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RezINFINITY体験会に行って来た・2

ジュール・ヴェルヌ。『月世界旅行』『八十日間世界一周』『海底二万哩』を生み出したSFの父である。
 彼の作品の特徴は、その驚くほどの技術的予見の忠実さだろう。月世界旅行が刊行された1865年、アメリカは南北戦争の真只中にあり、アポロ計画の始動でさえ、約100年待たなくてはならない時だ。
 SFの父としてヴェルヌと並び称される男がいる。ハーバート・G・ウェルズである。
 『透明人間』『宇宙戦争』『タイムマシン』といった、今もってなお不可思議の域を脱しない空想物語を描き、SFの可能性を体現せしめた。
 このゲームは、そしてVRというシステムは、果たしてどちらの未来を連れてきたのだろう?

 水口哲也というクリエイターは、長らくゲームにおける音と映像のレスポンスと、それがもたらす快感について突き詰めてきた。2001年にリリースされた『Rez』は、その思索のひとつの結節点でもあった。

 視覚化されたコンピュータネットワークという幻想世界。眩いばかりの光彩と、リズムに乗らさせられてしまうようなBGM。まだコントローラーに振動機能がない時代、音に合わせて振動するデバイスを付属させてまで、プレイヤーをその世界に引き込もうとした。
 そして多くの人々が、まんまと彼の世界に嵌っていったのである。 あれから十五年。とうとう水口哲也は、本当に世界を作ってしまったようである。

 RezINFINITY体験会で、かねてより体験して見たかったシナスタジアスーツを着用してのプレイを体験できた。
 シナスタジアとは、色が音として聞こえたり、形が数字に見えたりする現象のこと。スーツに縫い込まれたバイブレーターがゲームに合わせて振動し、視覚聴覚のみならず触覚にまで訴えかけるようになるのだ。
 実際体験してみると、一瞬振動を意識できなかった。この感覚をうまく表現できないのだが、特別な感覚として身構えてまっていた振動が、とても自然に訪れたというべきだろうか。思えば昨今ゲームをしていても、コントローラの振動を意識することは少なくなったし、むしろしないと気づいてしまうくらいになっているので、そのくらいが自然で心地よいのかもしれない。
 そしてどんどん進めていくと、ライブ会場で音圧が突き抜けていくあの感覚を濃縮したような、デザインされた振動が体を揺さぶる。映像と音にリンクした感覚が、その世界に自分が存在するような錯覚を誘発するのである。

 1日に2つのRezを体験したわけだが、正直に言って未だ、この体験を数日後に家庭で楽しめるという事実に頭が追いつかないでいる。
 技術に触れた人間が夢想する、その直線上にあるヴェルヌ的未来予想と、それさえ超越してしまうウェルズ的体験を綯交ぜにしたような、今を生きる我々にしか許されない体験がここに生まれている。
 読む、聞く、見るに続く第4のメディアが、その誕生とともにこうして最高のタイトルを獲得できたことは僥倖……否、最高のプレゼントと呼んで差し支えあるまい。

 興奮のあまりまとまらなくなってきた。最後はヴェルヌの名言を添えて締めよう。

  人間が想像できることは、人間が必ず実現できる


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