OpenCU「じぶんの空想地図を描く〜未日常のフィールドワーク〜」に行ってきた
5月28日。渋谷区某所にて行われたイベント『じぶんの空想地図を描く~未日常のフィールドワーク~』に参加してきた。
空想地図界の第一人者「地理人」こと今和泉隆行氏を中心に、専修大学ネットワーク情報学部教授の上平崇仁氏と、チューブグラフィックス代表の木村博之を交え、地図の持つ情報の厚さと、空想地図の面白さを知らしめる、大人のサークル活動のようなイベントである。
イベントはまず、今和泉氏の自己紹介と、情報を視覚化し表現する、インフォグラフィックとしての地図を紹介。7歳から空想の街の地図を書き始め、町の成立や変遷に強い興味を持ち、今なお空想の街『中村(なごむる)市』の地図を描き続け、書籍化もしている。
その活動はメディアでも注目を集めだし、あの『タモリ倶楽部』や『アウトデラックス』にも出演したことでも話題となった。
インフォグラフィックの一例として、今和泉氏が趣味で作った、100万人単位で塗り分けた日本地図。都市部からなぜか行儀よく人口分散がされている理由を鑑みると、そこで暮らす人々の足跡が垣間見えるという、二次元情報から時間軸までを引っ張り出す、地図マニアの骨頂が垣間見えた。
後半はワークショップとして、参加者がそれぞれ自由に、空想地図を書くというコーナーが始まった。
いきなり放り出されておどおどするかと思いきや、さすがこんなイベントに来るだけあって、皆なかなかの地図リテラシーを持っており、あれよあれよとそれっぽい地図が出来上がっていく。
そんな中私は、実家と今住んでいるあたりをあわせたようなものを書こうとして、実家の地図の物真似になってしまった。先入観が邪魔をした悪い好例だった。
(↑今泉氏が用意した建物サンプルを貼るだけでもグッとそれっぽくなる。このキットも発明だと思う)
そしてその後が面白い。書き上がった地図の中から今和泉氏が何点かセレクトし、その地図を分析していくというもの。
「この山の間に奥の院って描いてありますね。やはり谷間があると人は拝みたくなるもので、古くからある神社でしょうか。大きな駐車場があるので、観光客は車がメインでしょう。若い人や地元の人はあまり来ない。こっちの高速道路から入ってきた人が川の西側に行く感じです。で住んでるひとは逆に東側の駅界隈が活動圏で云々」
いやアンタその場所行った事あるやろ!?っていうくらいスムーズで的を得た解説を、100%アドリブでこなしてしまうのだ。
これには会場も大爆笑。すっかり今和泉ワールドに染まってしまったのである。
真面目な話、これワークショップとセットでやって芸にして欲しい。というかもう芸能の域であった。
(↑本文のものとは違う作例。最近妙に若い人が集まりだして、なんでだろうねーと地元の人も不思議がってるとか※今和泉談)
いや、正確に言えば、皆で空想地図を作っている時点で、こうした話を皆やっていた。事実私と同じ卓で地図を描いていた人は、駅と線路に沿うように並ぶ飲み屋街を書いて、川の向こうの工場の従業員達が通う場所として空想していた。
「でも最近何件か閉まっちゃったんですよ」
「この店、絶対煮込み美味いよね(笑)」
空想地図など初めて書くだろうに、そんな会話がぽんぽん弾むのだ。
だがそんな中でも今和泉氏の審美眼(?)は図抜けており、旧道と新道がY字に交わる交差点を指して評する。
「ここの旧道から合流しようとした車が対向車に遮られて、舌打ちする運転手が見えるような素晴らしい地図ですね」
いやはや。
(↑みんなが作った空想地図を並べる。各個人別々に描いたのに偶然つながりそうな部分があったので繋げて張ってみたりしている。これもすごいこと?)
イベントを通して感じたのは、今和泉氏の才能の正体とでも言うべきか。
無数の資料とフィールドワークから得られた、都市を形成する方程式のようなものが、きっと彼の中にはあるのだと思う。例えば大学と駅があり、その間に商店の記号があれば、そこに彼は書店や文具店はもとより、安くておしゃれな雑貨屋や、1000円以内で腹いっぱい食べさせてくれる定食屋を見出すだろう。
そうしたものを瞬時に浮かび上がらせる、シックスセンス的なものが備わっているのだと思う。だがそれは先天的なものというより、好きが昂じて身についた結果のように思うのだ。
(↑空想地図作家は他にもいた!大学ノートにシャーペンで手書き(!!)した地図を年代ごとに書きかえているという @HaradaSeiichiro さん。あまりに細かいのでプロジェクタで映し出す。今和泉氏大興奮)
誰もが幼い頃、一度は真っ白な画用紙に空想の街や家を描いただろう。いくつくらいから、そういうものを書かなくなるのだろう。
現実に追われて云々などは言い訳に過ぎない。人はその気になれば、こうも素晴らしい空想が出来ると、彼は体現している。
ありふれているようで、どこよりも特別な中村市。いつかふらりと行ってみたいな。そんな空想もしたくなる。
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