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ムーミンの本に関すること

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ムーミンの本について書いた記事
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#スウェーデン語

「ニョロニョロひみつ」のスウェーデン語原書「Hatifnattarnas hemlighet」を読み始める。

【スウェーデン語】『ムーミン谷の十一月』でスナフキンが歩いた場所とは?「ödemark」再考

以前、『ムーミン谷の十一月』で、新旧訳が異なっている箇所について書きました。スナフキンがムーミン谷を後にし、「ödemark」を歩きますが、ödemarkは新訳では「荒れ地」旧訳では「ジャングル」になっています。 ödemarkを辞書で引くと、「人間の存在や活動の痕跡がない土地」とあり、Google翻訳でも「荒れ地」と出たので、荒れ地なのかな、と思っていましたが、安易な判断でした。Google翻訳は非常に便利ですが100%正しくはありません。 この点については、投稿してす

『ムーミン谷の彗星』の改訂で変わったこと:スニフはナイフを持っていた

結構前に、『ムーミン谷の彗星』は3つ版があり(2回改訂されている)、タイトルも違って内容にも違いがあるという話をしました。 手元にある2版目(1956年)と3版目(1968年)を見比べて見つけた小さな改訂箇所をメモしておきます。最初の最初で、スニフが「あたらしい道」を見つけたところです。スニフは場所を忘れないように目印をつけますが、その方法が異なります。 日本語訳の底本にもなっており、現在流布している3版目では、小枝を使っています。2版目との違いを明確にするために、新版の

【スウェーデン語】ムーミン谷の自然:荒れ地(ödemark)とジャングル(djungel)

先週、フィンランドセンター主催の文学サロンに参加したことを書きました。 そこでは、日本語とスウェーデン語(トーベ・ヤンソンの母語・創作言語はスウェーデン語)で『ムーミン谷の十一月』の冒頭の朗読を聞く時間がありました。日本語で朗読されたのは旧訳で、私は2020年に刊行された新訳を見ながら聞きました。 その時に、旧訳では「ジャングル」となっている箇所が、新訳では「荒れ地」となっていることが気になりました。 ↓ 旧訳 ↓ 新訳 原文を見てみると、該当する単語は「ödema

「トーベ・ヤンソンを知る」読書案内#5のこぼれ話:ムーミン翻訳本の版による献辞・解説の違い

こんにちは。 先日、連載「トーベ・ヤンソンを知る」読書案内#5 を掲載していただきました。恐れ多くも、ヤンソンとゴーリーについて書きました。 今回はヤンソンの本に書かれている献辞に着目して展開しています。 原稿を書く前の調べものの段階で、本文には触れていないムーミンの翻訳の版による違いがわかったので、記録を残しておきます。 『ムーミン谷の夏まつり』と『ムーミンパパ海へいく』の献辞 改めてヤンソンの本を確認する過程で、ムーミンの本の献辞の書き方が版ごとに違うことがわかり

【原書講読感想】『ムーミン谷の仲間たち』「目に見えない子(Berättelsen om det osynliga barnet)」②:「いつも希望を胸に生きるって、いいことよね」(リトルミイ)

「目に見えない子」原書講読の感想2回目です。今回はミイの台詞について書きます。 ↓原書講読の感想1回目はこちら(足と鼻の表現について書いています) 書く予定を立ててはいなかったのですが、Instagramでムーミンカフェの投稿を見ていた時に、「目に見えない子」の中のミイの台詞を見つけて思い立ちました。「いつも希望を胸に生きるって、いいことよね」という台詞はすごく見いっぽい!と思います。 日本語訳の変化と英語訳のこと※ムーミンカフェの写真での記載は「~いいことよ」ですが、

ムーミンバレーパークの劇中歌「おっきいりんごの唄」と原作の話(ちょっとスウェーデン語のことも)

相変わらずムーミンバレーパークのショーの沼にどっぷりつかっています。これから書く内容は、ショーの沼からお届けします。好きが溢れてどうしょうがない気持ちが主成分なので、感情が前のめりでいつも以上につたない文章かもしれませんが、どうかご容赦ください。 頻繁にショーを観に行けるわけではないので、配信されている前回のショーの劇中歌を購入して毎日のように再生し、エネルギーを補充しながら最近は過ごしています。 曲は↓ここからダウンロードできます! 2020年3月から2021年3月に

【原書講読感想】『ムーミン谷の仲間たち』「目に見えない子(Berättelsen om det osynliga barnet)」①

半年くらい前の話になりますが、スウェーデン語のグループレッスンで私ともう一人の受講者の方がそれぞれ読みたいスウェーデン語の本を少しずつ講読することになりました。 一緒にレッスンを受けている方は、アストリッド・リンドグレーンの『やかまし村の春・夏・秋・冬(Mer Om Oss Barn I Bullerbyn)』から、「やかまし村のクリスマス(Hur Vi Firar Jul Bullerbyn)」を選びました。冬に読み始めたので、私もクリスマスの準備をしている気持ちになりま

ムーミンの日本語訳について少しだけ。

先週気になって仕方がなかった翻訳のことについて書きます! 先週の投稿↓ 気になった翻訳は、Twitterのムーミン公式さん(@moomin_jp)が #ムーミン谷の名言 としてツイートしたミムラねえさんの台詞:「なんだって、できるわ。だけど、なにもやらないでいましょ。あぁ、なんだってできるって、なんてステキなことなの!」 はて、どこに書いてあったかしら?と思い、『ムーミン谷の十一月』を読み直してみました。先週時点で手元にあったのは2011年発行の新装版でした。 (余談です