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青い目の人形の話

2024年発行の新紙幣。1万円札の新しい顔に選ばれたのは渋沢栄一さんでした。めちゃくちゃ凄い功績の方でお札になるのが遅いくらいの方だと個人的に思ったりするのですけど、彼の色々な功績の中で私がとても気に入っているのがFriendship Dolls(友情人形)と呼ばれる活動です。
これは明治後期からの日本とアメリカとの険悪な雰囲気に危機感を感じたアメリカ人の宣教師であるギューリック博士が提唱した「人と人との理解は大人になってからでは遅い。世界の平和は子供から」という呼びかけに始まった、両国の人形を交換することでの国際交流活動のことで、日本側は渋沢さんが大きな役割を果たしています。
この時にアメリカからやってきた人形を「青い目の人形」と呼んでいます。日本にやってきた青い目の人形は12739体で、日本各地の学校などへ寄贈されました。

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彼らの努力も虚しく、時は流れ日本とアメリカは太平洋戦争へと突入します。戦争中は敵国語として英語が禁止になったように、日本に寄贈された「青い目の人形」の多くは敵国の物という理由で破棄されることになってしまいます。
それでも人形たちに罪はないとして、見つかれば非国民扱いされてしまうリスクを負いながらも、学校の柱の中へ隠したり、家に持ち帰って隠して保管してくれた方などのおかげで現在も残っている人形もあります。
なお現在残っているのは323体。ものすごく少ない。(東日本大震災で流されてしまったのに、奇跡的に見つかった人形もあるんですよね〜。凄い!)

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青い目の人形はこのような木箱に入った状態で贈られました。結構立派な箱ですよね。この子の名前はヘルン・モナーちゃん。山梨県の小室尋常小学校(現・増穂南小学校)に贈られたのち、現在は増穂町民族資料館にあります。山梨県には110体の青い目の人形が贈られましたが現存するのは5体のみです。
ちなみにこの民族資料館は明治9年竣工の学校校舎を使っているので、当時の雰囲気も感じることができる最高の施設です。

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木箱の側面には彼女たちのプロフィールなどが書かれています。出生地、名前、年齢、寄贈者、いつ誰に贈られたのか・・・と。昭和2年3月16日に寄贈されたようです。昭和2年って西暦だと1927年ですからもう少しで100年になると。
名前はジェネラちゃんというようですね。

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この子がジェネラちゃん。山梨県甲府市にある相川小学校に送られたもの。甲府市は空襲の被害も大きかったので残っているのはとても貴重です。
相川小学校さんのご好意で見させてもらったのですが、当時の話では2年に1度この人形を前に平和に関する集会をしているとのお話を伺いました。平和を考えることってとても大切です。それなくしては平和への一歩は踏み出せないですもんね。

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靴なども丁寧に作られています。月日がかなり流れているので傷んでいますけれど、過酷な時代を乗り越え、さらに約100年前の人形だと思うと綺麗な方なのかもしれません。

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この子も甲府で奇跡的に助かった子でイヴァン・ジリーンちゃんと言います。進徳幼稚園に贈られたもので、空襲の際に園舎に火がついてしまったそうですがとっさに水をかけてなんとか無事だったと。そしてこの箱は裏側にして見えないようにしまっていたということです。私が尋ねた時はちょうどひな祭りの時期だったので、お雛様と一緒に飾られていました。とても大事にされていて嬉しかったです。

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進徳幼稚園さんはさらにちょっと凄いのですが2代目の青い目の人形がいたりします。21世紀に入って贈られたこの人形はなんとギューリック博士のお孫さんになるギューリック3世さんからのもの。脈々と熱い気持ちが受け継がれているというのがとても嬉しいなぁと。

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長野県上諏訪幼稚園に寄贈されたのはヘレン・ジュリアちゃん。現在は諏訪教育博物館に展示されています。先程の進徳幼稚園さんもそうですが、幼稚園の子供たちにとって当時はこのような人形は珍しかったと思うので取り合いになったりはしなかったのかな?とか思ったりします。綺麗に残っているってことは大事にされていたってことで、そういう部分でも人形を贈るって素晴らしいアイディアだよなぁと感動します。

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友情人形にはパスポートが付属していました。ちゃんとヘレン・ジュリアという名前が入っているのです。凝ってますよねー。
こういう付属品があるだけで、海の向こうからやってきたという感じが増しますよね。当時は今よりも海外はもっと遠い世界の話でしょうから余計に凄いなぁと。

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この子の名前はパッテローちゃん。岐阜県は和知小学校に寄贈されたもの。和知小学校では入学式で学校には3つの宝があるという話をするそうです。1つは欅の木。1つは金木犀の木。そしてこのパッテローちゃん。
和知小学校さんは私のことをとても歓迎してくださり、実際に手に持たせて頂くことができました。

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この青い目の人形は寝かすと目をつぶるんですねー!凄い!
重さもなかなかあって、これは子供たちはかなりリアルなごっこ遊びができただろうなぁと思われます。
それから今はその機能は使えないようですが、なんと喋るらしいのですね。「ママー」と喋るという話です。うわー、声を聞いてみたい!

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和知小学校さんにもギューリック博士のお孫さんである、ギューリック3世さんからの新しい青い目の人形が贈られていました。名前はダイアンちゃん。
日米友好の人形。ギューリック博士と渋沢栄一が紡いだ友情の形。Friendship Dolls(友情人形)の気持ちが今も受け継がれているというのが本当に嬉しい。


ここまで紹介してきた青い目の人形は沢山の方のご好意で拝見させて頂いたものたちです。私の為に時間を割いてお話を聞かせて頂き有難うございました。
見れば見るほどに1体でも多くの青い目の人形をこの目で見たいなぁと思うようになりましたし、1体1体に秘められた話も含めて記録できたらとても意味のあることなんじゃないかと思ったりもします。
もし見せても良いですよーって方がいらっしゃったらご連絡を頂けたら嬉しいです。すぐに飛んで行きます!

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