長いものはなんでも
織物の面白さについて、何が面白いのかを伝えるのはむずかしいもの。
いつもパッションだけが先にあって、具体的なことがちゃんと相手に伝わっているのか疑問が残ります。
なので、からんだ糸をほぐすようにして、一筋づつ取り出すようにしてみたいです。
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織物の一番基本的なことは、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)による交錯とからみ方で平面を作るということ。
西陣織の帯は約34センチほどの幅があり、その34センチの中に2千本~4千本ものの経糸(たていと)が通っています。
機にかかった経糸は無限の長さでつらなり、(糸が無くなったら継ぎ足していく。)その経糸に様々な緯糸(よこいと)を通し絡ませ交錯させて、織り物ができあがっていくのです。
西陣織の帯の経糸にシルクをかける場合が多いのは、帯をしめるときにキュッとしまる繊維だからです。ポリエステルでは、しめたつもりでもするりとほぐれやすく、着崩れしやすい場合が多いように思えます。
もちろん、見た目にもシルクの光沢は美しいものですし、しっとりとしたシルクをまとう心地よさは、ほかの繊維では得難いものがあります。
話が少し横にそれました…。キモノの魅力についてはまた別のところで書くことにしまして。
ここからが注目ポイントです。
西陣織の帯を作るときに使用する緯糸は、必ずしもシルクに限ったものではないということです。
振袖などにしめる帯は、全通と言って、全部通しで柄がはいっていますが、それ以外の帯は、背中に背負う「太鼓」と「腹」の部分に柄が来るように設計されます。
その、太古と腹の部分をいかに魅力的に構成するかは、帯づくりで心血を注ぐ部分です。
もちろん、どのような柄を用いるかということは重要なのですが、どこにでもあるようなモチーフをいかに魅力的に見せるられるかは、どのような糸をどのように使うかにかかっているとも言えます。
そこで、西陣織では、シルクだけでは飽き足らず、和紙に美しい絵柄や模様が描かれた、45センチ幅の紙を細く裁断したものを「引箔」と呼び、緯糸として使用するようになりました。
さらには、金や銀やプラチナなどの金属をたたいて薄くのばしたものを紙に貼り、薄くスライスした「平箔」、さらにそれらの平箔にくるくると撚りをかけて、糸状にした金銀糸などを作り出しました。
これらのような引箔、平箔、金銀糸などは、西陣織の織元さんが高級な箔帯を作られる一般的なことなのですが、私たちの工房では、「織り込めるであろう」と推測されるありとあらゆる素材に様々な加工を施して、織り込んでみるということをしています。
薄くスライスした屋久杉・神大杉、竹の皮、毛糸、和紙のこより、リボン、絵、新聞・雑誌、漆糸、透明シート諸々…
西陣織を面白くしているかなめには、細くて長いものは織り込んでしまえるということがあります。
もちろん、そんなことができるのは、私たちに超有能かつ、不可能を可能にしてくださる、スーパーな職人さんがいらっしゃるからということは大の前提ですが。
ちなみにこちらの写真は、仏さまの像のふっくらとした手をモチーフにして織ったものをご朱印帳にしています。
ふっくらさせるために、二重の構造をつくり、手の内側には毛糸を忍ばせて織り上げているものです。
平面でありながら、立体にもなる。
既存のやり方に基づいてはいるものの、長いものはなんでも織り込んで、様々な工夫をこらすことで、やりたい表現が実現できる。
これが何より織物の面白さといえるかもしれません。
フランスからスペインに抜けて進む、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼旅へいつか出たいと思っています。いただいたサポートは旅の足しにさせていただきます。何か響くものがありましたらサポートお願いします♪