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ELEGANT CELL 細胞とバイオマテリアルの小さな実験室 に行ってきた

 毎度おなじみの山中研究室の展覧会である。毎度のように独特で楽しいことをやってくれている。5ヶ月ぶりとなる今回のテーマは、細胞である。

 生物の基本単位であり、様々な器官や皮膚を形成する細胞。東京大学竹内研究室は、細胞を機能部品と捉え、糸状にしたりビーズ状に固めたりといった加工する技術を研究している。
 これは将来、代替医療や知覚センサーへの応用が期待される技術だが、今回山中研究室はそうした技術が広がる社会や、研究を行う環境をデザインする試みに加わったそう。

 なかなか門外漢には難しいところではあるが、そこは山中先生。機能第一と思われがちな研究機材も、彼らにかかれば無骨さの無いおしゃれな器具に生まれ変わる。
 バイオハザードものの映画でおなじみの(笑)クリーンベンチも、殺風景さなど微塵も無い。試しにクリーンベンチでググってみてほしい。同じものならきっとこちらを欲しくなるだろう。

 今回もう一つ新たな試みとして、アーティストの作品が飾られた。 同じく東京大学で客員研究員を務める鈴木康広氏が、細胞を使ったアートに挑んだ。

 が、こちらも門外漢には難しいところだったようで、最初に出した培養細胞で木の葉を空間に貼り付けるというアイディアは、研究用の細胞は外界と隔離しなくてはならないという原則を知らず、無言のボツを食らったそう。
 そんなこんなで生まれた、細胞を葉と枝の接合に利用し、いつ落ちるかわからない、落ちないかもしれないという不確定さをデザインした一輪挿しは、なるほど生存と淘汰という生物的テーマによく似合っている。
 やや余談だが、関連イベントとして行われた、山中先生と鈴木氏と竹内研究室の森本助教授を交えたトークでは、整然適切に発表する森本助教授と、その時の自分なりの言葉で伝えようとする鈴木氏が実に好対照だった。
 ものごとの捉え方、伝え方が違う個性を同一の舞台で並べさせたらどうなるか。山中先生の小さな実験に見えたのは気のせいかもしれないが、デザインとアートの違いも垣間見えて面白かった。

 会期は火曜まで。生ものですのでお早めに。

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