、手持ちの花火がしたかったの。

君と一緒に「綺麗だね」って言いながら
落ちていく線香花火の炎の玉を静かに眺めて

綺麗なものを
ただ綺麗だねって

そう言い合いながら
一緒に眺められるだけで、それでよかったの。

ただ綺麗なものを、綺麗だと、
同じ瞬間に同じタイミングで
味わいたかった。

それだけでね
本当に世界が美しくなるんだ。

本当にそれだけで良いんだ。

もしもいつか、この関係が終わったとしても
可愛いあたしを覚えておいて貰えるようには、
一度くらい、可愛いところは見せておきたかった。

キレイな私の記憶を刷り込むために
着飾った綺麗な私を、
見ておいて欲しかった。

もう、叶わないんだけどさ。

もしも自分の気持ちを
あのとき素直に伝えられていたら
アイツは「今のお前が好きだ」と、
なんだか言ってくれたのだと思うけれど。

今となっちゃ、わかんないね。

今どこで何してるんだろうな

あれから一回も会ってないし
多分もう二度と会わないし。

次に会う時はもうお互いに歳をとって、
どっちかが死んじゃう時だと思うけど、

私は今、
与えられた大事な時間を精一杯生きてるし。

ねぇ、あの頃あたしにさ
「好きだ」という感情を
一生懸命教えてくれて
本当にありがとう。

雨の日に、
私が濡れないように
軒先に私を雨宿りさせて

君は濡れながらコンビニまで
傘を買いに走ってくれた。

そんな君が、凄く愛おしかった。

あたしはそれだけで
世界で独りきりじゃないんだって
再確認して、あの時少しだけ泣いた。

君といると世界の端っこでも
どこでも
ずっとずっと
世界が愛おしかった。

たとえどこにいたとしても
自分が特別な存在に思えた。

いつか君とテトラポットを歩いた日のこと
これからも忘れずにあたしは生きていくし
大人になった今でも、
あたしの原点はあそこにあるから。

だから、良かったら、
どうか君もあたしのこと
忘れないで
忘れないでいて下さいね。

あの頃の気持ちは
永遠に君にあげたから。

私の「好き」という気持ちは、
いつでも自由に心の中から取り出して貰って、
好きに弄び、好きに眺めて貰って構わないよ。

あたしがこれから先
誰のことを好きになっても、
あの頃のあたしだけは、君に丸ごとあげる。

それだけは、どうか覚えておいてほしい。

あの時の二人が
今日もどこかで
5次元とか6次元とか7次元とか
世界のどこかにあるパラレルワールドの中で
生き続けているといいな。

選ばなかった人生の先にあった
現実的な1つの選択肢として
どこかであの2人が幸せにやっていてほしいな。

いつか、またどこかで会いたいな。

いや、もう、会わなくていいな。

絶対に、会わなくていい。

サポートをしていただきますと、生きる力がメキメキ湧いてきます。人生が頑張れます。サポートしてくれた方には、しれっと個別で御礼のご連絡をさせていただいております。今日も愛ある日々を。順調に、愛しています。