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「気持ちは、説明ではなおりません!」(『ムーミン谷の夏まつり』より)

10月末に風邪をひいて、治りが遅くぐずぐず過ごしていると12月になり、この文章を校正しているうちに年が明けてしまいました…。

季節的に、『ムーミン谷の十一月』について書きたいと考えていたのですが、11月はとっくに過ぎ去ってしまったので、この際季節を無視して、『ムーミン谷の夏まつり』のミーサについて書いてみようと思います。(あらすじは割愛します)

ミーサは、悲観的な女の子です。自分には悪いことばかり起こると思っており、悲劇に見舞われることを望んでいるところもあります。『ムーミン谷の夏まつり』の物語の中で演劇をするとなった時には、「かわいそうな」プリマドンナを演じたいと言っています。

さて、ミーサのコンプレックスは、足が大きいことです。私も足が大きいので、悲観的にもなる気持ちはよくわかります。大きい靴を選ばなくてはならず選択肢がとても少ないですし、全体的にがっしり見えることなど、人知れず悩みます。『ムーミン谷の夏まつり』序盤で、ミーサの足の大きさに関して彼女とホムサという男の子が話す場面があります。私の好きな場面のひとつです。

『ムーミン谷の夏まつり』は、ムーミン谷が洪水になるところから始まりますが、ミーサとホムサもこの洪水に巻き込まれ、流されて出会いました。挿絵によれば、木の上にたどり着いたようです。そこで二人は「はつかねずみ」や「はい虫」と洪水の原因について話していたのですが、ミーサは自分自身に起こる悲劇に話題を変えてしまいました。彼女は、何者かが木の実を長靴に入れて彼女の足が大きいことをからかったと言います。ホムサは、木の実は木から入ったのではないかと推測を述べ、木の実が入るくらい長靴は大きいのかとミーサに聞きます。

(以下引用『ムーミン谷の夏まつり』講談社文庫新装版pp.44-45)
「わたしが大足だってことは、じぶんで知ってるわ」
ミーサは、やけっぱちにいいました。
「わたしは、説明しただけなのです」
と、ホムサがいいました。
「これは、気持ちの問題よ。気持ちは、説明ではなおりません!」
「いやはやどうも」
ホムサは、しょげかえりました。
(引用終わり)

気持ちは説明ではなおらない(スウェーデン語の原文では、「気持ちは説明できない」という書き方でした)。相手の発言に悪気がないとわかっていても嫌なものは嫌、悲しいことは悲しい。現実では、ミーサのように悪気のない相手に言い返すのは難しいことです。言い返さない方がいいときもあります。悪気のない言葉や相手にマイナスの感情を持ってしまう自分が悪いようにすら思えてきて、もっと悲しくなってしまうこともあります。

悪気のない言葉に傷ついたときには、この場面を思い出して、気持ちは説明ではどうにもならないから仕方がないな、とまずはマイナスな感情を受け入れるようにしています。それでも結構落ち込んでしまうので、悲しい気持ちとうまく付き合えるようになれたら、と思います。

自分で話題を振っておいて相手の返答に怒るなんて、ミーサはかなり面倒な性格だと思いますが、嫌いになれません(私に似ているからか…?)。

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