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UNDERTALEのコンサートにタマシイを粉砕された人【2024兵庫Dプログラム】

※コンサートの演出、UNDERTALEのストーリー、両者に対してネタバレの配慮は一切ありません。

アンテに初めて触れたのが1年半前の私。深めの思い入れを持つに至ったきっかけのひとつが5周年コンサートのアーカイブだった。今年久々にコンサートが開催されると知り、これは絶対に行くしかないと決意を抱く。

私が辿ったアンテについては複数の記事で書き残してある。5周年コンサートのアーカイブの話は#4にて。

遠征してイベントに行くのは約5年ぶり。2年前のBEMANI SYMPHONYのチケットを購入したのに行けず、今年3月のアンテコンサート東京公演も当選したのに行けず、ようやく叶った悲願だった。正直、出発日を迎えるまで安心できなかった。

ちなみに、東京再公演のチケットは当選ならず、一般販売分も即完売、諦めきれずにその場で青森-伊丹間の飛行機代やホテル代を調べ、行けそうだったので思い切ってDプログラムのチケットを購入した、という流れ。青森県民もいたぞ。なお関西遠征は今回が初である。

前日入りの朝イチ海遊館からのコンサート会場・あましんアルカイックホール。一旦ホテルに戻り、東京公演に向けて手作りしていた「緑色のタマシイ」を模したビーズネックレスを装着して会場に向かう。アンダイン推しなもので。

昼食を食べそこねていたが、緊張か高揚か、ろくに食事を取れそうになかった。そういうのがもれなく胃に来るタイプ。食べないと確実にエネルギー不足なので、会場にほど近いなか卯のきつねうどん(小)をどうにか胃に収める。

開場時間の16時、入場列に並ぶ。アンテのTシャツやグッズを身につけている人もよく目に付いた。程度こそあろうが、ここに集まる全員、アンテが好きなのだ。この体感こそリアルイベントの魅力だと改めて噛み締める。

物販で購入したのはパンフレット、序曲集CD、序曲Dミニスコア、ピアノ集Vol.2のCDと楽譜。楽譜もいくらかは読めるし、何より推し曲が目に見える形になっていると嬉しい曲のオタクなもので。

2階の座席で開演を待つ。かすかに聞こえる練習の音。少しずつ埋まっていく席。ステージのスクリーンにはコンサートのタイトルが映し出されていたが……数回、ほんの一瞬「あの子」が姿を見せる。そのたびに会場がざわつく。開演前から不穏さを散らしてくるとは。

M1:Overture - True Hero

Determination から始まる序曲が不穏極まりない。ごく短い MEGALOVANIA が挟まり、Determination が流れる時間はどんどん短くなっていく。映像の演出抜きでもサンズ戦の最中だと徐々に気づけるような構成。

MEGALOVANIA を耳にすることなくサンズの攻撃でゲームオーバーになって呆然とした初見時を思い出さずにはいられない。やがて躍起になってコンティニューを繰り返したことも。明らかにやった人からの指示が書かれていたので楽譜買ってよかった。

殺戮の限りを尽くし、何もかも壊しきった末の、歪んだ Once Upon a Timeは「すべて最初に戻ったように見えて根幹が変わってしまった」感が出ていて恐ろしかった。私はサンズ戦で諦めたので実感があるわけではないものの。何ならこの構成、リセットしてまたGルートを走っていないか?

M2:いせきにおちてきた子 -ふたたび-

赤い字。ということは、殺戮をするつもりで地下に再びやってきた主人公、なのだ。序曲が序曲だったのもあり、他のプログラムの「いせきにおちてきた子」とは感じ方がずいぶんと違うのだろう。良からぬ思惑を抱えて遺跡を進んでいたあの感覚がじわりとよみがえる。暖かく穏やかな Home で「ナイフはどこだ。」と表示されるタイミングに音をビタッとはめてくるのは心臓が冷えた。

M3:スケルトン兄弟とゆうしゃ

「ゆうしゃ」はゲーム内表記準拠、ということか?

当然のようにサンズにもパピルスにも塩対応、ゆきだるまは原型を留めず、スノーフルでは窃盗。しましたね……窃盗……。こんな状況でも Bonetrousle は陽気で、主人公を信じるばかりか救おうとすらしたパピルスのお人好しっぷりが苦しい。

But the Earth Refused to Die ~ Battle Against a True Hero では、不死身のアンダインが抱く究極の覚悟と最期まで手放さなかった希望、そしてそれらの前に確かに見てきた、戦いを避け続けた先のアンダインの姿、両方ともじっくりと見せてくる演出。
戦わずに済むと知っていながら、お前は彼女を「本物のヒーロー」にした挙げ句に何度も戦い、倒したのだ、と責め立てられているようだった。私がそうしたのは「(音ゲーがきっかけでアンテに触れたので)音ゲーに収録されたアンテ楽曲をすべて本家で聴くため」であり「ゲームとして熱い山場だったから」。だけどこの世界に生きる彼女からしたら、そんなものは悪党の自己正当化に過ぎないのだろう。

——アンダイン推しとしてそれほどダメージを食らうくらいには生オーケストラの迫力に圧倒されていた。それぞれのパートの表現に意識を向ける余裕はまるでなかった。それにあの映像演出を重ねられたら、古傷を抉られるだけでは済まないのである。情緒がめちゃくちゃになったことしか覚えていない。このあとに入った休憩時間もスリップダメージが入る時間だった。

