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#時空の森羅万象物語 【命魂草水】という想像上の芋焼酎 及び 芋焼酎全般についてのお話

☆前書き☆

皆さん、こんばんは。

いつもお世話になっております。

本日は前々から予告していた通り、#時空の森羅万象物語 を読み進めていく中で一つの大きなキーアイテムとなってくる【命魂草水】という想像上の芋焼酎 及び 芋焼酎全般について書いていきたいと思います。

とても長い記事なので、お時間のある時に読んでいただくのが良いかと思います。

この記事や時空物語を書く上で参考にした書籍などは、最後にまとめて記載しております。

宜しければ、そちらもご参照くださいませ。

(本題に入る前にちょこっと余談ですが、著者はほとんどアルコールを飲みません。

 好きなお酒や飲みたいと思っていたお酒が手元にある時は話が別(笑)ですが、基本的には一年に2〜3回程度でしょうか。

 お酒を飲むのが好きなのと、お酒について調べたりするのが好きなのは別物のようです。)



☆【命魂草水】について(時空物語世界のお話)☆

#時空の森羅万象物語 にて、虹野島産の乙類焼酎として製造されている焼酎。

かつては御三家の創龍地家、京極家、楓塚家が製造工程の全てを担っていたが、次第に造り手が減少していき、しばらく製造されなくなっていた。

現在は朔乃月鏡祐が一人(?)で製造しているが、もちろん造れる量は限られているので希少品であり、全国にいるとされるマニアにとっては相当に貴重な品らしい。

虹野島の独自ブランド芋焼酎なので地元産のサツマイモがベースに違いないが、島の自然水とサツマイモ以外にも30種類とも50種類とも言われている様々な薬草が加えられ、黒麹と酵母によって発酵させられた後に蒸留器にかけられる為、かなり独特なクセのある風味になっている。

「一年を通して様々な種類の薬草を育てて収穫出来る」「一つの島で一時期に桜菊国の風土を北から南まで網羅する事が出来る」虹野島という土地を活かして、新鮮な薬草という特殊性を加えているという。

そのレシピも昔からずっと非公開の為、現在は御三家の古い書物もしくは鏡祐しか本当のレシピを知らない。

過去現在未来のいずれにしても、命魂草水が虹野島の経済にとって大きな役割を果たしているであろう事は間違いなさそうだ。

…一部の噂によると、嗜好品としてアルコール飲料であるのみならず、虹野島の巫女が関与している特殊な役割があるとかないとか…。

一度その歴史が途絶えてなお復活させられているところに、何か深い理由か意味があるのかもしれない。

(※【命魂草水】は時空物語に登場する想像上の芋焼酎であり、特に現実世界に存在するいずれかの芋焼酎をモデルにしたというわけではありません。

 リアル現実の屋久島にて有名な芋焼酎には、「三岳」「愛子」「屋久の石楠花」「やくしま」(三岳酒造)、「水ノ森」「屋久の島」「屋久杉」「大自然林」(本坊酒造)などがあります。)



☆鹿児島の芋焼酎について(リアル現実世界のお話)☆

「焼」…熱を加える、蒸留させるの意
「酎」…焼酎以外に使用されない漢字、濃い酒の意

「発酵」…微生物を用いた人間に有用な物質の生成(有害な物質を生成した場合は「腐敗(酒類の場合は腐造)」)


・製造以前
 鹿児島はシラス台地(九州南部に多く分布する火山噴出物からなる台地で、粒の細かい軽石や火山灰で出来た地層を含む)が県土全体の52%に及び、更に台風が多い為に米の栽培に適さない地である。

 米が作れたとしても、南国で美味な清酒を造るのは非常に困難とされていた。

 温暖な気候ゆえに発酵の途中で腐敗しやすく、灰を入れて発酵を止め保存性を高めた灰持酒として造らざるを得ず、灰を入れるとみりんのように甘くなりすぎる為に飲み辛さがあったのだ。


・サツマイモ伝来と芋焼酎製造開始
 サツマイモが鹿児島(薩摩)に伝来したのは、諸説あるものの大体17世紀頃の事とされている。

 そしてこちらも諸説あるものの、米の代わりとして芋焼酎の製造が始まったのは1705年頃との事。

 サツマイモ伝来と蒸留の技術は共に、沖縄(琉球)を通して大陸から伝わったもので、麹の文化も東洋独特のものである(西洋の蒸留酒は麦芽を用いる)。

 サツマイモは痩せた土地での栽培に適していて、台風や干ばつにも強い為、鹿児島の風土で育てるのに最適であった。


・製造初期
 鹿児島における焼酎造り初期の頃、少量の米麹と蒸したサツマイモを同時に仕込み、発酵させて蒸留するのが主流だった。

 しかしデンプン含有量が低く、貯蔵性が悪く、傷に弱いサツマイモは、焼酎にするのに上記の方法が適していなかった。

 綺麗に濾過出来ていない状態で蒸留すればドロドロになり、更にサツマイモは蒸すと甘くなるので、30度近い温度で発酵させる南国の酒造りは常に腐敗の危険がつきまとっていた。


・製法見直し後
 後の時代に製法が見直され、始めのサツマイモと米麹の過程が分けられる。

 水と米麹と酵母を合わせて酒母を作り、酵母を大量に培養してからサツマイモを加え発酵させると、サツマイモの糖分が一気にアルコールに変換され、腐敗の危険が格段に下がる事が確認された。