M4:ナプスタブルーク変奏曲

ひとつ前の曲目から雰囲気がガラリと変わり、ビッグバンドメインの構成。Pathetic House のフレーズがこんなにムーディーなジャズになっちゃう!? 原曲、単音よ!? これが編曲の力……。
Ghost Fight ~ Dummy! ~ Spider Dance はもともとスウィングしていて好きだったので、ここぞとばかりにビッグバンド編成が光る華やかなアレンジを横ノリしながら楽しく聴いていた。金管ハマりすぎ。ベースおいしい。助かる~。

映像に出てくるモンスターたちは誰も助かっていないのだが。

M5:Battle Remix for UNDERTALE

ハードモードやってないしゴッゴメンに会いに行ってもなくてすいません。4つのプログラムの中で一番ディープな曲目だと感じた。コンサートの帰り道、後ろのほうで「あのキャラ何? 見たことない!」なんて会話すら聞こえた。そんな人も全然珍しくないはず。

Dプログラムは全体的にGルートの描写が濃いものの、この曲目こそ「Dプログラム≠Gルート」だったとも言えるだろうか。Amalgam はPルートでのみ聴ける曲だし。……あれ、でも映像では「こうどう」選んでたっけ……? ベース好きとしてはシンプルにたまらんやつだった。よく動くベースは健康にいいとされる。

パンフレットに記載はないが、最初に演奏される Enemy Approaching、いわゆる通常戦闘曲に戻ってくる構成。序盤のほうもオーケストラのゴージャスさに心が踊る……のだが、映像の主人公はやはり「たたかう」ばかり選んでいるのである。終盤に至っては熱いギターソロまで入ってきて、映像の演出さえなければ素直に盛り上がれていただろう。こんな演出が添えられていたら、主人公の「EXP」と「LOVE」が限りなく高まった様子しか思い浮かばないじゃないか……!!

M6:最後の審判

sans. から始まり、ボス戦BGMを経由し、MEGALOVANIA にたどり着く構成。それぞれのキャラクターに対する攻撃は映像と同じGルートにおけるものではなく、Nルートに近いようにも感じた。「誰も死ななくていい」はずなのに、君も誰かを手にかけたことがあるだろう?と問いかけてくる。ゲーム中でその問いを投げかけるサンズの心境にも思いを馳せてしまう。主人公が積み重ねた殺戮の果ての果て、Gルートのラスボスとしてのみサンズは主人公にやり返せるという、決して破れない約束事に。

Spear of Justice が聴けたのはよかった! 高らかに鳴り響くトランペットがやっぱりかっこいい! のだけど、Nルートで倒す際の再現のような展開に思わず小さく悲鳴が漏れた。私はやっていないのだが。バイオリンではなくビオラが前に出ていたのを覚えている。アンダインが受けたダメージの表現だったりするのだろうか……?

うーーーん、やっぱり普通に Spear of Justice で盛り上がりたい!!!!! タマシイのど真ん中に突き刺して私をおしまいにしてくれーーー!!!!!!!!(Spear of Justice の限界オタク)

M7:むかしむかし…

細かいアレンジは覚えていないけれど、序曲の不穏な Once Upon a Time と繋がっているのだろう……。俗に言う「ソウルレス」。開幕前から「あの子」がチラチラと姿を見せていたのもここに繋がっていたのかも。私は直接会ってはいないのだが。

私は悪党をやりきっていなかった。そのほうがいくらかマシではあるのだ。「デルタの裏ボスも乗り切った今ならサンズも倒せるだろうか」「もし倒せていたらDプログラムをより深く満喫できたのだろうか」などとよぎったのは事実。それでも、あの約4周分のセーブデータを消す予定は今のところない。この欠落感も、ゲームとしての攻略を選ばなかった私の持ち物だ。
——というのが、聴き終えたあとに私が考えたこと。

アンコール

拍手に応えてソロ回したっぷりの MEGALOVANIA! ラストのドラムソロは圧巻! やはりリズム隊のソロはよいものだ。だけど MEGALOVANIA で盛り上がる”業”をも感じてしまう。きっと舞台に立つ皆様も自身の”業”を叩きつけた演奏をしていた……と考えるのは私の願望に過ぎないかもしれない。

公演後

タマシイがこれでもかと込められた演奏と演出に惜しみない拍手を贈る。照明が点灯し、席を立って会場を後にする。熱気冷めやらぬ観客たちの帰路につく流れが徐々に散らばっていく様子も感慨深い。ホテルの部屋で取り急ぎ感想を一言、タグをたどって他の感想にも軽く目を通す。

夜の8時、いい加減なにか食べなければと近くの商店街をうろついてみたのだが……いくら歩けど「おいしいものを食べたい」という欲求が湧いてこない。あぁ、今の私が何より味わいたいのは公演の余韻だ、と気づく。旅先でのおいしいものなんか食べたら気分が上がってしまうじゃないか。

とは言っても、この日はいくらなんでも食べていなさすぎなのだ。ホテルの朝食とソフトクリームときつねうどん(小)だけ。これでこの時間ここまで食欲を感じずにいられるものなのか、と変に関心しつつ、コンビニで最低限の食料を買って部屋に戻る。ベースブレッドが大抵のコンビニに置かれてて助かるね。普通に栄養が足りていなかったのでスープがとても沁みる。

部屋の湯船に浸かり、ダメージという名の感動に突き動かされたままの文章を吐き出し、就寝。

物販で購入したCDのざっくりとした感想も近々。ざっくりだから同じ記事にするつもりでいたのだが、いざ書いてみたら曲のオタクが生えてきたので……。

コンサート以外の遠征日記も軽くまとめたい。ザ・インドアゲームさん(希少な音ゲーが置いてある大阪のゲーセン)での話はXでもできずじまいで、さすがにもったいないし。なんなら5年前の東京遠征のゲーセン話もできていない。

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