 その事がサツマイモの適正を引き出し、優しく上品な甘みを持つ芋焼酎造りが実現された。

 更にその後、元来使用されていた黄麹から黒麹へと種類を変える事によって雑菌による汚染を防いだり、味わいに変化をもたらしたり出来る事も分かった。

(追記…幕末・維新の頃に「米焼酎に負けない芋焼酎を作る」ように指示したのは、薩摩藩主・島津斉彬公なのだとか。)



☆原料の保管☆

焼酎に適したサツマイモは多くの収穫が見込めて、デンプン含有量が多くて香りの良い成分を含むもの。

サツマイモは栄養成分を多く含み、貯蔵すると甘くなる性質を持っている。

その反面、水分が多いと腐敗しやすく、貯蔵性が悪く低温障害も高温障害も受けやすい。

病害虫にも弱く、打撲など様々なストレスにより二次代謝産物(異臭や苦味の原因)を生成してしまう。

焼酎にする芋は新鮮な状態での仕込みが望ましいが、貯蔵してから使用する場合もあり、温度・湿度・換気の整った状態に保たなければならない。



☆乙類と甲類、本格焼酎☆

焼酎が造られ始めて以来の伝統製法である「単式蒸留器」によって造られたものが乙類(アルコール度数45度以下)、後に海外から入ってきた「連続式蒸留機」によって造られたものが甲類(アルコール度数36度未満)。

(単式蒸留器には常圧と減圧があり、常圧は大気圧で沸騰させる揮発成分を蒸発→凝縮させるもの。

 香気成分の数と量の多い濃厚タイプで、命魂草水は多分こちらの方です。

 一方の減圧は気圧を低くする事で蒸発を促すので、香気成分の数と量の少ない淡麗タイプに分類されます。)

本格焼酎は元々乙類とイコールだったが、税制が改定された為に別物として扱われるようになった。

本格焼酎に使用出来る原料は「穀類」「芋類」「清酒粕」「黒糖」「その他49品目(国税庁のサイト等ネットで検索すれば出ます)」。

(ゆえに様々な薬草が含まれている命魂草水は、本格焼酎には分類出来なさそうです。)



☆芋焼酎以外のアルコール まとめ☆

・黒糖焼酎は、製造地域が奄美大島群島に限られる。

・果実を原料とした醸造酒はワイン、蒸留酒はブランデー。

・米を原料とした醸造酒は清酒、発酵させたもろみを蒸留させると米焼酎。

・その他「ウイスキー」「ウォッカ」「ラム」「ジン」等は蒸留酒、「リキュール」は蒸留酒や醸造酒に果実やハーブ等の副材料を加えて香味を残し、砂糖やシロップで調製した混成酒。

(人類史上、最も古いアルコールはワインで、紀元前6000年頃には存在していたようです。

 次いでビールは紀元前3000年頃から、日本酒は9世紀頃、ウイスキーは11〜12世紀頃、焼酎や泡盛は15〜16世紀頃、芋焼酎は17〜18世紀頃に登場したというのが現在の通説との事。)



☆時空物語&今回の記事を書く上で参考にした文献資料☆

『屋久島、もっと知りたい 人と暮らし編』(下野敏見著、南方新社、2006)

『屋久島、もっと知りたい 自然編』(中田隆昭著、南方新社、2004)

『ブルーガイド てくてく歩き ネイチャーガイドと歩く屋久島』(ブルーガイド編集部、実業之日本社、2011)

『地球の歩き方 JAPAN 島旅07 種子島』(地球の歩き方編集室、ダイヤモンド・ビッグ社、2016)

『日本一長い村 トカラ 〜輝ける海道の島々〜』(長嶋俊介、福澄孝博、木下紀正、升屋正人 共著、梓書院、2009)

『るるぶ情報版 九州の島々』(山本祐介編、JTBパブリッシング、2013)

『火山で読み解く古事記の謎』(蓮池明弘著、文藝春秋社、2017)

『焼酎の履歴書 発酵と蒸留の謎をひもとく』(鮫島吉廣著、イカロス出版、2020)

『地球環境サイエンスシリーズ② 海と海洋汚染』(松永勝彦、久万健志、鈴木祥広 共著、三共出版、1996)

『ナショナルジオグラフィック 世界のどこでも生き残る 完全サバイバル術 自分を守る・家族を守る』(マイケル・S・スウィーニー著、日経ナショナルジオグラフィック社、2011)

「屋久島環境文化村ガイド 図説 屋久島」(公益財団法人 屋久島環境文化財団発行、学研プラス制作、1996)

「薩摩伝承館 名品目録 開かれた薩摩 -その歴史と文化-」(薩摩伝承館編集、2009)

※その他ネット等の情報や、著者が屋久島にて実際に見たものやガイドさんに聞いた話なども参考にしています。



☆後書き☆

他にも色々と書いておきたい事はありますが、とりあえず必要そうな情報だけ取り上げています。

こちらは自分用のメモも兼ねておりますので、所々で解説を省略している場合があります。

この手の方面に詳しい方がおられましたら、間違っている箇所等あれば遠慮なくツッコんであげてくださると有り難いです。

(※日本では、家庭で個人的にアルコールを製造する事は法律で禁止されています。)


今回も、ご愛読いただき誠に感謝致します m(_ _)m






中高生の頃より現在のような夢を元にした物語(文と絵)を書き続け、仕事をしながら合間に活動をしております。 私の夢物語を読んでくださった貴方にとって、何かの良いキッカケになれましたら幸いです。